大前研一のニュースのポイント

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新生銀行に対する国民負担額は、7兆円強

2007年08月23日 | ニュースの視点
1日、新生銀行は政府が優先株の形で注入した公的資金のうち1,200億円分を同日付で議決権のある普通株に転換したと発表した。

転換期限を迎えたためで、政府は発行済み株式の12.68%を議決権ベースで保有する筆頭株主となった。

新生銀行の株主構成を見てみると、日本政府:12.68%(1位)、チェースマンハッタンバンク:8.45%(2位)、ステートストリートバンク:6.98%(3位)、新生銀行:6.11%(4位)、J. クリストファー・フラワーズ:5.88%(5位)と続く。

今回のニュースを受けて、あたかも政府が利益を得たような伝え方をしている報道が見受けられるが、これは全くの誤解だ。


新生銀行に関する国民負担は、大体、次のような経緯を辿っている。

まず、旧日本長期信用銀行の債務超過分の穴埋めとして、3兆6000億円。

次に、旧長銀の保有していた債権及び株式等の資産買取額3兆9000億円(回収実績は不明)。

さらに、3,700億円(甲種優先株1,300億円、乙種優先株2,400億円)の資本注入を行った。

その後、減資により甲種優先株331億円の損失が確定している。

つまり、公的資金投入額の合計は7兆8700億円となったのだ。


昨年の8月に整理回収機構が1,200億円分に相当する普通株約2億株を売却し、新生銀行が全株を取得した際、約300億円の売却益を得たが、焼け石に水といったところだろう。

さらに言えば、今政府が保有している甲種優先株も今回乙種優先株から転換された普通株も、それぞれ約300億円の含み損を抱えている。


結局、旧リップルウッドが仮に1兆円近い金額を売り抜けていて、国民負担額が7兆円強。

これでは辻強盗にあったようなものだ。


報道機関は、その場その場の事実だけを伝えるだけでなく、このような背景となる事実も調べた上で、全体としての事実を伝えることが重要だと思う。

また、逆に、私たち国民も、1つ1つのニュースを鵜のみにするのではなく、関連事項などを調べた上で、自ら判断し、考える習慣をつけることが大切だ。

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