文藝yaminave 〜なんてったって文弱!〜

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異形の者

2009-05-02 | 本を読むのが好きだとか
ひかりごけ (新潮文庫)
武田 泰淳
新潮社

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武田泰淳『異形の者』という短編を読みました。新潮文庫の『ひかりごけ』に収録されている一編です。

解説でこの『異形の者』は泰淳作品を代表する重要な作品である、というようなことが書かれていますが、こういう言い方はやはり玄人のもので、素人の僕にはどの辺を「面白い」と言うべきかよく分からない作品でありました。

しかし、どこが面白いかはよく分かりませんが、確かに面白いのもまた事実です。大筋としては、僧侶になった主人公が中国出身の修行僧と対話をしてみたり、若い坊主達の猥談に気恥ずかしさを覚えたり、険悪な仲の坊主仲間との決闘に行く直前に仏像にブツブツと文句を垂れたりする、そんな内容です。

主人公も一体何が楽しくて寺なんぞにいるのかさっぱり分からないのですが、ともかく主人公は他の修行僧達とは徹底的に馴染むことが出来ず、いずれ来るであろう破綻を待ち構えるようにしながら、陰鬱な文体で寺の様子を描写していきます。

重苦しく糞真面目な語り口によって描写された若い坊主達の醜態は、物語を悲劇とも喜劇ともつかない一種異様な雰囲気で満たしていきます。

そして主人公の認識と寺全体の雰囲気との齟齬は深まっていくばかりで、両者の関係はどこで決定的に破綻するのだろうと、僕などはハラハラしながら読み進めました。

これは泰淳作品の傾向だそうですが、この『異形の者』は物語の時系列がよく分かりません。最初に主人公が「哲学者」と対話をするシーンがありますが、それはあのラストの決闘から生還した主人公なのか、それとも出家前の主人公なのか、はたまた両者は別人なのかすらもはっきり書かれていません。

こうした「よく分からない」印象を抱え込んだ僕ですが、それでも泰淳作品には、「きっと泰淳なら他の作品でも何かやらかしてくれるに違いない」と思わせる異様な魅力が備わっています。恐らくその印象を抱えたまま他の作品を読めば、今回の『異形の者』に対する理解も少しは深まるのではないかと思うのですが、さてどうなるか。

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キーワード
ひかりごけ
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