かみながひめ/作:有吉 佐和子 絵:秋野 不矩/ポプラ社/1970年
「かみながひめ」というので、グリムの「ラプンツェル」をイメージしていたら大分違っていました。
文が有吉佐和子さんでびっくりしましたが、あとで調べてみたら、講談社から1960年発行”おむすびころりん”というのがありました。ちなみに絵は川上四郎さんです。
紀の国の日高に一人の美しい女の子が生まれますが、どういうわけか髪の毛がはえません。
神さま、仏さまにおいのりしても、いつまでたっても子どもの頭は、くりくりぼうずのまま。
そのころ、海が荒れ、いく日も魚が採れない日が続いていました。夜になると沖に光ものがでます。漁師は無理をして魚をとりにでかけますが、でかけるとたちまち、船がひっくりかえってしまいます。
光もののせいかと、漁師が相談していると、「わたしが とりにいきましょう」と、一人の女がいいます。それは、くりくりぼうずの女の子の母親でした。
子どもに髪が生えないのは、自分のせいと、自分の身を犠牲にしてでも、神さまの許しを請おうとしたのでした。
母親の必死の思いで、光ものはみえなくなり。漁師は再び漁にでかけけられるようになりますが、母親は死んでしまいます。
光ものは金の観音様だったのですが、里の人びとが母親を丁寧にほうむって、お墓の上に観音様をおまつりすると、そのときから女の子の頭に髪がはえはじめ、観音様をおがむたびに、髪はどんどん長くなります。
女の子は髪の毛が抜けても大事にして捨てるようなことはしません。桜の花の咲く枝にそっとかけておくと、つばめが、髪の毛をくわえて、都の方に飛んでいきます。
つばめが巣をかけたのは、藤原不比等の屋敷。不比等が屋敷をでようとすると、ひとすじの絹糸のようなものが、さがっているのをみつけます。不比等は「これほど ながい かみの もちぬしなら、きっと うつくしい ひめに ちがいない。」と、同じ長さの髪をもつ姫を捜しに行かせます。
かみながひめは、やがて都にのぼり・・・・。
昔話風でかつ歴史小説風です。
かみながひめは、不比等と結婚するのではなく政略結婚?に利用されるあたりも興味深くなっています。
和歌山県の道成寺に残る資料がもとになっているといいます。