小論亭日乗

WIE小論文添削講師太田が、小論文に関係のあることやそうでもない日々のよしなしごとをつれづれに書きつづるブログです。

あれこれ

2008-08-12 23:42:49 | Weblog
 そろそろ志望理由書を書き始めているという方、多いんじゃないでしょうか。
 WIEでも、こうした応募書類の添削をお受けする機会が増えてきました。
 そこで今日は、応募書類を書く際の注意点について、お話ししようと思います。

 自分のどんな点をアピールしようか、書類を書く際にはいろいろ悩みますよね。
 いままで皆勤だったこと? 何事にもまじめに取り組むこと? いやいや、部活で良い成績を残していることだって、人より優れていることの証明になるかも…。え、これからの時代語学は不可欠? ご安心を、もちろん英検だって、しっかり準1級を取得してますから!

 でも、こうした「自分の良いとこ全部見せます!」的な応募書類、残念ながら、選考の場では弱いんですね。なぜか? それは、いろんな「良いとこ」にまぎれて、肝心の志望先が知りたい「良いとこ」が見えなくなってしまうから。

 志望先が応募書類で確かめたいのは、この学部(学科)で4年間まじめに取り組んで、成果を出してくれそうな人かどうか、ということです。つまり、研究内容を正確に把握しているか、それが目指す将来像と合致しているかどうか、というのが、志望先の一番見たい点なのですね。

 ですから、それを軸として、書類を作成すべきなんです。持っている資格もご自身の長所も、すべてこの点に特化して提示しましょう。

 もちろん、あなたには、他にも誇れるところが沢山あるでしょう。でも、そこはあえて我慢してぐっとこらえて、「相手は何を見たいのか?」という点を念頭に置き、書類作成にかかっていただきたいのです。あれもこれもじゃなく、「これ!」と狙いを定めていきましょう!

ファジイの強み

2008-08-11 17:52:04 | Weblog
 夏休みもだいぶ過ぎましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。 勉強計画は、問題なく進められていますか?
 自分で予定を管理していると、いろいろと思わぬアクシデントが起こったりして、とかく計画が狂いがちになるもの。
 そういう時にどう対処するか? 今日はこのことについて、少しお話をさせて頂きますね。

 「9:00~10:30までは、古文単語の暗記! で、30分休憩取って、11:00から1時間かけて、ヒアリングのドリル5ページやるでしょ、で、ご飯食べてちょっと休憩して、13:30から、日本史のノートまとめて…」というスケジュール、皆さんどう思いますか?

 一見完璧そうですよね。ちゃんと集中力の限界を考えて休憩を入れているし、いろいろな科目を取り混ぜて、飽きがこないようにしているし。
 でもね、難を言えば、この予定、「まさか!」の事態に対処できるようには、なっていないんだなあ。

 「まさか!」の事態、とは何か。大雑把に言うと、それはご自身のコンディションというやつが邪魔をしてくる事態のことです。つまり、「あー、なんか気分が乗らないわー、うだうだ」という気分になっちゃうとき、ってことですね。人間だもの、常に前向きに勉強に取り組めるわけじゃないです。時にはこんなことも起こりうる。

 それに、人間は打たれ弱い生き物ですから、どうしても失敗経験があるものって、手を出しにくくなります。小テストで英語の成績がこっぴどく悪かった、なんて次の日に、「さあ、今日も爽やかに英単語覚えるわよう!」なんて気分には、あんまりなれなかったりするでしょう。

 そういうときに、さっきの計画表に基づいて行動すると…。
「なーんとなく」勉強には取り組むんだけど、良い集中が得られませんから、成果もそれなりにそれなり…、のものになっちゃうんです。

 だから、計画は常にファジイにしておくのがコツなんですね。例えば、「9:00~10:30までは、古文か、英単語の暗記」なんていうふうに。

 「古文覚えるの、あんまり気が乗らないなあ…」なんて時に無理して単語帳広げるよりも、「古文かな、英単語かな? …よし、今日は英単語の気分!」って切り替えて、英語に取り組んだ方が、気も楽だし、集中力も損ないません。ね、これがファジイの威力なのです。

 あ、そうそう。一日の予定に、得意科目の勉強を細かく入れていくことも、モチベーションを維持するためには有効ですよ!


 しかし、こういう工夫をいろいろしていくと、「人間の心理」とか「脳のはたらき・構造」みたいな部分にも、にわかに興味が湧いてきそうですよね…。これをきっかけに、志望学部が変わっちゃったりして。

どのくらい?

2008-08-08 17:51:12 | Weblog
 「どのくらい問題演習をこなせば、小論文が上手く書けるようになりますか?」っていう質問も、よくいただく質問ベスト5の上位に入りますね。
 今日はこのことについて、少しお話をしましょう。

 まず、結論から言ってしまえば、それは千差万別、人それぞれなので、はっきり「これだけ!」と定量化することは不可能だ、ということなのです。

 だって、私から比べれば短いとは言え、皆さんも生まれてからこれまで、生きてきた時間がありますよね。例え、「小論文なんて書いたことない!」というのが共通していたとしても、今までの人生で、文章に触れる機会が多かったか、少なかったか、学校の先生から小論文の肝について、正しく教わったかどうか。こういったことが影響して、実際の皆さんのスタートラインは、本当にいろいろなところに引かれているんです。

 でも、こういうことって、皆さんを一目見ただけで、「むむ、こやつ…できるな!!」などというようには、分からないものです(わかったらこの稼業、どんなに楽か…)。

 私たち講師にはただ、皆さんが書いてきた答案を拝見していく中で、「どうやらこの人は、小論文の肝が分かっているようだ。だから、もう志望校の過去問演習をやって差し支えないな」とか、「残念だけど、設問の要求を把握する力が不足している。だから、もう少し基礎的な演習を積んだ方がいいかも」などといったように、ゆっくりと時間をかけて、皆さんの現在いると思われる位置を推定することしか、できないのです。

 おそらく、皆さんにとっては初めての小論文で、いろいろと不安があるのでしょう。だから、あらかじめ「何をどれだけ勉強すればいいんだろう?」という目処をつけたい、というのは、本当に良く分かります。

 でも、皆さんの実力がたちどころに分かる機械は、残念ながら存在しません。だから、それが少しでも早く分かるためにも、最初の段階で躊躇したりせず、書いたものを私たちに見せて欲しいのです。

シミュレーションでなく

2008-08-05 18:25:12 | Weblog
 添削をしていると、この時期やたらと崩れた字で書かれた、論理的にも問題の多い、そして書きっぱなし感のあふれる答案を頂くことがあります。
 こうした答案について、今日はお話をしたいと思います。

 なぜこんな状態になっているのかといいますと、それはズバリ、模擬テストのように制限時間を設けて答案を書いているから。
 でも、残念ながらこれは、「添削」をやっている効果を、ご自身でどんどんと減らしているってことなんです。ああ、もったいない…。

 ただでさえ慣れない小論文が、90分なり120分なりでいきなり書けるわけがないんです。だって皆さん、手紙や日記や普通の文章を書くときでも、けっこう時間がかかるでしょ。

 昔の受講生の中には、「全部書き上げるのに半日かかりました…」なんてコメントを付けて、初回提出答案を送られた方もいらっしゃいます。でも、これで良いの。

 まずは設問を読んで、それに対する答えを自分なりに考えて、その理由を導きだして、見知らぬ誰かに伝わるように表現を工夫する。この過程を、じっくりと自分の身体にたたき込んでいくこと。これこそが、添削の本来の目的なんです。

 それをせずに、ただひたすら制限時間内に書く練習を続けていても、本質の部分は上達しないんだから。

違いがわかる?

2008-08-04 18:11:40 | Weblog
 今日は、対照的な2本の再提出答案を拝見しました。とても出来のよい答案と、何というか、非常に残念な出来の答案です。
 この違いはどこから出てきちゃったんだろうか…ということについて、今日は考えてみたいと思いました。

 だってね、初回答案では、両者の差はわずかだったのです。出来の良い答案(Aとしましょうか)だって、最初からすごく良かったわけではありませんでした。修辞がおかしく、何より、論証過程にまだまだ穴があったのです。
 確かに残念な答案(Bとしますね)は、論証過程に大きな問題を抱えていました。ただし、出来の良い答案よりも、日本語としては整っていました。

 というわけですから、太田は、A・Bに対して、大体同じ種類のコメントを付けて、送り返したのです。
 …で、冒頭に述べた再提出答案が来た、と。


 で、びっくりしてつらつら眺めてるうちに、A・Bの差がどこら辺にあるか、分かってきましたよ。
 Aは初回のコメントを受けて、内容に関わる書き直しをしてくれていました。一方、Bは表面的に修辞の問題を修正しただけ。論証過程に関する初回の問題が、ぽーんと置き去りにされちゃってたんですね。


 修辞よりも考え方の問題を解決する方が時間はかかるけど、「小論文」の性質上、はるかに向上の度合いが高いというのは、今までにも折に触れお話ししてきたことです。

 でも、こんなにも分かりやすい結果になって出てきてたのは、今までの添削経験でも、ちょっとなかったのです。珍しい体験をすると同時に、考え方放棄の恐ろしさを、改めて実感した次第なのでありました。

 受講生の皆さんにも、添削を意味あるものにするために、このことは肝に銘じて頂きたいなあ…。

新聞記事に注意せよ

2008-08-01 16:59:12 | Weblog
 小論文対策として、新聞を読み、志望先と関連する分野や最近の世界の動向について、調べておくことは有効です。ただし、その文体や書き方、語り口まで参考になるかというと、そうではないんですね。

 そこで今回は、新聞記事の特徴を、その扱い方とあわせて少し詳しく説明させていただきたいと思います。

 まず、新聞記事は情報を伝えるものであること。小論文は書き手がある考えを述べ、その論証を行うものですが、新聞記事は「○○という問題があります」という事実だけを伝えるものです。つまり、世の中にはこういう意見もあるよ、という紹介だけであって、そこに書かれている社説や論評は、ノーチェックで普遍化・一般化できるものではありません。

 次に、新聞記事は「News」を伝えるものであること。「新しいもの」を求めて読む人のために書かれる文章ですから、記者は信憑性よりも新しさに重点を置いて記事の内容を決めがちです(各新聞でその姿勢に差はありますが)。また、ホットな論題を冷めないうちに読んで貰おうとすると、どうしたって十分な分析や論考はできないものです。従って、新聞記事を扱うときには、じっくり書かれた論文と比較して、結論の信憑性や論証の妥当さという点で問題があるということを知っておかねばなりません。

 最後に、新聞記事は「読者を引きつける」ことを強く意識して書いているということ。
 新聞の論説・特集記事は、「現代人のマナー意識」→「『ゲーム脳』の子供たち」→「就職難~その実態~」などといったように、同一コーナーでも取り上げられる論題が次々に変化していきます。そのため、記事の変わり目毎に文章を劇的にし、問いかけを多用するなどして読者の注目を集めようとしがちなのです。
 特に記事の冒頭には注意してください。記事への導入として記者が自らの疑問を提示したり、いわゆる常識を何の吟味もせず用いていることが多いため、小論文を書く際の論点補強にはあまり使えないことが多いものです。

 こんなことつらつらと書きましたけど、太田は何も、新聞=「悪!」と決めつけてるわけではありません。新聞は、日々私たちに情報を加工しやすい形で提供してくれる、大変便利なツールです。

 ただ、論理的な文章を書くためのお手本には、あまり向かないものだ、と申し上げているだけのことなんです。

大風呂敷を広げても

2008-07-31 19:54:58 | Weblog
 皆さん、自分のよく知らないものについて学ばなきゃならないとしたら、どうしますか?
 「学び」は「まねび」ですから、当然お手本を探し、そのおおまかな姿をつかむところから始めるはずです。

 そう、例えば小論文でも、教科書に載っている文章を参考にしたり、過去問題の課題文を読んだりするでしょう。

 で、どんなものかなー、って分かったところで、今度はいよいよ自分で書き始めるんですが…。実はこのとき、かなりの注意が必要なんですね。

 どういうことかといいますと…。
 教科書や試験問題の課題文は、その道の専門家が書いたものですから、どうしても問題について、巨視的に、専門的になりがちです。でも、そこには、それを裏付ける豊富な知識や思索があるもの。

 一方、皆さんは大学受験生。まだまだ知識や思索は十分ではないでしょう。それなのに、形だけは専門的な文章を書いちゃうと、どうなるか。

 見事に、上滑りのふわふわとした文章ができあがっちゃうんですね。

 というわけなので、いったんお手本を頭に入れたら、難しいことですがそのことは忘れ、地道に自分の頭で考えて文章を作っていくことが大切なんです。このことは、よく覚えておいて下さいね!

当たる、かな?

2008-07-30 17:54:28 | Weblog
 添削をしていると、受講生の皆さんから、こんな質問を頂くことがあります。
 「過去問題は昔出たヤツなんだから、今年は出題されないでしょ。なら、予想問題とか解いといた方が、対策としては有効なんじゃないかな…」ってね。

 太田としては、予想問題だけを解くのはかなり危険な行為だと思います。それよりも、過去問題を地道に演習した方が、受験対策としてははるかに効果的ですよ。

 予想問題! それは確かに甘美な響きです。でも、少し冷静になって、よく考えてみて下さい。
 それ、誰が予想したのでしょう?

 大学側が、ということなど、おそらくまれだと思います。大抵は予備校や塾が、「きっと、この大学はこういう問題を出すに違いない」と考えて、作られたものなんですよ、この予想問題というやつは。

 予想はあくまで予想でしかありません。ですから、「これ! これが出る!」と信じて、涙ぐましい努力を費やし、数百字にもわたるその解答例を覚えて試験に臨んだ結果、あわれ玉砕…、ということも、ありえないことではないんです。

 それよりも、過去問演習を繰り返し、「大学が自校の学生となるべき人間に、要求する知の体系」を体得してしまうのが、受験対策としては早道です。

 過去問演習をしていると、初めのうちは解くこと自体に四苦八苦、という状態ですが、次第に「世の中で問題とされていることがらについて、こういう視点で、こういう深みまで思考を進めることを、大学側は要求しているんだな」という認識ができあがっていきます。

 これが皆さんの中にできあがってしまえば、もう大丈夫。どんなテーマについて、どのように聞かれようと、大学の求めに沿った答案、つまり合格答案が、立派に書けるようになりますから!

 他者の不確かな情報に振り回されるより、自分の中に確かな判断基準を育てていくことの方が、ずっと効率的だと思いませんか?

 予想問題を開くのは、この判断基準がご自身の中に定着してからでも、遅くはありませんよ!

急がばまわれ、というじゃないかい

2008-07-29 17:17:14 | Weblog
 こないだ事務の仕事をお手伝いしていて、すごい答案に出くわしました。

 おかげさまで、WIEには毎日たくさんの答案が届きます。そこに書かれたお名前や受講講座をもとに、WIEのデータと照合した上で、受理できるものは受理し、各添削講師に振り分けていくんですけどね。

 届いたその答案は、なんとお名前も受講講座も書いてなかったんでした。どこの誰が書いたものか分からなければ、さすがに受け取りようがないですよね。
 というわけで、いたしかたなく、「必要事項を記入して下さい」と書き添えた上で、お客様のところに差し戻しと相成りました。


 事務スタッフの話では、これはキングオブキングス級の困ったさんですけど、住所やFAX番号がない、お名前をフルネームで頂けない、なんてのは結構多いんですって。そのたびにWIEの事務スタッフは、データ検索して情報を補完しなきゃいけないんだそう。

 一人二人の話なら、何とかスタッフの頑張りで吸収できるかもしれません。でも、それが積もり積もると、スタッフの作業時間、ひいては添削にかかる時間まで、ずいぶんと余分にかかってしまうことになります。

 必須事項の記入漏れをしてしまう方は、あるいは、小論文の勉強があまりはかどってなくて、焦ってるのかもしれません。書いたらすぐ提出したい、って思った結果なのかもね。でも、ちょっとの時間を惜しんだ結果、逆に添削時間が余計にかかっちゃうんなら、本末転倒、ですよね?


 ね、昔から、急がばまわれ、っていうじゃないですか。
 だから、少しでも早く添削をしてほしいって思ってる方ほど、提出前に記入漏れがないか、時間をかけて、よくよく確認して頂きたいな、と思った次第なのでありました。

遠くにありて

2008-07-28 17:24:13 | Weblog
 小論文の添削をしていると、少し歯がゆくなることがあります。それは、漠然とした質問やお悩みに対し、回答やアドバイスを作成するときのこと。


 塾や学校の先生・ご家族であったなら、普段どんな勉強をしているか、学校ではどんな状態か、どんな生活パターンを送っているのかなどについて、詳細な情報を相談者の方と共有しています。
 ですから、「なんか、悩んじゃって…」というところからでも、問答を繰り返すことで、相談者の方にジャストフィットしたアドバイスをすることは可能なんです。

 一方、私たち添削講師は、相談されている方が書いて送ってくれた文面でしか、情報を入手することができません。
 ですから、ただ「どうやっても書けません。悩んでます。」とだけ書かれているだけでは、具体的にどういうことで悩んでいるのか、その原因はどこにあり、それを取り除くためにはどうすれば良いのかについて、実に知恵を絞りにくい状況であるわけです。

 この場合、今までの添削から「小論文作成について、この方の弱みはここにあるな」と分析し、「おそらくはこういったことで書けない、とお悩みなのだと推察します。…」という具合に、それへの対処法をお伝えするしか、方法がありません。

 本当はもっと別のところにも問題があって、そっちの方をケアすべきなのでは…? と思いつつも、その具体像はつかめないわけで、となると結局、今できる範囲で最も妥当な回答を考えるしかない、という。
 これはかなり歯がゆいものなのです。

 もちろん、学習上のつまづきを取り除くことも、講師の重大な責務です。ですからこれは、何も質問やお悩み相談をしないでね、ということではありません。

 そうではなくて、質問や相談をされるときは、できるだけ「詳しく」書いて下さいね、ということ。
 濃ゆーい添削(笑)を幾度も交わしていても、講師とあなたとの物理的な距離は、残念ながら変わりません。ですから、特にお悩み相談の時には、ご自身の状況について、それを知らない講師にも手に取るように分かるよう、説明する労はいとわないで下さいね!