フリーマーケットで箱の一部が欠けた、ほこりだらけの古い柱時計を見つけた。「ネジを回したら動くよ」という店主の言葉を信じて買って帰った。歯車の付いた機械を取り外して、ほこりを払い油を差した。
ねじを巻いてダイニングの壁にかけると、カチカチと心地よい規則正しい音を響かせた。
時の数だけボーンボーンと音も出す。「やかましいわねぇ」との奥さんの一言で、2階の書斎で休ませておくことにした。
ある日、柱時計を取り出して掛けてみると、数分動いたと思ったらすぐに止まってしまった。機械を取り外してはみたが、油を差す以外に何もすることができない。
組み立てて掛けてみるが、しばらくするとやはり止まる。箱をたたいても揺すっても動かない。
左右に振れる振り子を正面から注意深くじっと眺めていると、あることに気がついた。外箱は水準器を持ち出して垂直に掛けているのに、振り子が機械のわずかに左寄りで往復している。機械が少し斜めに傾いて取り付けられていることが分かった。
どうしてそのようになってしまったのか理解できないまま、振り子が機械の中央で左右均等に振れるように取り付けると、止まることなくうまく動くようになった。
ほんの少し傾いただけで、てこでも動かない。そんな愚直で不器用な柱時計が、かっての私に似ているような気がして急にいじらしく思えた。今日も2階で時を刻んでいる。
(2013.08.02 毎日新聞「男の気持ち」掲載)
ただ、どう考えても、最後の一行と筆者のこれまでの生き方とを結びつけるのは無理があるような気がします。
とはいっても、評価は人それぞれですから、ひょっとしたらそうだったのかな~などと思い返してはみますが・・・。
やっぱり、「愚直」とは結び付きませんね~
それにしても、メカに強い筆者の面目躍如。
これからも益々楽しませてください。
物を見分ける力のすばらしさを改めておもいました。
愚直な男、曲がったことは嫌い、これからも貫いてください。
素敵ですね