写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

屋外でコーヒーを淹れる

2017年02月03日 | 生活・ニュース

 外気温が急に上がり、4月のような陽気に誘われて庭に出てみた。咲いている花はまだ何もない中、まぶしいほどの太陽がコートを脱がせマフラーをとらせる。椅子に座って外の様子を見ていたが、コーヒーが飲みたくなった。

 2階にある納戸から古い小道具を持ち出し、ロケットストーブに火をつけた。排気管の上に、昔キャンプをして遊んでいたころよく使った薄べったいやかんを乗せて湯を沸かし始めると、5分もすると湯気が勢いよく出始める。

 ドリップの容器にフイルターを装着してコーヒーを淹れた。家の中で飲むのと違って、春めき始めた山を眺めながら飲むコーヒーは、心なしか一段とおいしく感じられる。このロケットストーブは、暇な男の遊び相手をよくしてくれる私にとってはいい相棒である。

 久しぶりに取り出したキャンプ道具を眺めていたら、海べりで淹れたてのコーヒーを飲んでみたくなった。奥さんに「こんど海を見ながらコーヒーを飲んでみよう」というと、すき焼きをやるときに使うカセットコンロを持ち出した。これでは趣がなさすぎる。インターネットでキャンプ用品としての小型のガスストーブのいいものを見つけて発注しておいた。

 持ち運べるように折り畳み式でコンパクト、市販のガスボンベだけでなく、アタッチメントを用いれば家庭用のカセットガスボンベも使えるという便利なもの。今度は、用もないのにこれをもって海でも山でも行って、無理やりコーヒーを沸かして飲んでみたい。「だからどうなんだ?」といわれても「だからどうでもない」と答えるだけでの、暇な男の一人遊びである。


満月蝋梅

2017年02月03日 | 季節・自然・植物

 先日、出会ったときに「こんど蝋梅の苗木を持っていってあげるよ」と言っていた知人が、その苗木を持ってひょっこりとやってきた。畑に植えている木の実生だという細い枝に「満月蠟梅」と書いた札がぶら下げられている。

 数日前の夕方、散歩をしている時であった。どこからか蝋梅のいい香りが漂ってきた。きょろきょろと辺りを見回してみるが、あの半透明な黄色い花はどこにも見当たらない。歩を進めて角を曲がると、ある家の庭に植えてある大きな蝋梅の木にこぼれるほどの花が咲いている。30mも離れているところにまで風に乗せて甘い香りを漂わせていた。

 そんな香り高い蝋梅の苗木を持ってきてくれた。背丈は70、80㎝くらいで花はまだ1輪もつけていない。「2年くらい経てば花が咲くと思うよ」と、庭でコーヒーを飲みながら話す。蝋梅についてのうんちくも聞いた。

 蝋梅は唐の国から来たので唐梅(カラウメ)とも呼ばれる。種類としては、ソシンロウバイ(素心蝋梅)、マンゲツロウバイ(満月蝋梅)、トウロウバイ(唐蝋梅)などがある。よく栽培されているのはソシンロウバイで花全体が黄色である。花の中心に紫褐色の輪斑が入っているのが満月蝋梅で、これが「満月」の命名の理由だという。

 早速日当りのいい場所に植えておいた。2年後に1輪でもいい、我が家に満月蝋梅が咲いてほしい。近くを通る人に早春の香りをプレゼントできる日を待つという、少し先の長い楽しみができた。