大前研一のニュースのポイント

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経団連(財界)は、経済施策に焦点を当てた課題に取り組むべき

2007年10月23日 | ニュースの視点
1日、御手洗冨士夫・キヤノン会長(日本経団連会長)は社会保障と歳出入を一体にした改革など八項目の政策課題への取り組みを新政権に要望した。

要望には、生産性の向上、道州制による分権改革、大学改革の推進、子育て支援策の強化、環境対策としてのポスト京都議定書の枠組み作りなどが含まれている。

それぞれの政策課題の重要性を否定するものではないが、私は、経団連(財界)が取り組むべきテーマはこのようなものでいいのか?ということについて疑問を感じる。

経団連(財界)という立場からすると、もっと直接的に「日本企業が世界の企業と対等に競争できるために必要なこと」に焦点を当てた課題に取り組むべきだ。

例えば、法人税や所得税の税率改定、相続税の廃止、外国語教育の徹底などだ。

例えばドイツでは、米国企業を買収したドイツ企業の経営者が、英語を習得していないと部長以上の役職に就けないという発言した途端、一斉に家庭における英語教育への意識が変わったという事例がある。

「うちはこういう人材しか採用しない」と明示すれば世の中が変わると思うのです。

このような経団連(財界)の役割について、日本の政治家は勘違いをしている点があると感じる。

例えば、派遣労働なのに業務請負を装う「偽装請負」問題などについて、野党4党が御手洗冨士夫・キヤノン会長(日本経団連会長)を衆参両院予算委員会に参考人招致すると決定したというのも一例だ。

私に言わせれば、これは根本的に法律の整備に問題があることで、経団連や企業に責任を押し付けるべきではない。

つまり、政府は、どのように企業が高い日本の人件費に対処するかを十分考慮していないことが問題なのだ。

日本のような先進国が今後も国内雇用を確保するためには、移民を受け入れる体制を築くことは必須だ。

しかし、未だに移民労働者のスキルを正確に判断するような基準を定めた法律はない。

例えば、ここから着手しても良いだろう。

経団連は、財界という立場から日本企業が世界で外国企業と競争できるための施策に集中すれば良いと思う。

また、同時に政治家にも、経団連の役割を再認識していただきたいところだ。

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