気ままな歳時記

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『無伴奏』小池真理子 著

2011年10月23日 19時34分32秒 | 宮城県に馴染みの深い人々
 『無伴奏』は,作家の‘小池真理子’さんが,仙台で高校時代を過ごした1969年から1970年のことを‘野間響子’という主人公を使って回想している小説であり,時は70年安保の時代で,今では考えられませんが,高校生もその活動に参加していた時代でした。

 ‘小池真理子’さんが,宮城三女高(小説ではS女子校)で「制服廃止闘争委員会」を作り,実際に活動していたそうで,私が高校生になり,宮城一女高が制服を廃止するのはその3年後だということを思うと,時代を先取りした過激な活動だったのでしょう。

 この小説の中のキーポイントとしてクラシック音楽が出て来ますが,1つは,主人公である‘野間響子’と‘堂本渉’が,バロック喫茶「無伴奏」で初めて出会った時に聴くのが「パッヘルベルのカノン」という曲ですが,題名で思い浮かばなくても,曲を聴けばどなたでも嗚呼(ああ)と分かる曲です。

 もう1曲は,有名なチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」(ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル)で,もう1人の主人公である‘堂本渉’から‘野間響子’がプレゼントをされたレコードですが,奇しくも,私が初めて買って聴いた「悲愴」と同じレコードでした。(非常に気に入ったレコードで,同じ組み合わせの演奏で,チャイコフスキーの交響曲4から6番まで持っていたはずなのですが,家には有りませんでした。)

 このレコードのジャケットに,チャイコフスキーは同性愛者であったという節が有るとのくだりが有るそうですが,今,手元からレコードが紛失しているので,確かめようもありませんが,「悲愴」という題名はその悩みから付けたと言う節があると『無伴奏』の後半で書かれています。

 しかし,1969年から70年というと,私は中学生になり,東北放送のAMO(東北ヒットパレード)という週末深夜に放送されていたラジオ番組に夢中になっていたり,土曜の学校帰りは必ず‘東一番丁’(この小説の時代背景の1970年に歩行者天国となり‘一番町’と名前が変わりました)に同級生と寄り道をして,‘五右衛門’‘番丁ラーメン’‘酋長ラーメン’‘仁禮(にれい)’の味噌ラーメンを食べていました。 

 1970年は私にとって印象的な年で,大阪万博が開催され,三島由紀夫が自決し,70年安保への活動は下火になり(私は当時東北大に近い川内と言う所に住んでいて,東北大の学生がヘルメットをかぶり“安保反対”とデモをしていた),校内一の人気者のKさんとビートルズの話で盛り上り,彼女からヘイジュードなどのレコードを借りたことなど今でも鮮明に思い出すことばかりです。

 この小説は,1970年頃のことを回想して1990年頃書いている設定ですが,今はそれからさらに20年が過ぎた2011年ですが,小説の中に出てくる,題名にもなっているバロック喫茶『無伴奏』,洋菓子店「嵯峨露府」(郊外に‘嵯加露府'として残っています),丸光デパート(今は‘さくら野'),仙台ホテル,駅前の本屋(アイエor高山書店),東一番丁のラーメン店(番丁ラーメンor仁礼)とほとんどが無くなるか変わってしまっていて,今の仙台は,当時の雰囲気を味わうことはできなくなっていますね。

 この小説を読んでいると,まだ中学生で多感で純粋だった自分の当時のいろいろなことを思い出してしまい,ブログで書く一週間分位有り,多くのことを書かなくてはいけなくなるので,この辺で終わらせて頂きます。

 蛇足で最後に,仙台の喫茶店「無伴奏」をやっていた木村さんと作者の小池真理子さんが2年ほど前に対談をしたそうですが,知っていれば是非聴いてみたかった気がします。

 「無伴奏」というと,私はバッハの「無伴奏チェロ組曲」や「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」,「無伴奏フルートのためのパルティータ」を思い出しますが,木村さんは何が好きだったか聞いてみたい気がしましたが,私が好きなバロック音楽は,ヴィバルディの「調和の霊感」です。

 「無伴奏」の文庫本と「パッヘルベルのカノン」の入ったイ・ムジチのCD


 洋菓子店「嵯峨露府」の有った場所は,下着屋さんになっています


 「無伴奏」の場所を教えてくれた土屋ミシン屋さん


 その隣が「無伴奏」が有った場所で,今はビルが建っています


 「番丁ラーメン」が有ったと記憶する場所


 中学時代に,味噌ラーメンをよく食べた「仁禮」が有った通り

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
懐かしい東一番丁! (外野の住人)
2011-10-24 12:57:31
懐かしい~

いや~、長いこと
でも、なゎ~んとなく、懐かしく思えますね(自分も歳を取ったということでしょうか(笑))

昔を思い出しながら歩くのも、一興てすね

でも、僕の記憶している「番丁ラーメン」は確かもっと北側で、そうご電器があったビルの隣のビルの地下にあったと思うけど

昔はスポーツ用品店のサイカワ、丸善や金港堂、松竹の映画館、レコード店、花火等の玩具とよく行きましたが、最近はメッキリ行かなくなったな~

re:懐かしい東一番丁! (外野の住人) (nowhappy)
2011-10-24 20:10:34
 外野の住人さん,コメントありがとうございます。
 昭和45年頃の番丁ラーメンはこの辺りに,白い大きな暖簾を掲げて営業したいたと思います。
 そごう電気の地下はその後に移った気がしますが,何せ40年前の記憶なのでハッキリしませんが。
失礼しましたm(__)m (外野の住人)
2011-10-24 20:33:30
さすがに、40年代の記憶はありませんでした
知らないことがたくさんありますね
僕にとっては、「番丁ラーメン」は昔を思い出す一品です
昔はもっと盛りもよかったような
意外と、若かりし頃で、大盛りを食べてたかな
re:失礼しましたm(__)m (外野の住人) (nowhappy)
2011-10-24 20:38:02
 外野の住人さん,コメントありがとうございます。
 私の絶対的な自信はないのですが・・・。
 ところで,中央通りにあった番丁ラーメンがこの間見つけられなかったのですが,無くなったわけではないでしょうね,心配です。
番丁ラーメン (外野の住人)
2011-10-25 05:24:12
あれ
番丁ラーメンは、名掛丁のアエル側から入って、右側の三つ目?(金ちゃんランドというゲームセンターの手前のビルだったはず)のビルの地下にあるはずですが
先月も食べに行きました。
入口に昇りもあったと思います。
富沢にあった店は、4号バイパスの旧長崎屋の近くに移転したとか
うっ、もやし、玉葱、挽肉が入った特製あんかけラーメン(=番丁ラーメン)が食べたくなってきた
re:番丁ラーメン (外野の住人) (nowhappy)
2011-10-25 06:26:09
 外野の住人さん,コメントありがとうございます。
 2007年06月20日に紹介した店ですが,先日通った時に見つけられなかったので,ただ見落とししただけかもしれません。
無伴奏 (大瀧晴臣)
2013-09-18 14:56:56
何度も通った場所の今の姿を見せていただきありがとうございました。僕は小池真理子さんよりも2学年上の人間で、先日、「無伴奏」を一日で読んでしまい、小池真理子さんの「フアン」になってしまいました。生まれて初めての4751フアンレターを出そう、かと本気で考えました。あの時代には「響子」のような、素敵な、毒舌を吐き散らす「女の子」が周りにいました。過激であらざるを得なかった彼女たちの姿を今でも鮮明に覚えています。そんな女性からサカロフの存在も教えられました。「無伴奏」には背の高い、おさげの女性がいてショートホープを吸う合間に、注文を取っていたことを思い出します。ジャズを聞くのに疲れると行きました。大学に入ってからの仙台は、帰郷する場所でしたが、今だに肴町、鉄砲町、元寺小路という古い地名でしか方向感覚が保てない僕の「風街」です。本当にありがとう。
re:無伴奏 (大瀧晴臣) (nowhappy)
2013-09-18 20:45:07
 大瀧晴臣さん,コメントありがとうございます。
 1970年頃の仙台は,駅も古く東北の田舎町的な感じが残っていて,あの頃の仙台が好きです。
 私は今でも,細横丁とか東何番丁の角とか言ってしまい,若い人にそれは何処ですかと聞き返されます。
 肴町公園の元祖牛タンの太助の支店がありますが,その場所を説明するのにちょっと苦労するこの頃です。
Unknown (ケニア1号)
2013-10-25 11:58:17
はじめまして。
今、無伴奏読みかけですが、いろいろとあの頃を思い出してたらここにたどり着きました!
おかげさまで無伴奏の場所が判りました、ありがとうございます。
因みに番丁ラーメンの場所?となってるとこは山水亭といって、笹かまぼこが載ってたユニークな店ですね。政宗さんにちなんで麺は固め(片目)とか…
実際にはここの南隣の松竹が入ってたビルの地階と記憶します。飲食店がいくつか入っていて、向いのパスタ屋も人気でしたね。

それでは、たまに覗かせて下さいね。
re:Unknown (ケニア1号) (nowhappy)
2013-10-25 21:00:05
 ケニア1号さん,コメントありがとうございます。
 アーケード街に番丁ラーメンが移ったようですが,まだ,行っていません。
 昔ながらの店が残って頑張ってくれるのは,嬉しいですね。
 暇なときに,また,拙いブログを見て下さい。

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