<おでいげ>においでおいで

たのしくおしゃべり。そう、おしゃべりは楽しいよ。

残暑見舞いがあなたから届く

2016年09月15日 13時58分53秒 | Weblog

残暑お見舞い申し上げます。彼岸花が咲いたというのに、秋日が地面をじりじり照りつけています。

あなたはわたしのいとしい人。想像の中だけで息を吸って生きている人。それだから、煩わしくなくてすんでいる。あなたはいつまでも新鮮で色褪せない薔薇の花だ。鼻を近づければ香りがたつし、それが途絶えることもない。想像の中とはなんと便利なのだろう。

水も要らない。肥やしもあげなくてすむ。その代わり、触れることは出来ない。手を握ることもない。しかし、そこに存在するものとして話しかけることは出来る。あくまでバーチャルだけど。あなたをわたしはつねに美しく美しく飾り立てる。あなたはまったく老いるということがない。わたしは残暑の中に立って汗を流しているが、あなたはそんなことにはおかまいなし。涼しくしている。

人は愛なくしては耐えられない。愛さずに生きていることは無意味だ。愛されずに生きていることは苦痛だ。そこを癒す力を持つ薔薇の花。愛する対象になってくれるし、受け取った愛を反映する主体者にも化けてくれる。

それはおよそ歪(いびつ)かもしれない。歪に違いないが、これはわたしの精神世界の中だけの問題であって、顰蹙を買うこともない。後悔がない。

このゆえに、したたかに溢れて来る人間感情、愛のために、わたしの精神は薔薇の花の匂いを鼻に嗅ぐ。このときわたしはもっとも若々しくなっている。わたしすらも形骸がない、老いた肉体がない。

残暑お見舞い申し上げます。わたしは葉書を書く。これを投函する。これはわたしのいとしい人宛ではない。いとしいという感情がすっかり濾過されてしまった人宛だ。

彼女もた儀礼で葉書を返してくる。そしてこのとき鬱屈した老人の日常が、この葉書一通で正常な日常を取り戻す。

濾過されたことばのならぶ秋の日の残暑見舞いがあなたから届く     釈 応帰

 

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