負け犬の言い訳(仮) Excuse of underdog

誰にも見つかりませんように

おじいちゃんの座椅子

2017年08月05日 13時03分14秒 | 裏紅一華の独り言





私がまだ幼稚園くらいの頃 おじいちゃんは よくこの座椅子に座っていた


ここに座って 一日中テレビを見ていた


のど自慢や園芸など 主にNHKばかりだったのは


立ち上がって他のチャンネルに変えるのが億劫だったようだ


ご飯とトイレ以外は ほとんど座椅子から離れない


そんなおじいちゃんの座椅子は よほど座り心地が良いのだと思い


いつしか私は おじいちゃんの膝の上に座るようになった


座椅子に座るおじいちゃんの膝の上に座る


正面に15インチの小型のテレビ 右側に死んだおばあちゃんの仏壇


左側に梅の木とキンモクセイがある庭 


これがおじいちゃんの見る世界なのだ


NHKのテレビはつまらないけど おじいちゃんの膝はとても居心地が良かった


幼稚園から帰ると すぐさまおじいちゃんの膝に座り


お絵かきをしたり 折り紙を折ったり 


そんな私を愛おしそうに両手で抱えて テレビを見つつ 時々私に話しかける


それが私の毎日だった




私が小学2年生くらいになった頃 


いつものようにおじいちゃんの膝の上で宿題をやっていたら


おじいちゃんの手が 私のブラウスの中に入って来た


私はおじいちゃんの顔を覗き込むと 


おじいちゃんは何事もないようにテレビを見ている


そのうちおじいちゃんの手は まるで生き物のように


もぞもぞとスカートの中へ…  


私はただ黙って 漢字ドリルに集中した


そんなことが何回かあって そんな日は決まっておじいちゃんはお小遣いをくれた


私はもらったお小遣いをすぐに 近所のお菓子屋さんで無理やり使い切った


多分 親に「このお金どうしたの?」 って聞かれるのが怖かったんだと思う


私はこの状況を 子供なりに幼い理解で心の奥底にしまいこんだ


そんな毎日が小学5年生まで続いた その年におじいちゃんが入院したのだ


3年間入院し 去年おじいちゃんは亡くなった


それ以来 私はおじいちゃんの部屋には近づかなかった


昨日 一周忌があり 久々におじいちゃんの部屋を覗いてみた


主人を失った座椅子が 未だに処分されずにその場所に存在している


私はそっと腰掛けてみる そういえばこの座椅子に直に座るのは初めてだ


私は 幼い頃のおじいちゃんとの記憶をそっと紐解く


ゆっくりと 凍った氷を口の中で溶かすように


いつしか私の手は スカートの中へ…


なんとも言いようのない 奇妙な感覚と罪悪感が入り混じる


ぐるぐると天井が回り 意識が別の何かに変わってゆく中 私は思った







おじいちゃんは良い人だけど きっと天国には行けない

そう呟く私の口元は 笑っていた






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