田園城郭都市構想 20

2017年02月13日 | 湖と城郭都市

1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
       -理想都市像の変遷-
6.世界遺産登録に向けた取り組み

 

6-1 世界遺産登録制度
6-2 世界遺産登録と国内事例

6-2-1 「白川郷」の場合

 以上のことから、確かに「白川郷」の景観は変わった
 が、
それは、〈景観の「悪化」〉と〈景観の「改善」〉
 の両方
に変化しているといえる。ただし、注意しなけ
 ればなら
ないのは、冒頭で述べた「悪化」と評されが
 ちな変化も
また、その実修景という見地から伝統的建
 造物群保存地
区内の歴史的風致と調和するように定め
 られた基準にし
たがって行われた「現状変更行為」の
 結果であり、必要
条件を満たし、正式な手続きを経て、
 白川村教育委員会
から許可を得ているものがほとんど
 だ。住民が好き勝手
に建造物の新築や増改築を行った
 わけではないというこ
とである。このことはつまり、
 景観に合うようにとつく
られたはずのものも、見る者
 によっては景観を悪化さ
る建築物になってしまうこ
 とを意味する景観保全の難し
さはここにある。そし
 て、必然的に、誰がそれを判
するのかということ
 が問題にならざるを得ない。

     才津祐美子「世界遺産の保全と住民生活-
            「白川郷」を事例として-」

そこで、彼女は、住民と「専門家」という二つの行為主体
に関する考察を軸に、修景を中心とした景観保全の在り方
の問題点を浮き彫り取りかかる。だが、住民は一枚岩では
ないし、「専門家」もま たそうである。ただ、世界遺産
登録後強まっている「専門家」の介入を相対化するために、
本稿ではこのような対立軸を設定することが有効だと考え
た。具体的には、まず、住民主体で行われてきた修景の在
り方に関する考察を行う。次に、住民の修景行為に対する
評価も含めた「専門家」が推奨する修景の在り方とそれに
対する住民の反応について考察する。その際、これまでほ
とんど指摘されてこなかった。世界遺産登録後の〈景観の
「改善」〉のための規制強化に着目し検討を加える。と、
述べ、また,「悪化」と評されるものにしろ、「改善」と
評されるものにしろ、重要なのは、それらの変化が「白川
郷」に暮らす人々の生活に直結しているということだろう。
にもかかわらず、「専門家」を中心とした。〈景観の「悪
化」〉を憂う人も、〈景観の「改善」〉を声高に訴える人
も、そこを軽視しているように見える。また、その変化を
「悪化」と考えるか「改善」と考えるかは評者によるとい
うことが自明視されていないこと――唯一無二の「正解」
があるように見なされていること――がこの生活軽視の状
態をより一層強めているように思われる。私が問題とした
いのはまさにそこであり、本稿の第一の目的は、先述した
ような世界遺産における景観保全の問題点を住民という生
活者の視点を交えて明確にすることにあるする。

①「白川郷」における景観保全の現場

「白川郷」のコアゾーンである荻町地区は、白川村の中央
より少し北にある。
荻町地区だけの産業別人口数の統計は
とられていないが、第3次産業に従事する人の割合が白川
村全体よりもかなり高く、その傾向は世界遺産に登録され
る前から見られていたが,世界遺産登録後、一層強まって
いる。一般に「農村」のイメージが強い「白川郷」だが、
そのイメージと実際の産業構造とのギャップは年々大きく
なる。このことはもちろん景観にも反映され、休耕地がか
なり目立つようになり、それもまた景観の「悪化」として
問題になっている。

②「合掌造り」保存運動と
    荻町地区の「文化遺産」化

1950年代以降庄川沿いで進んだダム建設に伴う立ち退きや
ダムの補償金による非「合掌造り」
への改築「合掌造り」
の村外売却によって「合掌造り」の数が減少したことから
60年代後半
に荻町地区の人々の問で「合掌造り」を保存し
ようとする動きが見られるようになる。また、
それはちょ
うど白川村が観光地化を目指しはじめた時期とも重なって
いたため、「合掌造り」
を保存し、観光資源として活かそ
うという機運が高まる。実際「合掌造り」保存運動の立役

者の一人である板谷静夫さんは、保存運動をはじめた動機
を「どうにか食べていければと考えて
はじめた」と語って
いる。

その際、国鉄キャンペーン・ディスカバージャパン(1970
年~)で
観光客が増加したことや観光資源保護財団(現日
本ナショナルトラスト)の助成金を70年から3
年間受ける
ことになったことなども追い風となる。さらに、町並み保
存運動の先駆地である
長野県妻籠の小林俊彦さん(当時の
役場の観光係長)を紹介され、 町並み保存の具体的な方
法を
学んだことが直接のきっかけとなり、71年12月25日に
「白川郷荻町部落の白然環境を守る会」
(以下「守る会」)
という住民組織が発足した。そしてここから、「合掌造り」
保存運動が本格化
したのである。この初期の「守る会」委
員が取り組んだ卞な事業の一つが、「合掌造り」の「文化
遺産」化だった。文化遺産」になれば補助金も入るし、必
然的に残っていくだろうと考える。

そこで、まず目指したのは史跡指定である。単体としての
「合掌造り」ではなく、荻町地区全
体の「文化遺産」化を
目指すには、当時はそれしかなかったのである。実際、「
白川郷」と一緒
に世界遺産になった「五箇山」こと富山県
平村相倉(現南砺市相倉) とL平村菅沼(現南砺市菅
沼)
は、1963年に国の史跡に指定されていた。そこで、はじめ
は岐阜県に働きかけたものの上
手くいかず、岐阜県選出の
国会議員を頼りに文化庁に出向き、直接陳情したという。
その際、近
々伝統的建造物群保存地区制度という新たな制
度ができることを知り、そちらを目指して準備を
進めるこ
とになる。

                               この項つづく

【エピソード】

NPO法人 白川郷自然共生フォーラム

白川郷自然共生フォーラムは、世界合掌集落のある白川村
を拠点とした、地域、環境 NGO、企業が三位一体となっ
て、
環境を取り巻く諸課題に地道に取り組むという、日本
では珍しい組織形態のNPO法人。
三者のそれぞれの強み
を生かし、「Think Globally Act Locally」という精神で、
環境教育の普及・啓発及び地元白川村をはじめ、幅広い地
域の自然環境保全に貢献していくことを目的として設立さ
れる。
 

【脚注及びリンク】
----------------------------------------------------- 

  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 世界遺産の保全と住民生活-「白川郷」を事例とし
    て-」才津祐美子、福岡工業大学、環境社会学研究
    (12)、 23-40、2006-10-31)
  3. NPO法人 彦根景観フォーラム 第4回世界遺産を目
    指す彦根の課題
     2008.02.29
  4. 世界遺産所在自治体の保全と観光活用に関する取組
    事例集 国交省観光庁 2014.10.24
  5. 世界遺産登録による経済波及効果の分析 えひめ地
    域政策研究センタ 2007.01.11
  6. 世界遺産登録と持続可能な観光地づくりに関する一
    考察『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会)
    新井直樹 第11巻,第2号,2008年9月
  7. 世界遺産を活用した観光振興のあり方に関する研究
    運輸政策研究所 第35回 研究報告会 小室充弘
    2015.08.05
  8. 世界遺産登録に向けた取り組み(2014年度)彦根市
  9. 世界遺産に登録されるまで|世界遺産検定 NPO法
    人 世界遺産アカデミー
  10. 高句麗平壌城の都市形態と設計 閔徳植、 国際日本
    文化研究センター学術リポジトリ
  11. 松本市の都市計画 松本市
  12. ひこにゃんがいてもダメ? 彦根城はなぜ世界遺産
    になれないのか 週刊朝日 2013年6月28日号
  13. 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
    JAPAN インタビュー前編 2007.03.02
  14. 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
    JAPAN インタビュー後編 2007.03.09
  15. 第1回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
    木啓明 2011.10.05
  16. 2回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
    木啓明 2011.10.07
  17. 第3回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
    木啓明 2011.10.19
  18. 第4回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々
    木啓明 2011.10.26
  19. 第8次彦根市交通安全計画 2012,03.22
  20. Core Strategy (2013) - Milton Keynes Council
  21. "The New Towns: There Problems and the Future
    Department for Communities and Local Government,
    2002.11.21
  22. 日本エシカル推進協議会Japan Ethical Initiative-
    エシカル日本
  23. 明治期廃絶城郭の公園化について ―史跡の保存
    活用の前史として― 佐々木孝文
     2015.06.26
  24. 都市とは何か 都市計画なぜ必要か - 東北大学
    奥村誠  2015.10.15
  25. 和歌山市都市計画マスタープラン 和歌山市
    2017.01.12
  26. 和歌山市立地適正化計画 2016.12.22
  27. 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
    京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也
  28. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  29. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  30. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  31. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
    宮﨑洋司市
  32. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  33. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 26
  34. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 26
  35. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 03
  36. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  37. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市 橋梁長寿
    命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  38. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  39. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2
    例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  40. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  41. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  42. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  43. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  44. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  45. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  46. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  47. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  48. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  49. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  50. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  51. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  52. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  53. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  54. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  55. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  56. 彦根市立図書館|簡易検索
  57. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  58. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と展望
    2014.11.26
  59. アウガ Wikipedia
  60. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  61. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  62. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Yahoo!ニュー
  63. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北
    新聞 2016.01.28
     
           

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