2010年の初夏、
私は 「奈良の古寺と仏像―會津八一の歌にのせて―」展に来ている。
当日のコンパクトダイアリーを広げると
「…
入場45分並び。
ボサツ半跏像、本物は黒くひかり、
角度によってたくましくもたおやかにも見えるフシギ。
おみやげはセントくんラスク 630円。… 」
と あった。
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「古寺巡禮」を 音もなく読み進めた。
難しさの中にも 音が流れた。
見知った寺院の名
初めて知る伝説
和辻さんの空想
見知らぬ古美術の名
著者が言うこと、「幼稚であること」
見える音、見えない音。
♪ 朝陽の中で 微笑んで
金のヴェールの むこうから
二八八ページからは 中宮寺へ行っている。
「あの肌の黒いつやは實に不思議である。」
ふーん、和辻さんもそう思ったの。。。
時の逆転に恥じ入ることもなく
素直にそう話しかけた。
♪ 宇宙の片隅で つぶやき合う永遠は
幻だと 知っていても
そして
2010年の初夏、
私は もう一つの幻を見ていたのかもしれない。