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「命は平等」は当たり前 香山リカのココロの万華鏡

2016年12月13日 22時43分42秒 | 
「命は平等」は当たり前 香山リカのココロの万華鏡
2016年12月13日 (火)配信毎日新聞社

 7月に相模原市で起きた障害者施設殺傷事件を受けて再発防止策を検討してきた厚生労働省の有識者チームが、このほど報告書を公表した。
 患者さんが「自傷他害のおそれがある」として行政が強制的に入院させる「措置入院」となった場合、退院後も医療などのケアが切れたり地域で孤立したりすることがないよう自治体や医療機関で支援する、といった内容が盛り込まれていた。今回の事件では、容疑者の男性は障害者の殺害を予告するような手紙を書くなどして措置入院になったが、退院したあとは病院への通院をすぐやめ、誰もサポートできていなかったからだ。
 防止策としてほかにもいくつかの提案が行われていたが、私にとって印象的だったのは、報告書の前半で「心のバリアフリー」の大切さが記されていたことだ。容疑者の男性は、障害者に生きる価値を認めないなどとても身勝手でゆがんだ価値観を持っていた。その背景にあったのは、障害を持つ人を劣ったものとして見る誤った差別の意識だ。報告書はそのことを指摘して、こう続ける。
 「こうした偏見や差別意識を社会から払拭(ふっしょく)し、一人ひとりの命の重さは障害のあるなしによって少しも変わることはない、という当たり前の価値観を社会全体で共有することが何よりも重要である」
 私はその部分を読んではっとした。「一人ひとりの命の重さは障害のあるなしによって変わらない」というのは、何か理由があってのことではない。「当たり前の価値観」だと言っているのである。
 ところが、残念ながらいまの時代、障害を持つ人だけではなく、民族や人種の異なる人、性的マイノリティー、祖国を追われた難民などを差別したり自分の社会から追い出そうとしたりする傾向が、世界の各地で見られている。「誰でも私たちと同じ人間なのだ」と言うと、「まずは自分たちのことが優先だ」と反発する人もいる。私はときどき、そういう人たちにどうやって「命の重さは同じ」ということを説明すればよいのか、と頭を悩ませることもある。
 今回、この報告書はそのことについて「説明はいらない。命の重さが平等なのは当たり前」としているのだ。私はうれしくなり、これからはそう言おうと心に決めた。「どうして誰もの命が同じく大切かって? それは当たり前のことでしょう」。こんなわかりやすくて力強い答えを教えてくれたこの報告書に感謝したい。(精神科医)
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