銀河をば内包したる己一個 二つにえいと割って見せばや 薬王華蔵
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一人一宇宙。いちにんのための一宇宙。その一宇宙が一人(いちにん)の内側に広がっている。外側に広がっている宇宙も一人の眼の中でしか活動できないので同じ事だ。
それほどの己である。力量のある己である。これで均衡が取れている。堂々の己である。すべての重量に匹敵する己一個という超新星の物体。一宇宙を生かしているのは己の一人である。己の一人が、一人と一宇宙の死活を握っているのだ。だから朝方の夕顔のように小さく萎縮するには及ばない。おのれのための一宇宙をどうするか。どう働かせるか。100%働かせて働かせて互を魅了し合う。その挙げ句で満足の己は死を迎えるものなのだ。
そんなことはないだろうと、野原の蟷螂が斧を振り上げて来た。己は大きくえいっと掛け声を掛けた。嘘か誠か、この場で己を二分轄して見せようじゃないか。僕は啖呵を切ってみた。