写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

海が燃える

2016年12月25日 | 季節・自然・植物

 夕方、岩国から光の室積あに向かって車を走らせていた。車窓の左側は周防灘。室積に近づくと大きく湾曲して張りだした小さな半島が見え始める。この半島は象が鼻を曲げているように見えることから「象鼻が岬」と名が付いている。

 この半島の中央には、最高峰といっても僅か海抜117mの「峨嵋山」がある。山容が中国・四川省の峨眉山に似ているところから命名されたといわれている。湾外の周防灘に面した海岸線は断崖絶壁をなし、奇岩怪石に富む景勝地としても知られている。

 曇った空の遥か西に目をやると、水平線から真っ赤な炎が大きく放射状に上がっているのが見えた。海が燃えている、と思った。冬の落陽・落日・入り日であった。山に囲まれている我が家では、ついぞ見ることのない景色である。

 「海が燃える」といえば、石川さゆりが歌った「天城越え」という歌に「山が燃える」という歌詞がある。こちらは情念の世界だが、「海が燃える」は純情なポエムの世界。瀬戸内の海は、四季折々、刻一刻いろいろな絵を見せてくれる。