『黒マリア流転―天正使節千々石ミゲル異聞』

太東岬近くの飯縄寺に秘蔵の黒マリア像を知った作者は、なぜこの辺境に日本に唯一のマリア像があるかと考え小説の着想を得た。

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オラショが聞こえる

2017-04-21 | 小説
㈢野辺の送り
 潮騒が満天の星月夜に応えて道善坊のあばら家にも届く。薄い布団にくるまって眠る道善坊は、
今宵も華やかな西洋の夢を見ているのか、それとも島原に残して来た妻子を思い出しているのか、かすかに頬笑みを浮かべて、安らかに眠っていた。隠し持っていたロザリオを両手でしっかりと握っている。
 いつものように村人が訪れてきたが、炉端の火は消えていた。マリア様も目につかないように片隅に隠されていた。
「道善坊様、道善坊様」
 ゆすっても返事はなかったが、うっすらと瞼を開いて、かすかにうなづいたようだった。
 村人たちは、坊様がよう言われた言葉を思い出していた。
自然に涙が頬を伝わった。
「デウス様が天国にお召しになられたのだ」
「岬の上に穴を掘って、お送りしよう」
 翌日は、言われたように清水を竹筒いっぱいにくんで来た。
 子どもたちが、野の草花を手に抱えきれないほど摘んで来た。
 ヤマユリの香りが、あたり一面に漂い、道善坊様の体をやさしく包んだ。
 お体をいつもの薄い布団にくるんで、岬の上に運び、掘った穴に静かに横たえた。


獅子の泣き唄よ 仏の前でね
ひとつ歌えば 供養になる
アー 参ロヤナ 参ロヤナァ
パライゾノ寺二ゾ 参ロヤナァ
パライゾノ寺トワ 申スルヤナァ
広イナア狭イワ 
ワガ胸二 アルゾヤナァ
獅子はよいところよ 朝日を浴びてね
お山颪の そよそよと

だれが歌うともなく、どこからかオラショが聞こえて来た。
アーメン
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