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貸借対照表も総合経済対策も、政府・財務省の姿勢そのものが信用できない

2008年09月16日 | ニュースの視点
22日、財務省は2006年度の国の資産と負債の状況を示した貸借対照表を発表した。

一般会計と特別会計を合わせて計算した場合、負債が資産を277兆円上回る「債務超過」であることが判明。国債発行残高の増加などで資産と負債の差額は05年度と比べ3兆円悪化したとのこと。

政府はプライマリーバランスに向けて着実に進歩していると言っているが、実際に今回発表された日本国の貸借対照表には、そのような議論以前の問題があると私は思う。

それは、資産と負債の評価額が必ずしも適正なものと言えるかどうか精査されていないため、貸借対照表そのものが適正かどうか疑わしいということだ。

まず負債について見ると、「隠れ負債」が計上されていないという問題がある。

隠れ負債とは、国が「将来」支払わなければならない負債のことで、年金がその代表例だ。

日本の場合、年金「隠れ負債」は約800兆円になると予想されており、とても無視できる金額ではないと思う。

また資産については、そもそも全ての評価を一方的に政府が発表しているだけであり、その資産価値が適正なものかどうか、何ら根拠がない。

おそらく、資産の中には第三3者機関が査定したら大きく目減りしてしまうものもあるだろうし、逆に国保有の特許など思わぬ資産価値を持つものが隠れているという可能性もある。

いずれにせよ、日本政府の独断による評価だけでは資産の評価額が適正とは言えない。

結局、評価額が適正ではない「貸借対照表」を開示し、債務超過が277兆円もあると発表した政府や財務省は何をしたかったのか?私にはどうも政府や財務省が真剣にこれらの問題を解決するべく取り組んでいるとは思えない。

先ほど指摘した「隠れ資産」の代表格である年金問題。

財務省は企業に対しては、将来支払う必要がある年金を「負債」として計上することを義務付けているのだ。

企業には年金負債を計上させたのに、国の貸借対照表には計上しない。これが財務省のやり方だ。

このような政府や財務省の姿勢を見ていると、今回277兆円の債務超過を発表したのは、国の債務超過の解消のためには1500兆円の個人金融資産を利用するのも致し方ないと国民に納得させるための布石ではないかと疑いたくなる。

政府による経済政策という意味では、29日に発表された「総合経済政策」なるものも大変お粗末な代物だったと言わざるを得ないだろう。

『政府は物価高や原油高への対応を柱とした総合経済対策を決定。融資枠の拡大など財政支出を伴わない対策を含めた事業規模は11兆7000億円。』

これだけを聞くと「11兆円もの景気対策を実施してくれる」と期待してしまうが、11兆円の景気対策と言っても国が捻出するのは2兆円に過ぎず、11兆円はあくまで事業費だ。

しかもその事業費の大半を占める9億円弱は、「原材料高に対応した中小企業向け保証制度」に割り当てられている。

大げさに「総合経済政策」などと発表しているが、要するに「中小企業への貸付の枠を少し拡大する」という、たったそれだけのことに過ぎないのだ。

一体どのあたりが「総合的な」経済対策になっているのか、全く理解に苦しむ。

この程度のものでは、「経済対策」とは呼べないと私は思う。

民主党などは、政府は選挙対策のためだけに発表したと批判しているようだが、私に言わせれば、選挙対策としても通用しないほど低次元の代物だ。

政府や財務省の方には、まず経済政策に取り組む基本的な姿勢から見直してもらいたいと強く感じる。
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-09-17 09:48:18
なるほど
予想通りの結果 (影虎)
2008-09-24 20:58:36
確定申告も自分でできない国民ですから。
こんなところで十分という事でしょう。
外部(政府の力が及ばない)の監査役も無い訳ですから、資産評価なんて意味無いですね
共産主義 (影虎)
2008-09-25 09:29:57
コメントを書いてふと思い出したのがマルクスの共産論
資本主義はいつかは人の心を荒廃させる
人の善意による相互扶助の社会
理想でしかないようだが、官僚同士が監査するという仕組みはそれで成り立っている
資本主義に浮かぶ官僚組織、私欲に流されるのもやむなしか
Unknown (tomkun)
2010-12-12 17:08:03
日本政府の貸借対照表ね。日本国ぢゃないから

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