Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

湊かなえ「山女日記」

2016-10-18 20:48:42 | 読書感想文(小説)


山女日記 (幻冬舎文庫)
クリエーター情報なし
幻冬舎


湊かなえの「山女日記」を読みました。裏表紙の紹介文には

“誰にも言えない思いを抱え、山に登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見出していく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長編。”

…とあるのですが、実際読んでみるとそんなに大仰な話ではありませんでした。心にじんわり染み入る、読むと心がしゅわしゅわとほぐれていく、優しい小説です。

各章はそれぞれ妙高山や火打山、槍ヶ岳などなど、山の名前が付いていて、主人公も各章で違います。なのでそれぞれの山で物語が独立しているようにも見えるのですが、妙高山の章に登場した人物が火打山の章にも出てきたり、槍ヶ岳に登る人は妙高山に登った人の職場の同僚だったりと、登場人物は少しずつリンクしています。なので、小説を読み進めていくと、「あ、これは〇〇の章に出てきた△△さんたちのことだな」とか「□□さんって△△さんたちの同僚だよな」とか考えているうちにだんだん頭の中で人物相関図が出来上がって行って、宝探しのようで面白かったです。時々、ある登場人物の名前が出てきても誰のことだか思い出せなくて、「あー、この人誰だっけ?思い出せそうで思い出せない~」と頭を悩ますこともありましたが。

私自身は登山の経験がほとんどなく、せいぜい学生時代の遠足レベルの山登りしかしたことがないので、登山の描写にリアリティがあるのかどうかはピンときませんでした。でも、山の上でデパ地下の高級和菓子を食べたりとか、利尻山に登る前日に宿でウニを食べたりとか、途中休憩でフランスパンに板チョコを挟んで食べたりとか、食べ物関係の描写があまりにおいしそうだったので、
「こんな美味しそうなものを食べられるんだったら山登りもいいかも」
なんて、本末転倒なことを考えてしまいました。ま、これは私の食い意地が特に張っているからというわけではなくて、たまたま健康診断で朝食を抜いていた時にこの本を読んだからそう思ったのかもしれませんけど。おほほ。

登場人物のほとんどが女性で、みな人生の何かしらに行き詰っている人ばかりで、しかも作者が湊かなえなもんだから、最初の章「妙高山」はいつ殺人事件が起きるのか、誰が死ぬのかとハラハラしながら読みました。ところが、それが何にも血なまぐさいことが起きないままに終わったものだから逆にびっくりしました。まあ、思い返してみれば結構ドロドロした話で、わだかまりが残ってないわけではないのですが、主人公たちが自分を解放して前向きになったのだから、これはこれでよかったのでしょう。

この後の章も、登山を通じて自分自身を見つめ直したり、人間関係が変化したりといろいろあるのですが、ネタバレになるので割愛します。というか、この「山女日記」は11月にBSプレミアムでドラマ化するらしいので、ネタバレをしてNHKの営業妨害になるといけないですし。ただ、小説は各章で主人公が違うのに、文庫の帯には「主演:工藤夕貴」と書いてあるので、ドラマがどういう内容になるのかわかりません。この小説の面白さは、章ごとに舞台も時代も主人公も異なる連作長編というところにあると思うのですが。うちはBSが映らないので見ることはできませんが、どんなドラマになるのか気になります。評判が良ければ、総合でも放送してくれるかな?

個人的に、私が一番共感した登場人物は、利尻山に姉と一緒に登った希美でした。アラフォーで実家住まいで独身で、親のすねかじり状態な希美には、シンパシーを感じずにいられなかったので。なので、文庫版で追加された、希美が再登場する最終章「カラフェスに行こう」を読んだ時は、思わずホロリと泣いてしまいました。ちょっとくらい要領が悪くても、ビッグなチャンスもラッキーも舞い込まなくても、艶めいた話がなくても、人にはそれぞれの幸福の形があるのだから、その人がそれを幸福だと感じているのならそれでいいんだ、と思わせてくれたので。

ようし、そいじゃいっちょ私も山に登ろうかな!その前に持って行く食べ物リスト作らないと!(←そこじゃない)


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