西田一紀 『狂いてさぶらふ』

ある事ない事そんな事

帰り道

2017年06月09日 21時45分40秒 | 日記
来るはずもない事は承知していながらも、今日こそはと淡い期待を膨らませてしまう。

集合ポストのダイヤルを合わせる事にも手馴れたもので、最早数字を意識せずとも体がその捻る塩梅を覚えてしまっているのである。
どんなに草臥れて帰ってこようとも、必ずポストの中を確認するのであるが、そこで僕を出迎えるものは、乱雑に放り込まれたチラシばかりなのであり、それらが役立ったためしなど、一度たりとも無い。

つまり我が家のポストは、僕の生活に関わり合いの無いチラシを受け止める為に設置されているようなもので、毎度意味も無くその口をパクパクとさせている憐れなポストなのである。

そもそも、年賀状さえも書く習慣の無くなってしまったいま、我が家の住所を知るものは、数少ない友人とお役所くらいのもので、そんな事だから手紙など届くはずもないのである。

それでも、今日こそは誰かから手紙が届いているのではないだろうか、という根拠のない期待が、家路につく度湧き上がってくる。
しかしながら、それは実際に届かないから良いのであって、もしもポストの中に見知らぬ相手からの手紙が入っていれば、それはいささか不気味な事なのである。
空想というものは、物事をいくらもメルヘンで上塗りするもので、それは実際にはいびつなものである事が多い。
もしもこの中に、白馬に乗った王子様を待っているというお方がいるとして、実際に目の前に白馬に乗った男が現れたならば、その光景は滑稽極まりないものでありましょう。

話が逸れてしまったが、手紙は良いものだと思う。
人の手によって書かれた文章というものは、実際の会話よりも正直なものに思える。相手の意思が見えるような気がする。
僕はよく、言葉に気持ちがこもっていない、何を考えているのかわからない、などとあれやこれやと言われるのだが、同じ話でも文章にしてみればもう少し正しく伝わるような気もする。勿論、それをそっくりそのまま伝えるには、ある程度の文才を要するのかもしれないのだが。
口下手な人間は、言葉によって意思を理解してもらう事は少しばかり難儀なものなのである。

しかしながら、かく言う僕も手紙を書く事なんて滅多に無い。何せその様な習慣が無いものだから、近しい人間にわざわざ文章にして何かを伝えるなんてのは小っ恥ずかしい思いがするし、何かたいそうな事柄である様な気になってしまう。


大抵の事は、その様な面倒な手続きをしなくともメールで済むようになっており、実際にはそれだけで十分な事なのかもしれない。

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5 コメント

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たまには手紙、良いですよ。 (のんほま)
2017-06-09 22:05:14
いつも楽しく拝見しています。ニシカズさんの趣のある素敵な文章は口数が少ないが故のものなのでしょう。4月に小学生になった娘が学びたての漢字を使い、頻繁に手紙をくれます。メールでもなくLINEでもない、鉛筆で書かれた手紙、嬉しいものです。
Unknown (トラ子)
2017-06-09 22:20:15
楽しく拝見させて頂いております。手紙良いですね。手紙だからこそ文字から伝わる気持ちがあると思います。何度も書き直した後から一言一言を大切に書いてくれてるんだなって思ったり、止め字に滲んだインクから意志の強さが伝わったり…手紙は書く方ももらう方もドキドキしますね。手紙、書きたくなりました。
Unknown (K)
2017-06-09 23:46:10
“おかえりなさい”ですね。
手紙、大人になると書かなくなります。
形式に囚われずお友達に書いていた子供の頃より書きにくくなりました。
でも、便箋を選んで、筆を合わせて、文香も考えたりして、、、そんなお手紙が西田さんにも届くといいですね。
Unknown (奈々)
2017-06-10 10:13:29
西田さんのブログ楽しみにしていました。
本を読んでいるかのような、西田さんの文章がすごく好きです。

恥ずかしながら西田さんに手紙を書いて千葉公演の時にスタッフさんにお渡ししました。
SNSでは伝えきれないこともあるので、拙い文章ですが自分なりに文字に起こして書きました。西田さんのもとに届いていたら嬉しいです。
西田さんのギターはもちろん雰囲気や人柄にとても惹かれています。これからも応援しています。またの更新お待ちしております。
Unknown (こま)
2017-06-10 19:19:01
初めて西田さんのブログを拝見しました。
バンドが大好きな私は以前まで様々なライブに行っていました。でも、病気が見つかり一切いけなくなり、西田さんが加入した夜ダンのライブもまだ見に行けてません。どんな人なのか気になり、読んでみると素朴な疑問とか顔には出さない葛藤とかにクスリと笑えて、直ぐに読者になりました。
だから、早く治して間近で生演奏を見に行くべく孤軍でなく、色んな人、物に支えられ奮闘しています。その中の一つが西田さんのブログです。いつか、直に御礼を言える日が来たらねがっています。
長々と失礼しました。お体に気をつけて、更なる飛躍楽しみにしています。

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