やなせたかしさんの「アンパンマンの遺書」
なんだかもう、涙が出るくらいおもしろい…せつない、なんだか懐かしい、へんてこな自伝なんだけれども
このくらいの世代の方々で、もう亡くなってしまった方も多いけれど、どこといえばわからないのになぜか惹かれる人がいっぱいいます
やなせたかし、田辺聖子、宮城まり子、水木しげる、美輪明宏、五木寛之、草間彌生、黒柳徹子…
戦争や戦後民主主義、高度経済成長、そして震災と、跨いできた人たちの貫録なのかな
1973年にはじめて出版された絵本、「あんぱんまん」にはボロボロのつぎはぎマントのアンパンマンが描かれている
その本のあとがきには、「本当の正義というものはけっしてかっこうのいいものではないし、そのために必ず自分も深く傷つく」
また、「捨て身、献身の心なくしては正義は行えませんし、現在本当にわたしたちが困っていること、
物価高や公害、餓えなど、正義の超人はそのためにこそ闘わなくてはならない」と書かれています
敵は怪獣でもエイリアンでもよその国の人間でもなく、今目の前にある日常的な困難なのです
そのために、アンパンマンはボロボロの格好で、自分の顔を困っている人たちに食べさせて、心から喜んでいる
それがアンパンマンのはじまりでした
やなせさんは「人を喜ばせたい、人が喜ぶのがいちばん好きなの」とおっしゃっていました
凡庸な作家だと自分を下げながら、人の喜びのために、人に与えるために生き続けた
ほんもののアンパンマンであるやなせさんは、わたしの心の先生です