ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『一粒萬倍』ロサンゼルス公演(その8)

2017-02-11 09:50:36 | 能楽
で、やっぱり今回の出演者で特筆すべきはチェロのメイちゃんですねー。facebookで書いた記事をほんの少し手直ししただけの再掲ですが、あまり注目されていないようなので(本人の許可を得て)ちょっと記しておこうと思います。

昨秋の東京の能楽堂での同公演では はじめてチェロの谷口賢記さんと共演させて頂きましたが、あまりに能と合うので驚愕! ところが谷口さんのスケジュールが合わず、今回のロサンゼルス公演ではチェロはなしか、と思われたのですが。。現地日本人コミュニティの尽力で、かなり遅くになってから抜擢されたのがメイちゃんでした。

メイちゃんは「8年生」ということで、日本でいえば中学2年生の14歳(!)。楽譜から離れて舞台上の役者の動きに合わせて演奏したり、暗転で真っ暗になったりする中での演奏は、おそらくほとんどないでしょう。私も最初年齢を聞いたときは「大丈夫かな?」と思ったものでした。ところが推薦されて出演しただけのことはある! 現地で2日間の稽古と上演会場での2回のリハーサルだけを経て、見事に要求された演奏をこなしてみせたのでした。







この公演では2度 能とチェロのコラボがあるのですが、どちらもほとんど能とチェロの一騎打ち状態。稽古の段階では おずおず。。という感じで遠慮がちでしたが、私も「もう少し激しく弾いてほしい」とリクエストを出したり、演奏スタートのタイミングを何度も稽古しているうちに みるみる魅力的な演奏になっていきました。

リハーサルのものですが、その演奏風景の短い動画はこちら↓


この曲、谷口さん提供のもので、どなたかが即興で弾いた曲を採譜したものだそうです。メイちゃん、稽古の最初の方はちょっと緊張気味でしたが、谷口さんの演奏動画か録音は研究していたのでしょう、ぬえが注文を出してからは、ベテランの谷口さんのテイストに忠実に演奏できるように、かなり突っ込んで演奏していますね。

ましてや本番では舞台上にちょっとしたアクシデントがあって、その場面のあとチェロを聞きながら登場するはずだった私はどうなることかと。。 ところがメイちゃんがあわてず騒がす演奏をスタートさせてくれたので、私も無事に登場することができました。じつはリハーサルではこの演奏スタートのタイミングがうまくいかなくて、キッカケをメイちゃんに念押ししておいたのですが、アクシデントのおかげで決めておいたキッカケそのものがなくなるという事態に。。どうなることかと思ったのですが、これをメイちゃんが自分の判断で乗り切ってくれたおかげで公演全体の瑕疵を最小限に抑えることができました。

ともあれ大変な才能がある子なのは事実であろうと思います。この子を発掘してきたロサンゼルスの日本人コミュニティの強力なこと! メイちゃん、楽屋ではマスコット的な存在でしたが、演奏がめちゃくちゃなら誰も相手にしない。信頼がおける仲間だと思うから笑って話もできるのです。私もメイちゃんの演奏に満足しています。
 
問題があるとすれば。。日本語は話せるのに漢字はほとんど読めないんだってw。 次回コラボする機会があれば、チェロでなく Kikiさんみたいなセクシーなダンスでねー、と言っておいたのですが、どうかなあ。

「えー。。いやー。ムリかも。。 わは」













Baliasi のモモちゃんといい、最年少の中学生二人の活躍が光った公演ではありました。
あとで知ったのですが、モモちゃん、受験生だったみたい。この時期に送り出すとは親御さんの信頼も大したものです。。少なくとも英語は楽勝だね♪
コメント
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