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[総大会に笑顔で出席する末日聖徒の女性 mormonwoman.org より]

末日聖徒イエス・キリスト教会は2013年11月から翌2014年10月にかけて11篇の論文(essay。このブログでは評論と訳してきた) を公式サイトに発表してきたが、先月10月23日さらに二篇lds.orgに発表し、一連の論文公表を完結した。その二篇は、「神権及び神殿と女性についてのジョセフ・スミスの教え」と「天の母なる神」と題するもので、前者は近年盛んに教会内外で論じられ、注目されてきた「女性と神権」の問題に応える形で出されたものと考えられる。これで合計13篇の論文が掲載されることになった。(日本語はまだ11月4日の時点で翻訳が出ていない。)以下、二つの論文について簡単に紹介しておきたい。


まず「神権及び神殿と女性について」の論文では、ジョセフ・スミス在世当時一般の理解が神権とは男性が保持し、聖職者として従事するものという考え方であったのと同様、男性だけが保持し、宣教し、儀式を執り行っていた。ただ、末日聖徒は平会員に神権を与えた点が異なり、女性も初期の頃癒しの儀式を行なっていた。

神権と言えば、神権の職や神権者を思いうかべるかもしれないが、神権を広い概念でとらえると、日曜日の礼拝で説教し、総大会でも女性が説教し、伝道に従事していることも神権の行使に相当する。また、女性が神殿で儀式に携わっていることを指摘している。扶助協会、若い女性、初等協会という補助組織を管理・運営しているのは、明らかに神権の委任であり、女性が神権者の評議会に参加し(地元、教会最上層共)、教会の教育組織(大学からセミナリークラスまで)で教会史、神学について教えているのも神権が果たす範疇である。

神権が男性に与えられていても、男女が互いに補完し協力し合って、神の業を進めているわけで、結局(女性も実質)神の力を行使する働きに参画しているのである。

教育界、政界、経済界で女性に機会が広がっている今日、教会はその組織とプログラムを適応させてきた。回復の業は常時進行する過程である、というウークトドルフ副管長の言葉でこの論文は結ばれている。(58の註を伴う長文)。


もう一つの論文は「天の母なる神」と題するもので、末日聖徒に特有の教会員の胸に秘められたこの考えは、聖典の内容(創世1:26, 27, モーセ3:4-7, ローマ8:16, 17, 詩 82:6, 教・聖132:19, 20 )に基づいている、と確認する趣旨の評論である。ジョセフ・スミスの残した記録にないが、讃美歌の歌詞、「家族についての世界への宣言」、ヒンクレー、バラード、H.B.リー、オークス長老などの説教や発言に言及ないし示唆されている。

[論評]
 「女性と神権」に関する論文については、すでに広い意味で与えられ、行使しているも同然という点で、私もそう思っている。LDS教会では女性も説教し、補助組織で司会し、レッスンを教えているからである。伝道も姉妹宣教師が大勢携わっている。
 しかし、重要な決定を下す高位にあって、鍵となる要所を占めているのは神権を持つ男性指導者に限られている。一例をあげれば、「家族の宣言」の文面が発表する前に扶助協会中央会長会に示されたが、万端決定された後だった。そのことについて、当時副会長であったチエコ・岡崎姉妹は、文面作成の過程で相談してほしかった。幹部の兄弟たちは多忙で姉妹たちの存在を忘れていたのかしら、と残念がっている(1)。
 
 「天の母なる神」という考えは、個人的に言えば今も多少の違和感が残っている。私の理解では神は一人というイメージが自然である。今を生きる現代人が現在、身辺から得られる理屈や概念を遥か過去に、また天界にまで拡張した考えではないのか。私は以前からそう感じていた。これはアジアに住む異邦人改宗者の直観で、日本でも少数派であるかもしれない。それは承知している。(今、おおらかに聞き流している。)

 以上13に及ぶ論文(essay)は発表の度に、よく読んで学ぶように勧められているが、教会員はアメリカでも日本でも読まれている気配がない。現在、どの論文も大管長会、十二使徒の理解と承認を得ているという文言が説明文に明言されている。信仰深い教会員のため、丁寧に編集され優しく表現されているが、どの論文もかなり長文である。また、すぐにはたどりつけないほどlds.orgの深い底の方に沈んでいる。ある人は、教会の透明性を求める人たちの気を静めるために書かれたのではないか、と嘆息している。

(1)
参考:
「教会発表の論文」を一覧できる便利なサイト(英文)
http://mormonessays.com/



コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (教会員R)
2015-11-05 19:48:09
神権付与はともかく、初期の教会で女性が癒しの儀式を取り行っていたならば、今それが出来ない理屈は成り立たないだろう。

アフリカ系黒人の場合と同じく、いずれは解禁されて留められていた理由は不明ですなんていうことになるのだろうか。
 
 
 
神の妻 (落伍者)
2015-11-06 20:13:57
 天の母という概念はキリスト教の中では、やはりなじみがなく、私も素直には受け入れがたい教えであったのですが、日本、エジプト、インド等、西洋以外では神の妻という概念が確かに存在しますので、もしかすると<天の母>という考えは異教徒の側から見れば当然のことなのかもしれません。


 モルモン以外のキリスト教徒が考えを変える必要があるのかもしれません。

 女性は陰に隠れることが常であったでしょうから、天の母も表舞台に出て来てはよろしくないのかもしれません。

 この<天の母>はモルモン独自の教えでありながら、
実はキリスト教が見落としている大事な部分なのかなとも思います。
 
 
 
母の名前 ()
2015-11-10 09:43:20
天の母で、検索していたら、こんなサイトが出てきました。(ちょっと古いですが)

ジョセフ.スミスは、天の母の名前を書いていたと言うのですが?

http://zioncamp.seesaa.net/article/118442680.html
 
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