Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

姉妹にまつわる物語

2017-07-15 17:36:37 | 読書感想文(国内ミステリー)

私の命はあなたの命より軽い (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


豆の上で眠る (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


先日、書店で特に深く考えずに、2人の女性作家のミステリー小説を1冊ずつ買いました。
ひとつは、近藤史恵さんの「私の命はあなたの命より軽い」。軽いって文字が入っているけど重いタイトルですね。
もうひとつは、湊かなえさんの「豆の上で眠る」。
どちらも、家族に対して違和感を抱える女性の物語です。

この2冊を選んだのは、どちらも好きな作家さんだし、ページ数も手ごろで読みやすそうだったからです。
…なのですが、この2つの小説は、当初の私の予想以上に相通じるものがあって、1つ読み終わってから背中に嫌な汗をかき、もう1つ読み終わってから今度は手汗でべとべとになるという、精神的にも肉体的にもダメージを負う結果になってしまいました。

あらすじをざっと説明しますと、「私の命はあなたの命より軽い」のほうは、

出産を間近に控えた遼子は、夫の急な海外赴任のために、東京から実家のある大阪へ戻り、里帰り出産をすることになる。
しかし、帰ってみると家族の様子がどこかおかしい。両親も妹も、会話がなく目を合わせようともしない。自分のいない間に、家族に一体なにがあったのか…?


といったところで、「豆の上で眠る」のほうは、

小学校一年生の時、結衣子の2歳年上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子や、白い車に乗っていたという目撃証言、変質者の噂。結衣子たちはあらゆる手段を使って必死に探したが、見つからなかった。そして2年が経ち、姉を名乗る少女が帰ってきた。両親は姉の帰還を喜ぶが、結衣子だけは戻ってきた姉に、大学生になった今でも違和感を抱き続けてきた。夏休み、故郷に帰省した結衣子は、自分の抱いてきた違和感の正体を突き止めるが…

てな感じです。「私の命は-」のほうは姉の視点で、「豆の上で-」のほうは妹の視点で書かれています。読んでもらってわかるように、あらすじ自体は共通したところがありません。物語の中心に“家族に対する違和感”があるのは一緒ですが、違和感の正体はまったく異なるものだし、姉と妹の関係性も違います。

共通するのは、どちらの小説も親は何やってんだよと憤りを覚えるところです。
それぞれの作品で、主人公姉妹を苦しめるのは、彼女たちの両親の振る舞いです。遅くに生まれた娘を溺愛していたけれど、その娘の意思は尊重しない。1人を溺愛するあまり、もう1人をないがしろにしてしまう。読んでてとてもイライラして不愉快でしたが、一番ムカついたのは、最後まで読んでも彼ら親たちはおのれを顧みることがなく、多少のダメージはあるもののとりあえず現状を維持できてるということです。もっとも、親たちの心境についてはあまり描写されてないので、もう少し掘り下げて読み直したら、また違う感想になるのかもしれませんが。

「豆の上で-」は、作者の湊かなえさんが「イヤミスの女王」と呼ばれているだけに、読む前から読後感には覚悟をしていたため、ダメージを受けても致し方ないと受け入れました。しかし、近藤史恵さんは、無慈悲な人物に残酷な仕打ちを受けても、最後には希望が残る温かい作品をいくつも読んでいたので、「私の命は―」の結末はショックでした。また、「豆の上で-」のほうは、読んでて沸き起こるフラストレーションの原因は姉妹の両親(おもに母親)だったけど、「私の命は-」では親だけでなく登場人物のほとんどがこちらを不愉快にさせる何かを持っていて、時には主人公の遼子さえ「それちょっとおかしくない?」と突っ込みたくなるキャラクターで、まるでホラー小説のようでした。

どちらの作品も、周囲の人間の身勝手な思惑に翻弄される姉と妹が、希望を見いだせないままに物語が終わってしまうのが少し悲しかったです。その先の物語は、読者が日々の生活の中で作っていかなくてはいけないのでしょうけど。

「私の命は-」で、家族に異変が生じた原因の事件は、近藤史恵さんによる社会への問題提起なのだと思います。小説の中では最悪の結末を迎えていますが、そこまでいかなくても似たような事は日本全国で起きているのだから、自分とは関係のないことだとスルーせずに、これを機会に立ち止まって考えてみようと思っています。って書いても小説の中身がわからなければわけわかりませんね。すいません。それと、ショッキングな場面も出てくるので難しいかもしれませんが、映像化するなら連ドラでしてほしいです。遼子の夫のクズぶりにツィッターが盛り上がる様子が目に浮かびます。

「豆の上で-」は、小説のラストまでは、主人公は救いのない人生を送っていたけれど、その先がどうなるかはわかりません。故郷を離れて得た友人たちとの生活の中で、彼女が過去を振り切って新しい自分に生まれ変われて生きていけたらいいなと願います。もし映像化するなら、「リバース」や「白ゆき姫殺人事件」みたいに救いのある結末を追加してほしいです。あと、過去と現在を混在させる文章が絶妙だったので、それも映像で再現してほしいな~。


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