観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

先入観を取り除く

2014-03-09 09:45:10 | 14
4年 森悠貴

 大学入学前に頭に描いていたメルヘンチックな動物の世界は存在せず、もっとシビアな世界だった。私たちの子ども時代には、見る者を感動させるような動物番組ばかりがはびこり、それが現実なのだと思っていた。たとえば、一夫一妻の動物が取り上げられ、この動物には男女の深い愛情があるといったようなストーリーだ。だが、大学に入学してから学んだのは、動物は自分の遺伝子を残すために守り、闘い、生き抜いているのであって、テレビ番組はそれを非科学的で人間に都合のいいラブストーリーのように伝えられていたのだということだった。私がこの大学で学んだ動物の雌雄の関係は、もっと淡白なものだった。愛という言葉よりも、手段や利用という表現のほうが適切な関係であった。実際、私が研究したシジュウカラでは、雛を育てるのに愛情ではなく、オスは楽をしてメスを利用していると解釈したほうが納得いく結果となった。
 他にも誤解をしていたことがある。私は幼いころ、動物園が大好きだった。それはただ動物が可愛く、また、動物園という非日常的な空間が子供心をくすぐったからだ。頭の片隅では、檻に入れられているなんて可愛そうだと思った気がしたが、誰かに「働かなくてもご飯がもらえるなんて幸せなことじゃない」と言われ、そうなのだと思い込んでいた。だが、大学に入り、常同行動は精神的なストレスが原因で起こるもので、動物園の動物が檻の中の同じところを往復していたり、手をかじり続けていたりするのは精神的なストレスによるものだということを学んだ。だから動物園の動物は働かなくてもご飯がもらえるから幸せだというのはまったく違うことがわかり、衝撃を受けた。こうしたことから、見る側の主観的な判断がまちがっていることがあることがわかった。
 私は動物のことだけに限らず、メディアなどでさまざまな先入観を刷り込まれてきたと思う。今頃になってようやく、このような先入観を打開するためには冷静な科学的な視点と知識が必要だと感じる。動物だけでなくもっと他分野でも勉強していれば世界の見え方は違ったのではないかと思う。多くの大人は、前にもっと勉強をしておけばよかったと言うが、私もこれから社会に出るにあたり、先入観にとらわれない考え方ができるよう、積極的に勉強し、冷静な視点を持ちたいと思う。

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