のんびり食堂

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潜水服は蝶の夢を見る

2008-02-12 01:06:00 | 映画
前にテレビで、今年公開される映画特集をやっていてこの映画が紹介されていた。
「ELLE」の編集長に実際に起きた話で、かれが左目の瞬きだけで綴った本がフランスやイギリスでベストセラーになったらしい。これだけで見に行こうという気になったのだけど、今年の米アカデミー賞の主要部門でノミネートされており、尚更見に行こうという気になった。

この作品は全編フランス語で、普通に見ればフランス映画なのかと思ってしまうけれど、監督はアメリカ人のジュリアン・シュナーベルである。彼は実際の人物を主人公にした映画「バスキア」や「夜になるまえに」という作品をを今まで撮っている。「バスキア」は見たことがあり、「夜になるまえに」はちょうど偶然にも見てみたいと思っていた映画である。その監督が作ったということを知り、公開日に真っ先に映画館へ足を運んだ。

映画が始まって、独特なカメラワークにかなり驚いた。
ほぼ、主人公の目線を通しての展開。主人公ジャン=ドーの左目を通して、彼の関わって来た人達や彼の気持ちを知る。
意識を失い、目を開けたら、左目しか動かず、体も動かず意思を伝えることができない。ただ、意識や記憶はハッキリとしている。もしそんなことに自分がなったらどうしようと思った。ずっと彼の視線や意識を通しての物語を見るうちに、自分が彼に同化していた。
当初は絶望に近い気持ちで居たが、その内に自分を憐れむのではなく、今の状況を受け入れようとして、想像力を使って色々なことに想いを馳せるシーンがとても印象的である。体が不自由になってからは点滴が彼の食事になるのだが、それを彼は「今日の夕食はシーフードにしよう」と想像し、彼のアシスタントと一緒に食事を取るシーンがある。とても素敵である。
そして、映画全体はかなりユーモアに溢れている。変わった友人が主人公に毛皮の帽子をあげるのだが、それをかぶった彼の姿がとても可笑しい。

監督の演出力もスゴいけれど、役者陣もとても良かった。主人公ジャン=ドー演じるマチュー・アマルリックは最初はあまり魅力的に思えなかったけど、徐々に彼の魅力にハマっていった。元々、ジョニー・デップが主人公を演じるはずだったらしいのだけど、スケジュールの都合で彼に変更したらしい。ただ、とてもそれがハマっていたので、彼以外でこの主人公を想像することが難しいくらい。

おすぎや映画を見た著名人達が映画が始まった瞬間から涙が止まらなかったという感想を言っていたが、自分はそんなことはなかった。あまりにも彼に同化してしまったので、映画見るというよりも今回は映画を体験するという感じだった。
二回目またこの映画を見る時にはもう味わえない体験かと思うけれど、その時には今度は何を思うのかちょいと楽しみな気がする。



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