大前研一のニュースのポイント

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スペイン、ギリシャ、アイルランド。各国の状況は?

2012年06月12日 | ニュースの視点
スペイン中央銀行は、10日オルドネス総裁が辞任すると発表した。辞任理由について触れていないが、スペイン政界では銀行部門の財務悪化の責任を問う声が強まっていた。これを受けて、任期より約1カ月早い退任となった模様だ。

今月中旬に予定されている20カ国・地域(G20)首脳会議までの数週間、スペイン経済にとっては正念場といったところだろう。スペインは欧州第4の経済大国だから、万一破綻という状況になればギリシャとは比べ物にならない影響が考えられる。今スペインの失業率は全体で約25%、若者に限ると約50%という高水準だ。こうした状況に鑑みると、スペインの破綻は経済問題だけに留まらず、治安の問題に発展する可能性も高いと思う。

ギリシャのようにEUが頑張って支援をすれば、欧州中央銀行(ECB)が救済に乗り出せば、何とかなるというレベルではない。G20で何らかの解決策が見いだせれば良いが、もしそうでなければスペイン経済は相当ひどい状況に追い込まれてしまうと思う。これからの数週間は、特に目が離せない。

ユーロからの離脱が秒読みと言われているギリシャが、ユーロから離脱し、以前の通貨であるドラクマに戻ることで、今よりも貿易収支は良くなるのでは?という意見がある。財源が乏しくなるため輸入が大幅に減少し、現在の輸入超過状態(輸出:265億ドル、輸入:593億ドル)が改善するというものだ。また、通貨安となるため観光を含むサービス収支は増加すると予測されている。皮肉なことが、経済的に貧しい頃のギリシャに戻った方が良いということだろう。

しかし一方で、大卒者レベルの人の53%が「国を出ていきたい(移民したい)」と考えていて、すでに17%の人はその準備を終えているという統計もある。ギリシャという国に残って何とか貢献したいという人は、わずか14%しかいないということだ。もしこの通りになったら、ギリシャ国内に残るのは高齢者や年金受給者ばかりになってしまうから、この点で見ると非常に厳しい将来だと言わざるを得ない。

またギリシャ、スペインに先んじてすでに経済破綻したアイルランドでは、1日、財政規律を強める欧州連合(EU)の新条約「財政協定」への参加の是非を問う国民投票の集計作業が終わり、賛成が60.3%で批准が決定した。EUなどの支援が受け続けられる道筋がついたとのことだ。

アイルランドは他国よりも先に経済破綻したため、一足早く救済を受けることができたのは幸運だったと言えるだろう。加えて、今回の国民投票の結果に表れた「アイルランド国民の意識」は評価に値すると思う。

EUの新条約「財政協定」は「財政赤字をGDPの0.5%以内にする」という相当に厳しい条件を提示している。しかしそれを承諾しなければ援助を受けることはできない。これを国民の約6割が受け入れたのだ。EU加盟国の中でも、アイルランドは「EUに加盟したメリットが最も大きかった国」と言われている。おそらく国民もその恩恵を感じているのだろう。

アイルランドは「財政赤字をGDPの0.5%以内にする」という条件を「憲法」に定めることになった。この厳しい状況を乗り越えようという国民の覚悟も見て取れる。実際にこのルールを守れるのかどうかは分からないが、ギリシャやスペインよりもはるかに物分かりが良く、当面支援を受けられるようになったのは大きいと思う。

6 コメント

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G20 (不動産ブローカー)
2012-06-13 00:17:41
 なに言っちゃてんです?G20でスペイン復活の道筋が立つことを期待してるんですか?
 内需拡大が期待できない国は、輸出立国になるか、貧乏小国になるかしかないんです。日本政府がスペインを支援しようと思ったら、例えばスペイン産ワインは関税0、フランス産やドイツ産は200%みたいにするしかないですよ。できますか?
 ヨーロッパで言えばAという品目は必ずスペインを経由して輸入する。EU域外に限る。
 スペインを(どんな国でも一緒だけど)潤そうと思えば自国の企業が上げている利益の一部を返上しなくてはならないんです。
 『お金だけあげる』にしてもその分税金を徴収しなくてはいけません。バブル期の日本は、気前良くあげてたけど、したたかな中国は将来還元されないことに関しては強硬にNOをいいます。アメリカは即時同等以上の見返りを要求します。
 G20の場で誰が自国の産業界を敵に回して救済策を出しますか。
 
 お前が失業すればスペイン人が1人(10000人でも)職を得るんだ会社やめろ!と言われても誰もOKしないですよ。
 
 いま出してる3カ国もゆっくり死んでいってるんだから文句はないでしょ。損失をみんなで微妙に分け合いながら東ティモールとかサンマリノとかその程度の国になって貰えばいい。
Unknown (Unknown)
2012-06-13 09:47:34
ギリシャからスペイン、イタリア、だれの台本ですかね? ギリシャ問題発生時に同時進行していてもおかしくないのに。
預金引き出し800億円 (上石)
2012-06-13 20:52:06
ギリシャ大手行から預金引き出し1日当たり約800億円というニュースは、まるで取付騒ぎのよう。同じようなニュースは5月16日にもあり、預金引き出し額が14日までに約710億円に達した、という累計だが、ここ一ヶ月間でさらに、それも加速的に悪化している、ということのようだ。
このペースで行けばギリシャ国内の銀行の預金残高が3月時点で計約165兆円だとしても、206日ほどで底をつくことになる。200日は6.6ヶ月ほどだから、8~9月頃には銀行破綻のニュースが多くなるだろう。
銀行から現金そのものが引き出されている中、IMFからの支援を受けずにユーロ離脱出来るのだろうか?
Unknown (Unknown)
2012-06-19 14:32:53
ギリシャのような国がどのようにして財政再建を果たすのか?
アイルランドの例を出してどうするんだ。
大前氏の頭の中はどうなっているのか。
いまだにユーロに幻想をいだいているのでは。
Unknown (Unknown)
2012-06-21 19:53:58
アイルランドとは、体力か頭脳のある者は外国、特にアメリカに出て行ってしまうらしい。
町はあの通り古いし郊外は畑だか何だか、風景環境はとても良いらしいが、日本よりも資源が無いらしい。
ユーロからの離脱が秒読みと言われているギリシャ? (上石)
2012-06-22 23:50:04
 「ユーロからの離脱が秒読みと言われているギリシャ」と書かれていたが(他の人の意見としてだが)、このたびギリシャは20日、緊縮派の第一党、新民主主義党(ND)と第三党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、穏健な反緊縮派の民主左派が新政権を樹立し、財政緊縮策の緩和を協議、だそうです。緩和と言っても、財政緊縮目標の達成期限を2016年まで2年延長する、というだけのことでした。
 でありますから、「ユーロからの離脱」はなく、金融支援に向けた再交渉が始まるようです。
 財務相には、同国最大手行ナショナル銀行のラパノス取締役会議長が有力という報道とのことで、一日も早く金融機関への公的資金注入が必用との焦りも伺えます。
 でも数行の銀行破綻はあるんだろうな。

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