1983年創刊 月刊俳句雑誌「水 煙」 その2

創刊者:高橋信之
編集発行人:高橋正子

選後に/高橋正子(2008年2月号)

2008-01-09 22:30:53 | 選後に
 このたび、水煙の活動運営を女性中心で行う「新体制」に移
行しました。現に、女性スタッフの皆さんにホームページの毎
日更新や、事務局やオフ句会、吟行などの仕事やお世話をして
いただいていますが、すべが順調に滑り出しました。
 ホームページで言えば、グーグルの「俳句」検索では、五百
万件以上ある俳句のホームページで、水煙のホームページであ
る「インターネット俳句センター」は、上位四位になったこと
もあり、常に上位六位をキープしています。角川やNHKの俳
句王国を抜いていますので、そのエネルギーの量を思ってみて
ください。また、これは同時に世界的にも日本の代表的俳句サ
イトとみなされ、韓国の大学の日本文化に関するホームページ
では、「日本大使館」、「青空文庫」、そして「インターネッ
ト俳句センター」など五サイトがリンクされています。日本の
教育関係にも多く利用されております。その句をもって俳誌水
煙が出来上がっています。そのことを、くれぐれもご理解くだ
さい。小誌であって、細々としてはいますが、決してあせらず、
最先端を戦う俳句雑誌水煙なのですから、日夜の努力を惜しむ
わけにはいかないと思っています。
 俳誌水煙の選は、これまでどおり、高橋正子がいたします。
高浜虚子が「俳句の選は創作」であると言っていますが、水煙
の掲げる「現代語による明るくて深い俳句をめざす」を目標に、
高橋正子の選を明確にしてゆきたいと思っています。俳句は、
「何によって育つか。」という問いがあれば、「それは、選に
よって育つ。」とお答えします。この実例を、うれしいことに、
現に私は体験しております。選のないところで、いくら俳句を
多く作っても俳句は成長しません。作者と選者が互いに協調し
て一句が育っていくと思っています。私は、これまで、俳誌水
煙とホームページの各種句会で選をしていますが、そこで多く
のいい俳句が育ってきている現実に、ひとつの自信を持たせて
いただいています。選者と作者の価値観や感性が極端に違えば、
ひずみが生まれます。現在、高橋正子選に納得されない方は、
水煙を出てご自分で俳句グループの主宰をなさってください。
それは、文学のあり方として、当たり前のなりゆきですので、
ご遠慮はいりませんし、ぜひそうしていただきたいと思います。
新春にあたって、こうした気持で選をし、鑑賞をいたしました。
なにとぞ、ご協力をお願いいたします。

 百段を登りて立冬の空へ寄る           けいじ
 百段ほどもある石段を登ると、立冬の空へ自分がより近くな
ったということ。きっちりと、一歩一歩を踏み、冬が来た空へ
近寄るのはうれしいことではないか。

 一樹ずつ雑木紅葉の始まりぬ           洋 子
 雑木紅葉は、日向にある木、日陰の木、大きな木、小さな木
、それぞれのテンポで紅葉する。一樹一樹の個性が織り成して
紅葉の美しさを見せてくれる。紅葉もよく見ると、一樹一樹に
始まっているのだ。

 法座果て家路清しき星月夜            光 子
 法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、な
お清々しくしてくれる星月夜である。

 ゆく秋の空が遠のく奥武蔵             弦
 奥武蔵が効いた。去りゆく秋の空を見上げると、奥武蔵の山
々を下に置いて、空はますます高く、遠くなっていく。「遠の
く」にゆく秋の空のさびしさが詠まれている。

 野の日向ことに竜胆静かなる           ひさこ
 野に日向がある。その見方が新鮮だ。そこに竜胆が咲いてい
る。竜胆によってまことに静かな日向となっている。

 花八手葉を青々と雨走る          (あ)ひろこ
 冬がきても八手の大きな葉は、青々としている。それに雨が
さっと降りかかると、葉は一段と、青々と、またつやつやとし
てくる。「雨走る」で句が生きた。

 銀杏黄葉透きて見えきし空の青          裕 子
 銀杏黄葉が少しずつ、落葉していくと、隙間に空の青い色が
覗いてくる。銀杏黄葉と空の青とが対比されて明快な色調が楽
しめる。それが自然のなす美しさであるのがうれしい。

 山深くどんぐり落ちてまだ青き          よよぎ
 山深く入ると、そこは全く森の世界。落ちて間もないどんぐ
りの青さに、森が生きいきと生きていることを知らされる。