銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

岸和田だんじり 祭りのあとに

2016年09月19日 | のほほん同志Aの日常

岸和田のだんじりと聞くたびに、思い浮かぶ情景がありました。

――入門したての落語家が、厳しい師匠にこてんぱんに叱られ、
おとうと弟子にも先をいかれ、情けない思いで地元の岸和田に帰り、深夜の駅に降り立つ。

今日は、だんじり祭り。
「日曜もないし、盆も正月もなかったら、…祭りもないわなぁ」
母の声を思い出す。
生まれて初めて祭りに出なかった、と思う。

ひと気のない道路。
路面に残る何本もの筋は、やりまわしの車の跡。
電信柱の下には、はじけ飛んだ、車輪(コマ)のかけら。
その残片を拾い上げる。

 「ポロポロと、はかなく指先からこぼれ落ちた。
  僅かに残ったそれを鼻先に近づけた。
  だんじりの匂いがした。
  角を曲がる時の、早打ちの鐘と太鼓が聞こえた様な気がした。
  それを口に含んで歩き出した。
  汚いとは思わなかった。」

(笑福亭松枝 『ためいき坂 くちぶえ坂』より)


その岸和田だんじり祭り、地車曳行(じぐるまえいこう)を、初めて目にしました。

観覧席の目の前に次々とやってくるのは、各町ごとの半被をまとった百人以上の男衆。

曳いているのは四トンもあるというだんじり。
総檜づくりで細かな掘りがほどこされ、それ自体が精巧な美術品です。

観覧席前で、少しの小休止。
息を整え、呼吸をあわせ、笛の合図で綱を持っていっせいに走り出し、
直角の狭い道を全速力で曲がるのです。








だんじりの屋根の上に立つことを許されるのは、ただひとりの花形若衆。

歌舞伎の見得の姿勢で風に立ち向かい、曲がりきったとみるや、屋根の上を右に左に飛び交う。
――勇壮な「やりまわし」です。



急カーブを見事に廻り、拍手がわきあがることもあれば、
曲がりきれずフェンスを押し倒して失速することもある。

事故も数えきれないほどあった祭りです。
祈るような思いで二十余りの町の「やりまわし」を見ながら納得しました。

これなら道路は筋だらけになるだろう、
電信柱にかすった地車や、車輪のかけらも落ちているだろう、
そして岸和田に生まれた男児ならば、祭りに出ない年なんてないだろう…。


だんじりから一夜明けた今日。
一年一度の賑わいが去ってひっそりした路上を、
何か思いを抱えて歩く青年がいるのかもしれません。


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