おっさんノングラータ

魚は頭から腐るらしいよ。( 'ω`)

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闇の子供たち(★★★★)

2008年08月04日 | 映画2008
「毎日新聞の皆さん」(笑)
goo映画(85点)
超映画批評(85点/今週のオススメ)

※ネタバレにつき閲覧注意。

タイにおける幼児売買春と臓器売買という重いテーマの映画。とは言え、以前から問題視されているし、臓器売買について言えば、先日もフィリピンで同じようなことがあったと報道されていた(これは成人への臓器提供だったが)ので、映画を観るまで「知らなかった」「ショックだった」という能天気な人もいないだろうが。

語り部は、在バンコクの新聞記者である江口洋介と、同じくバンコクのNGOで働くことを決めた宮崎あおい。江口は本社で掴んだネタを補強するため、バンコクで取材を進める。そのネタとは、難病で苦しむ日本の子供がタイで心臓移植を受けるというもの。15歳以下の子供が臓器移植を受けるため、渡米し、ドナーが現れるのを待つという話はよく聞くが、それがタイでなら滞在費が安く済むし、しかも都合良くドナーが現れるのだ。江口の取材により、ドナーは現れるのではなく作られるのだとわかる。

一方の宮崎あおいは、スラム街に住む子供たちに教育を受けさせるボランティアで働く。そこで直面したのは、親が金のため、子供を売春宿に売り払ってしまうという現実。小児性愛者の犠牲となり、エイズに罹患してしまった子供たちは、生ゴミとして捨てられるのだった。

幼児売買春と臓器売買は、子供を物として扱う時点で根は一つである。劇中でも、NGOが江口に共闘を申し出ている(が、断られる)。

根っこが同じ問題を二人の視点で追いかけるのは、性差による捉え方の違い以上に意味を持つ。女は目の前にいる子供を救えと叫び、男は近視眼的になってはいけない、大局的な見地で事実を捉え、同じようなことが二度と起こらない状況をつくり出さなければいけないと語る。宮崎あおいに「世間知らずな『自分探しボランティア女』」を演じさせ、わが子に心臓移植を受けさせようとする夫婦(佐藤浩市がそのお父さん役。険しい表情になるたび、デラ冨樫を思い出した)にぶつけることで男の言葉に真実味が与えられた。が、あくまでこれは男の論理である。結果を出したのは、暴力に屈することなく集会を開き、売春宿を摘発したNGO=女たちなのだ。

宮崎あおいを勘違い女と切り捨ててしまうのは男の論理だ。彼女がイノセンスの度合いを増していくほど、江口の影の部分が次第に色濃くなっていく。そして江口は自分の言葉に従い、心臓を抜き取られる運命の少女の顔を瞼に焼きつけることによって、重大な決断を下すことになる。物語の構造上、ここが一つのポイントであり、それまでのシークエンスは丁寧に描かれていると感じたが、「プロの映画ライター」によると「物語はスリリングだが後半の描写が慌しく、特にラストの主人公の秘密はとってつけた」のだそうだから驚きだ。主人公に秘密があるからこその演出や映画全体の構成を、全て見過ごしてしまったのだろうか。

※ここから、自分語りが混じるので閲覧注意。

もう10年ほど前になるが、タイには遊びで2回ほど訪れたことがある。プーケット島観光を含めると3回だ。そのうち2回は会社の旅行で、ほぼパック・ツアーだったが、夜はフリー。と言っても、男性社員の大半はそこからもパックで、バッポン通りを目指した。

積極的に行く者もいればそうでない者もいたが、初めて海外を旅行した者も多く、開放的な気分も手伝って、また上司の命令とあれば拒否することもできず、女を買った。中には「タイの貧しい女に金を与える、これは国際貢献だ」などと本気で自らの行為を正当化する者もいた。これが平均的な日本のおっさんかと思うと絶望的な気分になる。

おっちゃんは、当時も今も直接の上司がいないので何も強制されなかったし、その意志もないしで、ナイト・マーケットを冷やかして遊んだだけだった。周囲からはあらぬ誤解を受け、タイ人には無理矢理マッサージ・パーラーに連れて行かれたが、一人で旅したのは会社の旅行では回れなかった寺院と景勝地を訪れるためである。

これはタイに限ったことではなく、日本はもちろん外国でも、その種の遊び、と言うよりは売買とは無縁だ。素人童貞ならぬ玄人童貞である。玄人相手なら魔法使いを通り越してになれる域に達した。ああ、自分のことを棚に上げる必要なく宮崎あおいの立場で語れるのは何と気楽なことか。

ラスト・シーンの鏡は、もちろん観客に向けられたものである。それは、いつあなたが幼児売買春、臓器売買の加害者になるかもしれない、という警告に他ならない。それを回避するには、男(江口)の論理ではなく女(宮崎)の行動力である。してはならないことをしない、という行動力。幼児に限らず売春が禁止されているなら買うな、禁止されていなくても人身売買の可能性が考えられるようなら買うな、だ。臓器売買にしても同じことが言える。

もう一つ。実に象徴的だが、劇中に登場する「日本新聞」は「毎日新聞」がモデルである。そう、「変態新聞」と罵られている毎日新聞である。批判されても仕方ないことだが、批判する側も今一度、我が身を振り返ったほうがいい。自分の周囲がとりわけレベルが低いからかもしれないが、前述した通り、海外へ行って日本人は清廉だ、上品だ、という印象を与える人は少ない。そんな人が、果たして毎日新聞を批判する資格があるだろうか。

と、実に様々なことを考えさせてくれる映画だ。
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