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桜木町火災(桜木町事故)・1

2009-12-11 | 週末学習塾
2011年4月現在、ここの記事は順次パブー版『事故災害研究室』へ移行中です。
パブー版『事故災害研究室』に掲載しているバージョンは加筆・修正が施してあり、当ブログ掲載分よりも読みやすくなっていると思われます。よろしければそちらもご覧下さい。


鉄道事故マニアのバイブル『続・事故の鉄道史』の中で、網谷りょういち氏はこう述べている。

「桜木町事故ほど、事故原因が多岐にわたり、どれが最大の要因かわかりにく事故はない。」

全くその通りである。とにかく、ここまで多くの要因が重なった鉄道事故も珍しい。しかもそれらの要因一つ一つは些細なものだが、それが積み重なったことで結果的には106名が生きながらにして焼け死んだ。まあ、大事故というものは往々にしてそんなものなのだが。

   *   *   *

時は1951(昭和26)年4月24日。戦後の復興も軌道に乗り始めていた頃である。

午後1時40分頃、桜木町駅構内の上り線ではちょっとした事故が発生していた。

電線工事の作業員がスパナを落とし、送電に関わる線を切断させてしまったのだ。これによって、電車の車両に直接電気を流す役割を持つ「トロリー線」なるものがダラリと垂れ下がる形になった。

工事を指揮していたN工手長は、駅の信号扱所へ行き、T信号掛に「断線事故のため上り線に電車を入れないように」と知らせている。

そしてちょうど、断線事故があったのと同じ頃、京浜線では下り列車が出発したところだった。5両編成、先頭はモハ63756――この直後に発生した火災事故によって鉄道史に悪名を刻み込むことになる「63系電車」である。

当時の桜木町駅では、構造上、下り列車も上り列車もともに上り線の線路を共有する形になっており、この時も下り列車の運転士はきちんと信号を確認してから上り線の線路へ進入していった。

あれ、進入しちゃうの? 断線事故じゃなかったの?

という読者の皆様の疑問はご尤もである。この辺の詳細は最後に説明しよう。

さて、上り線では断線事故が発生し、先述の通りトロリー線という電線が垂れ下がっている状態だった。これに、進入してきた下り列車の先頭車両のパンタグラフがたちまち絡まったから堪らない。パンタグラフはひん曲がり、電車の屋根に接触した。

ぬおっ、これはいかん! 異常に気付いた運転士は非常ブレーキをかけてパンタグラフを降下させた。

パンタグラフとは電車内に電気を送る装置だから、これを「降下」させたのは車内の全ての電源がストップすることを意味する。電気が通らなくなるんだから、これで火災は起らないはず――。運転士はそう考えただろうが、問題はパンタグラフではなく電線である。パンタグラフを降下させても、絡まった電線は依然として通電している。

電気はパンタグラフを通して、接触していた車両の屋根に放電。その瞬間、物凄い轟音と閃光が起こり、木製の屋根は爆発するように燃え上がった。

当時、桜木町付近の給電は、横浜変電区と鶴見変電区の二箇所からなされていた。当然この事故が起きた瞬間、それぞれの変電区でも異常を察知。以下のような対応がなされた。

● 横浜変電区 → 「高速度遮断機、作動! 給電ストップ完了!」
● 鶴見変電区 → 「あれっ、高速度遮断機が動かないヨー」

しっかりしろよ、鶴見変電区。

斯くして4〜5分に渡り事故車両には電気が送られ続け火勢が強まり、先頭車両は全焼、二両目は半焼という憂き目に遭う。

(1,248文字。この事故の記事は長いので、数回に分けて公開した後、最後にひとつにまとめます)

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キーワード
桜木町事故 トロリー線 非常ブレーキ 63系電車
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