どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

幻のスパイス売り

2017年04月03日 | 創作(外国)

    幻のスパイス売り/西風のくれた鍵/アリソン・アトリー・作 石井桃子・中川李枝子・訳/岩波少年文庫/1996年初版


 生まれた村をはなれ、お城にすみこんで、台所仕事をしているベッシー。

 コック長のダンブルドア夫人は気難しい人でした。

 ある日、大がかりなケーキづくりをしていると、ナツメグがありませんでした。そこにスパイス売りのおばあさんの声が聞こえてきます。ダンブルドア夫人にいわれて、ベッシーはおおいそぎでナツメグを買いにでます。おばあさんはベッシーにナツメグの実をひとつ、ベッシーにさしだします。

 スパイス売りのおばあさんは、たくさんの国を歩き、この国には一年に一回だけやってくるのでした。

 ベッシーは木ぐちをカタコト鳴らしながら、丸石をしいた中庭を横ぎり、りっぱな衛兵のまえをとおりすぎ、大きな城門をぬけて、スパイス売りのおばあさんにおいついていました。

 ナツメグの次はシナモン、ジンジャー、キャラウエイ。おばあさんはどれもベッシーにひとつさしだしてくれます。

 ベッシーは、スパイス売りのおばあさんに「ジンジャーを一クラウン、ダンブルドア夫人にくださいませ。スパイス売りのおくさま」などといつも、この老婆が妖精の国の女王でもあるように、丁寧にあいさつしていたのでした。
 おばあさんはベッシーほどのやさしい娘にひとりも会いませんでした。そして心の秘密を読み取ることができたのでした。

 ベッシーを怒鳴りつけ、𠮟りつけていたダンブルドア夫人は、ぐずで役立たずときめて、ベッシーにおひまをだします。

 たまごを羽のようにふっくらとかきまぜ、クリームをふわりとあわだてて、粉をきれいにふるうコック見習いの娘がいなくなってから、城では、さまざなことがうまくいかなくなっていました。

 ベッシーがおひまをだされると、スパイス売りのおばあさんは、長い旅に出て、ダンブルドア夫人はスパイスを手に入れなくなって、くびになり、お城ではだれもケーキをたべられなくなってしまいます。

 ベッシーは、次の仕事の推薦状ももらえず、母親だけがまつ村にかえります。ある日、おばあさんからもらったスパイスを土にうめると、やがてつやつやした葉と世にも美しい花をつけた四本の木が庭に育ちます。

 ベッシーは、いつも大急ぎで走りながら通り抜けるのをみていた衛兵とむすばれることになるのですが・・・。

 ロマンチックにおわるのですが、何よりもケーキ作りにスパイスが欠かせないあたりに興味があります。

 スパイス売りのおばあさんも、バスケットをのこし、青い鳥ならぬ茶色の小鳥に姿をかえて星のまたたく夜空に去っていきます。
 
 料理はあまりしないので、香辛料には興味がなかったのですが、特徴を知ると一層興味がわきます。

 ナツメグ・・独特の甘い芳香があり、ハンバーグやミートローフなどの挽き肉料理や魚料理の臭みを消ために用いられることが多い。またクッキーやケーキなどの焼き菓子にも用いられる。 

 シナモン・・独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味がありカプチーノ等の飲料やアップルパイ、シナモンロールなどの洋菓子の香り付けに使われる。南アジア、中東、北アフリカでは料理の香りづけに頻繁に用いられる。インド料理の配合香辛料ガラムマサラの主要な成分でもある。インドのチャイの香りづけにもかかせない。

 キャラウエイ・・甘い香りとほろ苦い味、ぷちぷちとした食感が特徴。パン、ケーキ、ビスケット、焼きりんご、卵料理、チーズ、キャベツ料理などに用いられるが、カレーにも時折使われる。特にキャベツとの相性がよく、ザワークラウトには欠かせないスパイスとされている。また、ドイツではリキュールの材料として用いられ、シルバー・ブリット等のカクテルに用いられる。イタリアのリキュール、カンパリのフレーバーとしても知られている。キャラウェイには人や物を引き止めたり結びつけたりする力があると信じられ、その種子を入れておいた品物は盗難にあう事はなかったと言う。また、その実は惚れ薬の材料としても用いられていた。


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