殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!



シャク魔

2017年05月17日 08時45分17秒 | みりこんぐらし
コメント欄できょんさんとシャクについておしゃべりしていて

若かりし頃の自分を思い出した。

周りがシャクでシャクで仕方がなかった、暗黒の時代である。


結婚6年目で義理親との同居に踏み切ったものの

夫の両親は50代になったばかり。

当時の彼らの年齢を越えてわかったが

子供や孫と同居したからといって、急に悟れる年齢ではない。

両親と我々夫婦の性格をかんがみても、この同居には最初から無理があった。


「嫁は泣かせてナンボ、働かせてナンボ」

「実家の無い嫁は、いくらいじめても文句は来ない」

「ブス」

「死ね」

挙げればキリがないが、これらが何度も聞かされた義父の語録。

先に相手を叩いて潰すという、彼の対人手段に由来するものであり

嫁ぎ先から毎日実家に帰る娘を擁護する目的も含まれていた。


私は意地になって平静を装った。

同居が始まって5日後に次男を出産し、退院した晩のこと。

長男の躾がなってないという理由でしこたま怒鳴られ

それきり母乳が止まったのを根に持っていたからだ。


義父はひどい浮気性で、家の中はいつもゴタゴタしていた。

そんなヤツに、人を批判する資格があるものか。

浮気者は浮気者らしく、コソコソしとけばいいんじゃ!

口にこそしないが、その気持ちは表に現れるらしく

義父は私をますます憎んで暴言を重ねた。


その息子である我が夫、これが父親に輪をかけた浮気者ときた。

外泊と駆け落ちを繰り返し、たまに帰って来たと思えば

「離婚して新しい妻に取り替えたい」

とほざく。

それを聞いた親は親で

「子供はどうする?」

などとマジで話し合っている。

義姉はその光景に手を打って喜ぶ。


右を向いてもシャク、左を向いてもシャク

朝から晩まで腹が立ってどうしようもなかった。

こんな悪人どもが我が世の春を謳歌するありさまに

神も仏もあるものかと嘆き、やがてシャク魔と化した私だった。



シャク魔稼業はけっこうきつい。

何でもかんでもフン!と思わなければならない。

フン!と思った後は、こき下ろす事柄を考えなければならない。

シャク魔は忙しいのだ。


「いつかバチがあたる‥いや、あたれ」

シャク魔はいつもそう思い、彼らに天罰が下る日を待ちわびた。

それを見届け、高笑いしながら去ってやるもんね‥

考えるだけでも爽快で、鳥肌が立った。

しかし10年が経っても、待望の日はいっこうに訪れなかった。

焦れた私は子供たちを連れて家出し

以来、両親とは別居したまま自由な15年余りを過ごした。



そして5年前、義母の入院を機に同居生活を再開した。

義父は腎不全で入院中、義母は癌で手術

おまけに義父が裸一貫から興した会社は、億単位の借金で倒産寸前。

夫は親の世話に明け暮れながら、彼らの身代わりとして地獄を味わっている。

待ち焦がれた状況が、夫とその家族に訪れていたのだ。


私は胸がすいたか。

全然。

なぜなら、息子たちが成人していたからである。


成人し、社会人になったら保証能力が発生する。

銀行が、未来ある若者に保証をさせたがるのは見えていた。

夫一家は自分たちが助かるために、必ず息子たちに触手を伸ばす。

ここはどうでも居座って、目を光らせる必要があった。

高笑いしながら去るには、遅すぎたのである。



その頃銀行は、毎日午前と午後の2回、夫を呼び出しては絞っていた。

義父の会社が負っている借金を夫の個人保証へと切り替えるためである。

父親が死んだ場合、相続放棄をされたら終わりなので

銀行は急ぐ必要があった。

朝に夕に責めさいなむと、そのうちおかしくなって判断力を失い

判をついてしまう。

それを待っているのだ。


銀行から呼び出しの電話があると、夫はこの世の終わりのような表情になる。

30年余りに渡って経理を握っていた彼の姉は

危険を察知してよそへ就職し、借金や倒産とは無関係を装っている。

取り残された夫が行くしかないのだ。


うなだれて家を出る後ろ姿に、義母はおどけながら手を振るのだった。

「頑張ってね〜ん」

我が子の地獄を作成した張本人の一味でありながら

早くもギャラリーになっとる。

言うに言えぬ情けなさに、くやし涙を浮かべる夫。

辛いのは私だけじゃなかったと知った。


一方で会社がいよいよ危なくなると

義父の入院する病院へ、銀行員が所在確認に訪れるようになっていた。

債務者が逃亡していないか、時々見に来るのだ。

一人だと情に流されるので、必ず二人で来る。

寝たきりなんだから逃げられるはずはないが、一応規則らしい。


瀕死の病人に何か言ってコロリとなったら

銀行員も夢見が悪いらしく、何も言いはしない。

挨拶程度で、本人と確認したら終わる。

しかし義父はそのたびに意識不明に陥り、心臓が止まった。


驚いた銀行員が飛んで帰るからか、医師の蘇生措置によるものか

しばらくすると息を吹き返す。

人は恐怖の前で、こうなるのだ。

彼が人前で見せていた強気は、やはり演技だった‥

私は自分の目が確かだったことに気を良くした。


ついでとして早期に訪れるであろう臨終を前に、あれこれ思い返しているうち

彼が孫には良くしてくれたことを思い出す。

小学生だった長男が、不注意で義父に怪我をさせたことがあった。

どんなに怒られるかと身を縮める私に、義父は一言も言わなかった。

激痛に声が出なかったのかもしれないが、以後もなぜか触れなかった。

たった一度、見逃してくれた優しさ‥この恩を返したくなった。

完全にあきらめがついた私は、全てを引き受けることに決めた。


翌日、例のごとく銀行から呼び出された夫に同行し

「もう呼び出されても行きません」

と言った。

支店長はネチネチと常識論を述べたが

「話は義父が死んでから聞きます」

と言って帰った。


同時に、今の本社との合併を進めた。

銀行の支店長は合併を聞いて慌て、必死で止めた。

救済者が現れると、貸し剝がしができなくなるからだ。

銀行が嫌がるということは、やっぱりいいことなんだ‥

私はそう確信し、作業を進めた。

早晩、本社の出資によって借金のケリがついたので

夫への毎日の呼び出しも、義父の所在確認も無くなった。


倒産をまぬがれた途端、元気になった義父は

あれから3年生きて、2年前に死んだ。

義母は、亭主と息子をとことん苦しめたあの銀行で年金を受け取り

娘と一緒に定期積金を続けて、集金に来る若い男と笑いさざめいている。

お花畑というやつよ。


それでいいと思っている。

妾どもをお花畑で遊ばせる、旦那氏の気分に似ている。

死にものぐるいで奔走しているうちにどこかへ行ったのか

私の中に棲んでいたシャク魔は、もういない。


が、その一方でこうも思っている。

首を突っ込んだばっかりに、えらい目に遭ったのは確かだ。

しかしそれには、私のシャクも多少は関与していたのではないか。

人を恨み、不幸を願い、天罰を望んだからだと。

あ〜ら、自己責任。
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10 コメント

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Unknown (モモ)
2017-05-18 15:36:59
何でもかんでも フンッッ!!!

懐かしい感?(笑)いや、近しい感覚です。
今は比較的落ち着いておりますが…(^-^;

そうですね~10年もならない前、私も本当に天罰を待ち望んでおりましたわ。悪鬼の形相の時間帯もあったような。

そういう時って、何だか日常の中に使い魔?餓鬼?みたいな黒っぽいモヤモヤ?みたいな物を、見てたというか感じてました。

危ない危ない(^^;

そうこうしているうちに、みりこん姉さんにたどり着き、お伊勢様にたどり着きみたいな流れだったような。

しかし、天罰を望んだ過去があると、幸せなのに『いつかバチが当たりそう』と、ビクビクしていたものです。

はい、バチが当たったようでその時の幸せは壊れ、また、悪鬼になりましたが、前回より学習&強力なアドバイザー様方々のお陰で、無事乗りきれました。

今まで知らずに重ねた悪行( TДT)を精算出来れば幸せです。

しかし、悪鬼=シャク魔の時は、歪んでおりますわ。

世の中の善意や幸せが感じられず、自分に向けられないことに不公平を感じ更に怒る。
そして、疲れる。老ける…思考が自分の損得のみになる。

今は10年程前とは生活は激変しましたが、色んな物がポロポロポロポロ落ちた感じで、万事塞翁が馬、です。

そして何だか枯れた感じの幸せが有り難いです。

まだまだ人生色々経験出来そうなので、冷静に対応しながら実験にいそしみます。(笑)
枯れた感じの幸せ (みりこん〜モモさんへ)
2017-05-18 23:16:08
よ〜くわかります!
縁側でひなたぼっこ的な幸せ。
誰でも体験できそうな幸せ。

シャク魔だった頃は、もっと生々しくて突出した幸せを望んでいた。
そうよ、全てが損得勘定。
全てが勝ち負け。
人から羨ましがられるかどうかが、幸せの指数だった。
とてもじゃないけど羨ましがられそうにない=不幸。
ああ、私は不幸だ、負け組だ‥(笑)

人の天罰を望むのは悪行かもしれないけど
感謝で精算できます。
感謝は気づき。
人、物、自然‥いろんなことに気づいて感謝できるようになると
今の幸せがわかってくる。
すると天罰を望んだ相手にも、いずれ感謝できるようになる。
とてもとても‥今はそう思っていても、本当にそうなる。
だって今の幸せは、その人が存在しなければ
手に入れられなかったから。
そうなると精算される。

今だから言いますけど「今日、セレモニーです」と
突然報告してくださった時から、この子、乗り気じゃないなと
思っていました。
でも幸せになってくれたらいいなと願っていました。

その後はコメントの行間から、ケチで神経質で他罰的で
子供っぽい男性像が浮かんでいました。
でも私は安易に離婚を勧める主義じゃないから
耐えろと言われそうで話しにくいのかも、と。
(帰る所があって仕事もあって当面の生活が成り立ち
相手の稼ぎや年金があてにならず
性癖その他、耐える価値が無ければ
離婚した方がいいと思っています)
お子さんが生まれる前から、気持ちは決まりつつあったと。

相手を見る目が無かったのではなく
そのような男性は、押しだけは強いものです。
それを最初から見極められる人は、あまりいません。
幸せが壊れたのではなく、お子さんと出会えたのです。
本来居るべき場所に、母子で帰還したと思います。

何が幸せの種か、その時は誰にもわからない。
えらいこっちゃ、大不幸がやって来たと嘆く。
ずっと後で、必要な経験だったとわかり
実験‥いい言葉ですね!‥が一つ終わる。
思えば私もこの繰り返しで年を取ったような(笑)
お互いに頑張りましょうぞ。
浮気男ととその周辺 (婆姫)
2017-05-19 01:05:20
近所に似たような家庭がある。
嘘!
というような事が年中ある
ギャラリーとして楽しんでいたが、止めた

人の人生を見ている場合ではない
自分の人生を生きなくては・・・

勉強を始めたよ
借金、とか、浮気とかは発生しない
おだやかで、静か、努力する

誠実な人生はそれはそれで楽しい
シャク魔病 (きょん)
2017-05-19 13:36:09
シャク魔とは・・・なんとも可愛らしいネーミング♪
おじゃ魔女ドレミちゃんみたいじゃないですか(笑)
さすがです!

私だけじゃない、私だけじゃない
誰でもかかるちょっとした病気と思えば気が楽ですね

モモさんが言われてましたが
天罰を望むと 自分にバチがあたりそうで・・・
ホントにその通りですね
そして何か悪いことが起こると
「あぁ、きっと人を恨んだせいだ」 と考えてしまうんです

シャク魔をこじらせると どんどん自分自身が嫌いになっていくんですよね

特効薬がないから自然治癒だと思ってましたが
神様が好きそうな「感謝」が早く治るコツですね♪

あと、みりこんさんにたまにお祓いしてもらいましょう!
「ウンバラバー! ウンバラバー!」
誠実な人生 (みりこん〜婆姫さんへ)
2017-05-19 19:54:42
メンバーの中に浮気者がいたら、送れませんね。
それほど家族を引きずり回すパワーがある。
しかも浮気者のいる所、えてして借金が発生。
やはり家族を引きずり回す。

浮気と借金はセットになってる。
お金が回っている家でも、浮気があればやがてそうなる。
社長仲間にもたくさんいますが
最初はたいてい、小さなきっかけ。
時代の流れや人の気持ちを計り損ねた小さな出来事や
小さな判断ミス。
でも良い時というのを知っているから
すぐ盛り返せると信じて疑わない。
義父の借金にケリがついたのは奇跡だと、自分で思っています。

誠実な人生に越したことはありませんね。
静かで穏やかな今が幸せです。
おじゃ魔女ドレミ! (みりこん〜きょんさんへ)
2017-05-19 20:08:45
懐かし〜!
シャク魔のネーミング、気に入っていただけて幸いです。

そうですよ、誰でもかかる風邪みたいなもん。
人を恨まず、憎まず‥なんて言いますけど
私は人を恨んだり憎んだりしたことの無い人は
信用できません。
人の仕打ちに泣いたことのない人は浅くて
付き合っても面白くないもん。

私、ホンマにこの世を呪い続けて生きてきて
呪う年月とのべ人数では、なかなかの精鋭だと思うけど
それでもケロッと幸せ。
たから大丈夫。
先はわからないよ。
誰でもわからないもんね。
でも今が幸せなら、もう充分。

ギャー!なによ!
ウンバラバー! ウンバラバー!って(爆)
私でよければ、いつでもお祓いしたげるわっ!
ウンバラバー!ウンバラバー!
器。 (ユウキ)
2017-05-20 08:53:57
みりこんさんの記事を読むと
いつも自分の器の小ささや、余裕のなさを痛感します。
正義感だけでなんともならないこと、
受け流さないと体も心ももたないとわかっているのに
なんでもかんでもすぐ戦闘態勢に入るのは愚かです。
わかっているけどやめられない笑

ここでコメントされてる方々に比べたら
小さなことなんです。私の周りで起こってることなんて。
心の余裕が欲しいです。
毎年自動的に歳だけ無駄に重ねて
中身は全く成長していません。反省…
はやく出ていけ、私の中のしゃく魔!!
戦闘態勢 (みりこん〜ユウキさんへ)
2017-05-20 13:17:36
わかるわ〜!
正義感で突っ走り、疲れ果てる繰り返し。
私もそうでしたよ。
若い時って、誰しもそうじゃないかしら。

あの気持ちのカラクリ、今はわかります。
相手が長年かけて築き、できあがっている世界に
変化を望む新参者が手を加えようとしても無理なのよね。
正義や常識では動かない。
相手が卒業するという順番を待つしか方法は無い。
卒業とは死や失脚、衰え。

器を許容範囲ととらえるなら
生死という究極が絡むと誰でも大きくなります。
どんな理想も、どんな夢も見事にガラガラと崩れ去り
ひたすら誰かを救おうとしている自分がいる。
その時、苦しんできた過去の経験が必ず役に立ちます。
怒りや涙が無駄じゃなかったとわかった時
過去の全てが愛おしくなる。
見送って初めて知る事柄って、すごく多い。
ユウキさんも今、どんどん成長中ね!
今晩はみこりんさん (堕天使)
2017-05-23 22:15:42
みこりんさんの気丈さに敬服します。
男の私には実感が出来ない事が多々有りますが、時に…「あぁ、そういう事なんだ…」と実感することがあります…(-_-)
私の悩みなど些細な事ですがみこりんさんの投稿に時として助けられます。これからも心の支えとして拝読させて頂きます、
こんにちは! (みりこん〜堕天使さんへ)
2017-05-24 14:33:24
心の支えとまで言っていただいて光栄です。

私のつづるショボい日常で、ほんの一瞬でも
誰かを励ますことができれば
これほど嬉しいことはありません。
ありがとうございます!

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