首都圏サラリーマンドクターのつぶやき

冠動脈と末梢血管治療、そして首都圏電車通勤事情を語ります。もともとテツですが、でも最近はヒコーキ出張が多いかも、、、

東京急行電鉄 田園都市線について

2007年04月30日 | 鉄道
最新号の鉄道ジャーナル誌に「東急田園都市線通勤事情」なる小特集が組まれていました。なかなかの力作で、平素この路線を利用するユーザとしては、十分一読に値します。

首都圏の電車通勤事情は、ここ数年改善されているとのことですが、ここ「田都」では全く実感されません。それもその筈、ここでは(首都圏で唯一)年々混雑度が悪化しているのです。ピーク時の急行(現在では“準急”に格下げ)の乗車率は、250%を大幅に超えており、急病人続出という状況なのです。現在平日朝は、5分から20分程度の遅れが常態化しており、毎日のように「遅延証明」が発行されるという状況です。(あまりの頻度に、最近ではweb上で遅延証明を発行可能になりました。)

そもそも運行間隔2分5秒は首都圏最短であり、これ以上の増発は望めません。さらに「二子玉川」~「渋谷」間は、地下区間ですので複々線化や、増結とホームの延長など、大幅なインフラの改善は不可能に近いと思われます。最近新学期を迎えて一段と混雑(=混乱)が増しました。東急電鉄はなぜこんな時期(=4月5日)にダイヤ改正をするのかと、恨めしく感じますが、この特集を読むとなんとなく納得します。ちなみに、恐ろしいことに2045年ごろまで沿線人口は増加するとの予測もあり、団塊世代集団退職も、この沿線には無縁とのことです。(一説には2025年がピークとする説もあります。)

ところで私事ですが、最近渋谷駅構内の乗り換えルートを変えました。それに伴い乗車する車両も「3号車」から先頭の「1号車」へ変わったのですが、実はこんな些細なことで結構混雑度が違います。実感として20%程度の違いがありそうです。ちなみに渋谷駅では、従来利用したハチ公口ではなく、宮益坂方面改札口を通って東口へ出て、バスターミナルを横目に東横線改札の前を通り、JR南口から入ります。多少乗り換え時間はかかりますが、気分転換にもなりますので気に入っています。朝から混雑する首都高3号線を見上げつつ、通勤路を急ぎます。

国立科学博物館 日本館改装オープン

2007年04月30日 | 日々の雑感
上野公園にある国立科学博物館本館(=日本館)が改装されて開館しました。早速家族で出かけました。昭和5年に建築されたこの建物は、アール・ヌーヴォー調の、格調高い内装を備えており、荘厳な雰囲気が漂います。先にオープンした新館(=地球感)とあわせて、広大な展示フロアは見ごたえたっぷりで、とても一日では廻りきれません。先ごろ公開された映画「ナイト・ミュージアム」の舞台となった、NYのアメリカ自然史博物館(The American Museum of Natural History)に類似した雰囲気を感じますが、展示内容やフロア面積など、まったく引けをとらないと思います。まさに日本版AMNHといった雰囲気です。AMNHはセントラルパーク西側に隣接しますが、ここ「かはく」は上野公園内にあり、国立西洋美術館や、国立博物館・上野動物園などに近接します。

シアター360という、「愛・地球博」から移設された球形スクリーン博物館もあり、ハイテク満載の企画もあります。(あまりの迫力に、気分が悪くなる観客もいるようで、うちの子供たちはちょっと「船酔い」状態でした…。)

さまざまな知育を育むにも最適で、休日の一日を家族でのんびり過ごすには格好の場所です。

TAXUS Express2 ステント講習会

2007年04月29日 | PCI&EVT
新しく償還された薬剤溶出ステントの講習会へ参加しました。待望のTAXUS Express2ステントです。紀尾井町のニューオータニ本館の会場には、全国からこのGW初日にも関わらず、大勢のPCIに携わる医師が集められ、熱気に溢れていました。

このステント、実は欧米ではひとつ古い、いわゆる「型落ち」のモデルです。新しいTAXUS Liberteというモデルに、すでに多くの国で置き換わっています。残念ながら日本での承認が大幅に遅れたため、このような事態となったわけです。企業の責任もさることながら、この国の行政の硬直化した許認可制度が、最新最善の医療機器の輸入販売を大幅に妨げています。

日本人医師の治療技術に賭ける情熱、そして技術的な器用さは他の国のどこにも勝ると自負しています。それは臨床の現場でも、基礎研究の現場でも共通です。しかし現実にはなかなか世界に先進する結果に繋がっていません。(基礎医学はともかく、特に臨床の現場では顕著です。)このステントの国内導入の遅れも、それを象徴する障壁のひとつと言えるかも知れません。

もちろん医療関連の機器や薬剤の導入(輸入や販売)には、慎重さは重要です。しかし常に進化し続けるこの領域では、過剰に慎重かつ保守的な姿勢は、最善の治療の制約となりうることも事実です。われわれ現場の医師は、もっともっと多くを語り、声を上げねばなりません。

講習会が終了後、熊本の先輩TRIK先生と、都内某所でゆっくり食事を楽しみました。最近の熊本県内の業界の動向を、つぶさに伺いましたが、急速に進む業界再編・市場構造の変化は、驚くことばかりです。5年後はどうなっているか、もう誰にも正確には予想できない気がします。

偶発症・合併症と医療過誤の違いについて

2007年04月26日 | PCI&EVT
昨夜AMIで入院中の患者さん(80歳代の女性、初回NSTEMI)が病棟にて急変され、CPAとなりました。院内で目撃されたCPAであり、直ちにACLSが行われましたが、残念ながら懸命のACLSにも関わらず、不帰の人となられました。数日前に緊急PCIを行った方で、無事冠動脈ステント植え込みを行い、ご高齢ながら非常に経過良好でした。それだけに患者さんやご家族は勿論のこと、私どもの診療科あるいは病棟の医療スタッフ一同、非常に残念な想いで一杯でした。ご家族の方にも、繰り返し丁寧に経過を御説明申し上げ、良好なご理解を得て患者さんを連れて帰宅されました。

文献的医療統計的に明らかなように、一般にACSにおいては、急性期血行再建成功症例(=つまりPCIあるいはCABGなどが合併症なく成功した症例)においても、約5%前後の急性期院内死亡があります。たとえば、心破裂であったりSATを含む再梗塞であったり、原因は種々考えられます。したがってACS急性期の急変やそれによる死亡は、一般に病態そのものに起因する合併症(あるいは不可避の偶発症)であると考えられます。

ところが本日になって、院内機関のとあるサーベイヤーから、非公式ながら「過誤」の可能性を問われるという、予想外の事態が生じました。彼らに言わせると、「予想外の急変であり、常に医療過誤の可能性を検証する」必要があるそうです。しかし、このような指摘は現場スタッフの一途な熱意に冷水を浴びせるものです。循環器を含めて「救急医療」に携われば、低いながらも一定の可能性で、病状の急変などで患者を失うことは起こりえます。ましてやACSにおいては、その可能性は統計学的には5~30%にも及ぶのです。このようなケースに対して、不勉強な一部のマスメディアが「過誤」の可能性を問うならまだしも、現場を良く知る筈の医療関係者から見て「過誤」を疑うとは、少なくとも私には到底理解できません。ACSの急変まで「過誤」として責任を問われるとは、一体どうなっているのでしょう。日本の医療を取り巻く環境は、どこまで悪くなってゆくのか、暗澹たる想いに打ちひしがれた一日でした。勿論私は「非公式に」強く抗議しました。少なくとも僅かでもこれを医療過誤と扱う可能性のある病院では、安心してACSに対する救急医療は出来ないからです。

医療を「治療成果」のみで評価するのは全く妥当ではありません。医療による成果(効果)には常に不確実性が含まれますし、医師は全知全能の魔法使いではありません。我々人間が確実に「治せる」疾患はまだまだ極めて限られること、生老病死は逆らえない運命や宿命に支配されること、もう一度謙虚に考える必要があります。医療現場にいる私たちは、自ずとそれを良く知っている筈です。

某県の熱意あふれる産婦人科医が、懸命の治療も空しく患者さんを救命出来なかったために、「業務上過失致死罪」で不当に拘束され起訴されました。この事件は、大きな衝撃となって、全国の医師を震撼させました。当然の帰結として、この県の一部で医療の空洞化を招き、事態はますます複雑化深刻化しています。本日の当院での出来事は、本質的に酷似する現象のように感じます。何が「医療過誤」で、何が不可避の「合併症あるいは偶発症」であるのか、明確な基準を考える必要があります。すべての明文化は到底不可能であろうと思います。原則を考えればおのずと結論は見えるでしょう。

「最近随分人間的に丸くなった」と勝手に自負していましたが、今日の出来事には珍しく甚く憤慨したのでした。

CTOについて

2007年04月21日 | PCI&EVT
私達、経カテーテル的血管形成術に携わる医師にとって、CTO(慢性完全閉塞)病変は大きな問題です。冠動脈のCTO-PCIについては歴史も古く、近年治療戦略やデバイスの目覚しい進歩により、大きく成功率・長期開存率が向上しました。特に本邦で開発されたMiracle, Conquest, Magicといったstiff-wireや、薬剤溶出性ステントの上梓は、治療成績の向上に大きく貢献しました。一昨年から、Retrograde approachなる新基軸が大きく取り上げられ、多くのライブデモンストレーションを賑わせています。一方でCTO-PCIに関わる致死的合併症の問題も多きくクローズアップされます。特にカテーテル治療は、非常に可能性は低いながらも死亡に至る合併症(偶発症)が起こり得ますから、その適応や術者の技術力は、今後も厳しく議論されるべきでしょう。私自身は「冠動脈CTOは無症候性であり、PCIの積極的適応にならない」という意見には反対ですが、一方で確かに「典型的な労作性狭心症」ではないことも多いわけですから、患者サイドからのリクエストという観点では、治療を積極的に勧めにくいというのも現実です。

最近では末梢血管のカテーテル治療に携わることも多く、末梢血管のCTOについても議論に参加させていただいています。昨日は、「神奈川PTA研究会」へ参加させていただき、東邦大学大橋医療センター・中村正人先生のご講演を拝聴して来ました。

近年SFA-CTOに対するカテーテル治療の適応ついては、New TASCでも積極派に転じた感があります。長期成績も少しずつ改善してきましたし、NEJM等の論文から一定の肯定的エビデンスを読み取ることも出来ます。一方でIliac-CTOについては相変わらず適応は厳しいようです。それはひとえに長期成績云々の問題ではなく、急性期に起こりうる致死的合併症の問題に左右される印象を受けます。Iliac-CTOに対するカテーテル治療は、私自身最も達成感を感じるテーマの一つですが、CTO-PCIとまったく同様に合併症対策を講じる必要を感じますし、常にそれを実践しています。

昨今の趨勢を見ると、過剰なまでに、治療成果の安全性確実性を担保することが最優先事項となりつつあり、CTO-PCIあるいはCTO-PPIにとっては、ややもすると逆風と思われます。平素の診療全般にわたって、合併症対策と自己防衛が急務です。

術後の腹痛について

2007年04月16日 | 日々の雑感
胆石手術から時間が経って、大分日常を取り戻しつつありますが、実は2回ほど腹痛に襲われ、かなり苦しみました。2回とも移動中の車中であり、非常に困りましたが、何とか気力で目的地へ到達しました。(無事到着後に迷走神経反射が起きそうで、怖かったです…。)
本日執刀医であるS医師(非常に多くのラパコレ症例を経験されている当院の外科のトップです)とお話したのですが、「総胆管に遺残結石でもあるのかな?」との、恐ろしいコメントを述べられます。確かに術中の胆道造影ではそれらしい陰影は無いのですが、数ミリ程度の大きさであれば、完全に除外できないケースもあるそうです。今後の経過次第ですが、はたしてどうなるのか心配です。ひょっとして決死の覚悟でERCPを受ける羽目になるのでしょうか?比較するようなモノでもないですが、ERCPはCAGよりも遥かに辛そうですね…(涙)。

PCIは増えているのか

2007年04月12日 | PCI&EVT
日本循環器学会から、循環器疾患の診療実態調査(2004年版)が公表されています。

http://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/

JCSが主導するだけに、これは結構Real worldを反映する数字なのでしょうが、PCI実数はもう少し多いのではないかという印象を持ちました。この調査結果は、2004年のデーターですから、Cypher元年にあたるわけです。従ってこの後、微妙な市場変化が起きていると思われます。まずCABGはもっと減少しているでしょうし、diffuse lesionやsmall vesselに対するPCIが増加していますので、再狭窄によるTLRが減少しても、PCI総数は不変かもしくは増加していると予想されます。

最近、パワーセンターでは症例が増加する傾向にあり、一方で中小の病院ではカテラボそのものを閉鎖するところも出始めています。日本は先進国の中でも最も人口当たりのカテラボ数が多いと考えられますので、集約化という観点では正常化と見るべきでしょうか。

一方で地域によってはACSの初期治療として、標準的なPrimary PCIが至適時期に受けられない可能性も出てくるわけで、一種の格差社会とも言えます。意外なことに東京都内や近隣の首都圏各県にもACS救急の手薄な地域は存在します。一概に都会と田舎の違いとも言えない気がします。

地下鉄(メトロ)に乗って

2007年04月08日 | 鉄道
浅田次郎原作の映画ですが、待望のDVDが発売されました。早速購入して見入っています。(残念ながら昨年10月公開時には、劇場に見に行けませんでした。)

原作は作家・浅田次郎の事実上のメジャーデビュー作であり、吉川英治新人文学賞受賞作です。数ある浅田作品の中で、僕の最も好きな小説です。(鉄道好きという理由もありますね…)映画の中では原作と微妙に設定が変わっていますが、その分明快で、テンポよくストーリーが展開されます。

作品の中に繰り返し登場する、東京地下鉄・銀座線は昭和2年(1927年)12月30日の開業ですから、今年で開業80周年となります。もちろん当時アジアで最初の地下鉄でした。今でも至る所に開業当初の構築物が残っており、東京でもっとも趣のある鉄道です。たとえば「銀座」駅には、空襲のときの直撃弾で歪んだ鉄骨を補修した跡が残っています。最近になって「表参道」などの駅は、大幅なリフォームがなされて、残念ながら雰囲気が一変してしまいました。昔ながらの雰囲気を求めるならば「神田」そして、神田から須田町交差点方向へ連なる日本最古の地下街である「地下鉄ストア」がオススメです。ここは映画の中でも繰り返し登場しますが、低い天井と閉じられたシャッターで続く不思議な空間です。天井は異常なほど低く、TRIK先生であればまさに「頭上注意!」です。昔の日本人は本当に小さかったのだなあと思います。この地下鉄ストアも、おそらくもうあまり永くないはずで、今のうちに見ておきたい東京風景のひとつです。

銀座界隈から秋葉原へ行かれる折に、銀座線でひとつ手前の「神田」を下車、須田町交差点方向(上野浅草方面)出口を登ってみてください。そこには本物の「地下鉄に乗って」のワンシーンが広がります。須田町の交差点へ出れば、もう秋葉原電気街は歩いて直ぐです。

※写真は「丸の内線」のイメージですが、実際に走っていた営団300系電車ではありません。映画の中で登場するラッピング車両で、東西線5000系を使用しています。

SCJ 1st meeting in Tokyo

2007年04月07日 | PCI&EVT
Slender Club Japan 1st Meeting in Tokyoが開催されました。以前熊本時代に5Fr PCIに傾倒した時期がありましたが、その後ドンドン大鑑巨砲主義になり、昨年は某誌にてとうとう「Femoralist」と称されるに至りました。某Y町先生には「デブ専」とのご批判を頂きましたが、最近悔い改めて再びスレンダーを目指しています。

これまで思っていたより、ずっと古い「10システム」についてのご講演を拝聴し、心を洗われて帰ってきました。たまたま翌日JPR研究会で、beyond DESの講演を聴き、「冠動脈を癒す」治療戦略について考えた週末でした。