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移植啓発、「ドナーの分まで生きる」20歳の決意

2018年01月11日 10時44分02秒 | 
移植啓発、「ドナーの分まで生きる」20歳の決意
2018年1月10日 (水)配信熊本日日新聞

 中学時代にドイツで心臓移植を受けた田中美紗都さん(20)=熊本市東区=が8日、成人式を迎える。節目を前に「提供してくれた方の分まで生き、臓器移植への理解を広げたい」と決意を新たにする。移植医療に関する市民講座にも参加。社会へ新たな一歩を踏み出している。
 「体調はいいです。この前は東京にも行ってきました」。昨年12月中旬、熊本赤十字病院(東区)の診察室。美紗都さんの明るい声が響いた。子どものころから診察する平井克樹医師は「もう成人かあ。よく頑張ったね」と目を細めた。
 美紗都さんの病気が分かったのは小学5年生の冬。バレー部でアタックの練習をしていた時、突然の心停止に陥った。居合わせた保護者から自動体外式除細動器(AED)などの救命措置を受け、一命はとりとめた。
 心臓の筋肉が次第に衰える先天異常。心臓移植が必要と診断された。以来、補助人工心臓を付け、集中治療室で移植を待ち続けた。
 同級生たちが協力した募金などの後押しもあり、2010年5月にドイツへ渡航。翌11年9月にドナーからの移植手術を受けた。12年2月に帰国。一番うれしかったのは「みんなと同じように、歩いて学校に行けること」だった。
 保育士への夢を叶えたいと、熊本市内の普通高校に進学した。だが、移植して間もない心臓は、安静にしていても脈が速く、「常に走っているような状態」が続く。疲れやすく、中学時代よりも長い通学時間や、広い校舎が学校生活の高いハードルになった。1年時の半年間は、大阪大病院に入院したこともあり、中退せざるを得なかった。
 心臓の拒絶反応を抑える薬の影響で、感染症には特に注意が必要だ。マスクは年中手放せない。今は人混みは避け、家の中で過ごすことが多い。大学などに進んだ同級生の話を聞くと「みんなと全く同じ生活ではないな、と思う」。
 それでも叶えたい夢がある。「同じ病気の子どもたちのために、何かできることをやりたい」。月に1回検診に訪れる大阪大病院には、人工心臓を付けて移植を待つ子どもたちが数多く入院している。日本とドイツで3年近く移植を待ち続けた自分の姿と重なる。
 「まずは臓器提供の意思を示すドナーカードを持つことから始めてほしい」と美紗都さん。12月中旬には、群馬県であった移植啓発イベントに一般参加したが、「いつか発言者として参加するかも」と意欲を見せる。
 成人式にはピンクの花柄の着物で出席する。小学校の卒業の日、「ぜったい助けてみせるからね」と書いたプラカードを携え、病院前に集まってくれた同級生たちとの再会を待ち望む。
 友が果たしてくれた約束。臓器移植への理解の広がりが、美紗都さんの新たな目標だ。

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