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点滴につながれた母が「もういい……」(介護 あのとき、あの言葉)

2017年03月13日 00時40分59秒 | 医療情報
点滴につながれた母が「もういい……」(介護 あのとき、あの言葉)
2017年3月9日15時30分

■「もういい……」

(入院して点滴につながれた母が泣きながら絞り出した言葉)

 2008年の年末、当時71歳だった母が脳梗塞(こうそく)で倒れ、介護生活に入りました。入退院を繰り返すたびに体の状態が悪くなり、歩行器を使えば歩けたのに歩けなくなり、多少出ていた声も徐々に出なくなり、トイレで用をたせたのにオムツになり、口から食べられていたのに胃ろうになり、いまは完全寝たきりに……。
 いつまで続くか分からない介護生活。夫の収入だけではなかなか余裕がなく、貯金も徐々になくなってきました。家のローンや自分たちの老後の不安もあって、母を寝かせた後の深夜、宅配業者の集配センターで週4日アルバイトをはじめました。
 一昨年の夏、1年間待ってようやく特別養護老人ホームへの入所が決まりました。母に対して申し訳ない気持ちもありましたが、これでフルタイムで働ける、ローンや多少の蓄えにも回せる、と少しうれしい気持ちもありました。
 私も深夜のバイトから昼間のフルタイムの仕事に変え、仕事帰りには毎日母の顔を見に特養に寄る、という日々が続きました。
 入所してしばらくすると、母が「よく吐く」と言われ、1週間検査入院させられました。家ではそんなことは一度もなかったのに。さらに昨年5月には、胃ろうのトラブルで出血し、大きな病院へ緊急入院。2週間の入院予定で、炎症が治まったら胃ろう造設手術をするということで、準備として絶食状態が続きました。でも、2週間目を迎えようとした頃に肺炎にかかり、さらに絶食期間が延び、手術日程が決まったころに、再び高熱が……。
 そんな母が入院中、点滴につながれ、鼻から管を入れられながら発した言葉があります。
 「もういい……」
 もうほとんど話せなかったはずの母が泣きながら絞り出した声でした。
 母が本当はどんな思いで発した言葉かは分かりません。ただ、私には入退院を繰り返し、その度に少しずつ機能を失っていき、動けなくて話せなくて食べられなくてもまだ生かされている母が、「もう何もしなくていいから、どうか死なせて」と言っているように思いました。
 いかに苦しまず、いかに楽に死なせてあげることができるのか。私もずっと考えていたこと。でも裏腹に生死の分かれ目に直面するといつも結局助けてしまう私。助かってしまう母。助けてしまったことで母も私もまた大変な日々を過ごすというのに。
 私もこのころは、毎日午後に仕事を途中で抜けて病院で2~3時間過ごさせてもらって、また仕事に戻るという生活が続いていて、心身共にかなり大変でした。
 その後、母は敗血症を起こし、いつ何があってもおかしくない状態に陥りました。
 体中がむくみ、もう目を開けていられない状態の母の顔を見ながら、私は一体何のために介護をしてきたのか、母にこんなつらい思いをさせながら年間300万円程度のお金を稼ぐことにどれだけの意味があるのか、最期にこんなつらい思いをさせるためにいままで介護してきたのか、母の人生をこんな形で終わらせちゃいけない、このまま終わっていいはずがない、と、そんな思いを止められなくなっていました。
 落ち着いた段階で、早急に在宅に戻したい、どうせ死ぬならせめて家で死なせたいと主治医に伝えました。先生も看護師長さんもすぐに対応して下さって、その日のうちに母の在宅に向けてのチームも出来上がりました。とてもいい先生に巡り合えたと今も思っています。そしてパート先にもお願いして仕事を辞め、本格的に在宅介護に戻す準備を始めました。
 退院に向けて主治医が行った最後の治療が功を奏して、落ち着いた状態で退院が出来たおかげか、家に戻ってから、みるみる回復していった母。主治医からは「(昨年の)秋を越えることは難しい」と言われていましたが、呼吸器をつけることもなく、尿道カテーテルも外れ、点滴も外れ、80歳になったいまも自分の力で生きています。「家に帰る」という特効薬の効き目をまざまざと感じています。
 もう母を人の手に委ねようとは思いません。このまま家でみとろうと思っています。でも人間わがままなもので、母が落ち着いたことで、いままた自分の老後の不安がわいてきています。そろそろまた深夜のバイトを始めようかと思っているところです。
 結局どんな状況になっても、日々心の葛藤は続いています。すべてから解放されるまで、自分だけのことを考えて生きるのは難しいです。それに家族も巻き込んでしまったことも本当に申し訳ないと思っています。
 母の「もういい」の言葉は、今もえぐるように私の胸に突き刺さっています。
 すみません、長々と書きました。
◆東京都 主婦(50)
 
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 朝日新聞文化くらし報道部「介護 あのとき、あの言葉」係
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