ノエルのブログ

文学、映画、ガーデンを巡る雑記帳

百年の家

2017-06-09 21:10:10 | 本と雑誌
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  「百年の家」 J・パトリック・ルイス 作。 長田弘 訳  講談社

  

 図書館で借りてきた絵本。といっても、荘重な感じのする表紙からもわかる通り、いわゆる「大人の絵本」というもの。

 1656年(!)という古い時代に建てられた一軒の家――この本はそんな家の1900年から1世紀に及ぶ歴史を、詩のような短文とともにつづったもの。
 家の歴史といっても、そこに住む一家との温かなふれあいがみっちり書かれている、というわけでは全然ない。この家に住む住人は、風のようにやってきて、またいずこへとなく去 ってゆく。

古い家は、ただ自分の内部に住む人々の喜び、悲しみを見つめるだけだ。だが、人々の記憶は、その壁や柱に消えない痕跡を残してゆく――この本は、そんな記憶を持った家の一人語りといっていいかもしれない。

淡々としていながら、陰影を感じさせる文章――これは訳者が、長田弘と聞いて、納得。かの有名な詩人の詩を読んだことはないのだが、その素晴らしい言語感覚は、いくつかの翻訳でふれてきたのだ。

そして、影の主役というべき絵。文章を載せたページと交互して、挿絵のみが一面に広がった見開きページが登場する。この絵も素晴らしい(ただ、私自身の好みとしては、こういう精巧なリアリズムを感じさせるのは、好きではないのだけど)。
どこかで見た絵だと思い、離れの「ノエルの本棚」をひっくり返してみたら、あった……「白バラはどこに」


 上の写真の本がそれ。やっぱり長田弘 訳で、みすず書房から刊行されている。

ナチス時代のドイツ。ふとしたことから森の中に迷い込み、収容所の子供達の悲惨な有様を見た、ドイツ人の少女。白バラと呼ばれる、小さな少女の善意と死を描いた、悲しい物語なのだが、傑作であることは間違いなし。

 明るく面白い、だけでない、ずしりとした読後感を求める方におすすめ―今夜の紹介は、この二冊でした。
        
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