草枕
2016-12-11 | 日記
漱石のアンドロイドができたようです。
わたしの中の漱石といえば、「草枕」に尽きます。
その出だしを初めて眼にしたのは高校の教科書だったでしょうか。
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
ここまでは今でも諳んじています。
でも、作品を通して読んだのはずっとあとになってからのこと。
芸術論のようでもあり、小説のようでもある、不思議な作品です。
その「草枕」を愛読した変わり者?がカナダのピアニストのグールド。
50歳ほどで亡くなって、かれこれ20年近く経つはずです。
モーツァルト嫌いのピアニストは、この作品のどこに惹かれたのでしょうか。
ちなみに草枕の英訳書のタイトルはThe Three-Cornered World。
直訳すれば「三角の世界」。作中の一節から名付けたようです。
「四角な世界から常識と名のつく一角を摩滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう」
たしかに、グールドの演奏は常識とかけ離れています。
でも、いったんハマってしまうとなかなか抜け出せなくなります。
で、昨夜、寝床に入って聴いたのが、バッハのゴルドベルク変奏曲。
明日、1冊の本を持って旅するとすれば、やはり「草枕」でしょうか。
漱石は、近代文明のもつ危うさを見抜いていたように感じます。
だから今こそ、もっと読まれていいと思いました。