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トップ人事に見る、日立とソニーのそれぞれの問題とは何か?

2009年03月31日 | ニュースの視点
日立製作所は、子会社の日立マクセルと日立プラントテクノロジーの会長を兼務している川村隆氏(69)が4月1日付けで日立本体の会長兼社長に就任する人事を発表した。

川村氏は重電畑の出身で本社の副社長を務めた後、グループ会社の会長などを転々として、今回本社の社長へ返り咲くという経歴だ。

私が最も不思議に思うのは、なぜ古川氏から「さらに年配」の川村氏へとバトンタッチしなくてはいけないのか?という点だ。若い人の中に人材はいないのだろうか?

このまま川村氏が社長を引き継いだところで、業績回復を成し遂げられる可能性は極めて低いと私は思う。

何も川村氏に「若さ」がないという点だけで、判断しているわけではない。日立の「トップ人事」は仕組みとして問題を抱えているからだ。

それは日立のように「大本部制」を採用している多くの日本企業では、社長へのキャリアパスとして、全社のことを理解できる仕組みがないということだ。

大抵の場合、ある「1つの本部」の中でキャリアを積み、そのまま本社の社長に抜擢される。

特定の本部の中だけでキャリアを積んできた人に、社長になったからといって、急に全社的な判断を求めても、それは難しいだろう。

全社のことが理解できるようなキャリアパスと、そしてそのキャリアパスを勝ち抜いた人が本社の社長になるような人事制度が、今の日立には必要だと私は思う。

日立が経営陣の若返りを図れずに失敗しているのに対し、全く別の理由で同じく失敗するだろうと感じたのが、ソニーのトップ人事だ。

ソニーは、中鉢良治社長(61)が4月1日付で代表権のある副会長となり、ハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)(67)が社長を兼務するという人事を発表している。

放送業界というソフト業界出身のストリンガー会長では、ソニーの原点である「ハード部門」を手に負えないというのは、私はこれまでにも何度も指摘してきた。

加えて、ストリンガー会長は、ソニーのDNAとも言える「ソニーらしい精神」を持ち合わせていない点が致命的だと思う。

それは創業者である井深氏、あるいは盛田氏が持っていたような「ソニーは何かやってくれそうな気がする」「ソニーの製品にはワクワクする」という“期待”を私たち消費者に感じさせてくれるものだ。

今ソニーに求められているのはこの部分であり、決してコストダウンの施策を打ち出すことではないと私は思う。

だから、ソニーの場合には経営陣の若返りを図るのではなく、むしろ今60台半ば以上であっても、井深氏や盛田氏のソニーDNAを受け継いだ世代の方が適任かも知れない。

常識的な会社になって「ソニーらしさ」が失われることが最も痛手になると私は感じている。

「ホンダ」「トヨタ」「東芝」などもトップ人事を発表していたが、ある程度順当だったと思う。

やはり大きな問題があるのは、日立とソニーだろう。

確かにトップ人事という問題になると一筋縄では行かないことも多いが、「本質的な問題は何か」ということを正しく把握することができれば解決策は見えてくる。

日立とソニーが抱える本質的な問題は何か? そこが見えていれば、今回のような必要な解決策が全く正反対になることもある。

「本質的な問題の発見」というスキルは非常に重要だ。一流のビジネスパーソンを目指すならば、日々のトレーニングを続けて、ぜひ身に付けてもらいたい。
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