1日1時間の贈り物

高校一年生の長女と小学三年生の次女に贈る
1日1時間のお勉強 ~ 父との時間 ~

夜空

2017-06-02 | 日記
高校1年生のもう夏休みも始まろうという頃だった。
僕に興味など示したこともなかった親父がその夏は珍しく
自分が父兄懇談会に行くと言い出した。
自分と同じ高校に進学した息子に多少の期待を持ったのかもしれない。
或いはただの酔狂だったのかもしれない。
亡くなってもう二十数年が経ちもはや確かめる術はない。
もちろん僕はとてもややこしい事態だと思った。
返ってきていた期末テストは殆んどが赤点で
およそ自分でもなぜ自分がこんな進学校に通っているのか意味を見出すことができなかった。
学校から帰った親父は「ふんっ」そう鼻を鳴らして成績表をパサリと僕に投げつけた。
そして親父はそれ以上は何も言わずその場を後にした。
僕はおそるおそる成績表に手を伸ばしそれを開いた。
10段階評価で最低ランクの「E」という文字がそこには克明に記されていた。
以後、親父が僕に成績を尋ねることは一度もなかった。
勉強に関して言えば僕はそれ以来、学校ではもちろん家庭でも透明人間になった。
海の底にヒラメみたいにへばりついていつもそこから夜空を見上げていた。
でも海面より遥か深いそこは深い闇に覆われていて月や星の光は決して届かなかった。

昨日、長女が中間テストの成績を持ち帰ってきた。
分布表では280名の生徒の中、9割台が1名、8割台が24名ということで
9割台を取った長女は中間テストではダントツの首席という結果だった。
僕が知りたくても知れなかった、僕が憧れても叶わなかった長女の場所からは
夜空の月や星が鮮やかに見えるのだろうか。
もし親父が生きていたら長女にどんな風に声をかけてくれたのだろう。

ニコニコと成績表を見せてくれた長女が僕の通った同じ高校に通いながら
もはや僕とは全く違う道(次元)を歩んでいることを知った。
もちろん…、とても嬉しかったし、喜ぶべきことなのだ…。
当時の僕からは後ろ姿さえも見えなかった首席の生徒が僕のそばにいる僕の娘だとは。
もう長女は僕からは遠く離れていってしまったのだという思いが頭をよぎった。
「1日1時間の贈り物」がコトリと終わる音がどこからか聞こえたような気がした。
寂しさを打ち消すように「僕はここを目指してきたんだ」そう自分に言い聞かせた。
これからは長女の目に映る夜空の話を楽しみにしていけばいい。
月や星がどれほど美しいのか、そんな話を楽しみにしていけばいい。
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