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怪談 その3 ~福島県の伝説「安達ヶ原の鬼婆」~

2017-08-03 17:03:24 | 文芸
 福島県二本松市にある鬼婆の墓(黒塚)は、安達ヶ原に棲み、人を喰らっていたという「安達ヶ原の鬼婆(あだちがはらのおにばば)」伝説を今に伝える。能の「黒塚」や歌舞伎の「安達ヶ原」などの題材ともなって広く知られるようになった。

▼あらすじ
 その昔、京の都の公家屋敷に岩手という名の女が乳母として奉公していた。彼女が慈しむ姫は生まれながらにして不治の病におかされており、5歳になっても口がきけなかった。岩手は何とかして姫を救いたいと考えた。ある易者の、妊婦の胎内の胎児の生き胆が病に効くという言葉を信じ、生まれたばかりのわが娘を残し、胎児の生き胆を捜す旅に出た。奥州の安達ヶ原に辿りついた岩手は岩屋を棲家とし、標的の妊婦を待った。長い年月が経ったある日、若い夫婦がその岩屋に宿を求めて来た。妻は身重だった。折しも妻が産気づき、夫は薬を買いに出かけた。岩手はその機会を逃さず、包丁で妻に襲い掛かり、その腹を裂いて胎児から肝を取り出した。ところが妻が身に着けているお守りを目にした時、岩手は驚いた。それは自分が京に残してきた娘のものだった。自分が手にかけたのは、成長したわが子だったのである。あまりのことに岩手は気が狂い、以来、旅人を襲っては生き血と肝をすすり、人肉を喰らう鬼婆と成り果てた。

▼ホワイエ薪能(2017.2.11 熊本県立劇場)喜多流 能「黒塚」より

シテ 狩野了一