のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「神の国を侵略した龍」1

2017-08-19 13:07:49 | 小説
「ちわーす、猫猫弁当でーす!」
 お弁当屋さんがテレストリアルガードのサブオペレーションルームに仕出弁当が入った箱を持って入ってきました。部屋には海老名隊員以外のテレストリアルガードの隊員が揃ってます。インターネットにアニメ鑑賞に詰将棋と、もうみんな好き勝手にやってます。唯一真面目にレーダースコープを見ていた(と言っても、これもながらですが)上溝隊員が振り返り、お弁当屋さんのところに歩いて行きました。
「いつもいつもご苦労さん」
 上溝隊員はお弁当屋さんが持っていた書類にハンコを押しました。
「どうもどうも。あ、一番上の色の違う弁当箱が減塩弁当です!」
 と、お弁当屋さんはふと壁を見ました。ちょっと前に女神隊員が破壊した壁です。
「おや、壁が仕上がってる」
 それに上溝隊員が応えました。
「昨夜ペンキを塗ったのよ」
「へー。しかし、こんな頑丈な壁なのに、なんでぶっ壊れたんですか? ゴリラ星人でも暴れたのかな?」
 真犯人の女神隊員が困惑した顔でお弁当屋さんを見ました。と言っても、女神隊員は今フルフェイスのヘルメットをかぶっていて、どんな顔してるのかまったくわからない状態なのですが。上溝隊員は苦笑して応えました。
「あは、レーザーガンが暴発したの」
「へ~・・・」
 お弁当屋さんは去って行きました。
「んじゃ、また~」
 上溝隊員は別の色の弁当箱を隊長の前の前に置きました。
「はい、お弁当です」
 その弁当箱を見て、隊長は露骨に嫌な顔をしました。しかし、上溝隊員はそれに気づきません。上溝隊員はそれ以外のお弁当を他の隊員に配りました。次に上溝隊員はお椀にみそ汁のもとを入れて、それにポットのお湯を注いで、できたみそ汁を橋本隊員に渡しました。
「はい」
「ありがと」
 そして倉見隊員に、寒川隊員に、女神隊員に、そして最後に自分の席にみそ汁のお椀を置き、そのイスに座りました。隊長はその上溝隊員を見て、
「あ~ あの~ 上溝さん・・・」
「はい、なんですか?」
「オレのみそ汁は?」
「へ?」
 上溝隊員は最初不思議な顔をしましたが、次に諭すような顔をして、
「隊長、お医者さんに言われたでしょ。減塩しなさいって!」
 実は隊長は急性心筋梗塞でカテーテル手術を受けたばっかり。隊長は3泊4日で退院しましたが、退院の日、病院からレクチャーを受けました。その内容ですが、急性心筋梗塞の主な原因は塩分の摂り過ぎ。これからは塩分を控えること。具体的には、1日6g、1食2gまで。実はみそ汁には、塩分が1.5g以上入ってるのです。弁当だって通常2.5g以上の塩分が入ってます。つまり弁当+みそ汁で1食4g以上の塩分摂取になってしまうのです。
 隊長と一緒にレクチャーを受けた上溝隊員は、そのときから隊長の食事に異様に気を使うようになりました。みそ汁を抜いたのはそのせいです。しかし、それは隊長には苦行でした。ともかく減塩弁当は味が薄い。みそ汁は抜き。これが朝・昼・晩です。隊長はむしゃくしゃしてきました。
 だいたい隊長の胸の病気の原因は、あの赤い女の子が放った矢です。あれで心臓が止まったのです。それがなんで急性心筋梗塞になった? まったくの理解不能な状況なのです。

 午後4時過ぎ、海老名隊員が中学校から帰ってきました。
「ただいま~」
 海老名隊員はさっそくノートパソコンを広げて、インターネット開始。それ以外はなんの変哲もない1日でした。
 いよいよ夕食の弁当を注文する時間となりました。上溝隊員が固定電話の前でみんなに質問です。
「みなさん、お弁当はいつものやつでいいですか?」
 それに対し橋本隊員は、
「ああ、いいよ」
 倉見隊員も、
「いいですよ」
 しかし、隊長は浮かない顔をしてます。寒川隊員はそれに気づき、
「あ、隊長、これからカラオケに行きませんか?」
 隊長の顔がぱっと明るくなりました。
「おお~ いいねぇ~!」
 海老名隊員もその言葉に反応しました。
「あっ、私も行く~」
 しかし、上溝隊員はあまりいい顔してません。
「ダメです、カラオケハウスに出てくる料理はみんな味が濃いんですよ。塩分も当然たくさん入ってるはず!」
 ここで海老名隊員が助け船。
「大丈夫ですよ。私が見張りますから」
 倉見隊員は食い下がります。
「あなた、歌いだすと歌に夢中になっちゃうじゃん。そのスキに隊長がこっそり食べたら・・・ やっぱりダメ!」
「それも大丈夫。私が熱中したら、女神さんが隊長を見張ってるから」
 女神隊員はええ~とした態度をして、自分を指さしました。上溝隊員はついに折れたようです。
「わかったわ。今日だけよ」
 海老名隊員は大喜びです。
「やった~っ!」
 隊長も、寒川隊員もうれしそうな顔を見せました。

 夜と夕方の中間の時間帯。遠くの空だけが赤身がかってます。ここはテレストリアルガード本部の車庫。今大きなシャッターが開き、SUV車が出てきました。テレストリアルガードのカラーリングが施されてないクルマです。実は寒川隊員の私用のクルマです。
 SUV車がゲートの前に来ると、ゲートが自動的に上りました。すると両側からカメラを持った男女が出てきて、SUV車を囲みました。で、車内をバシャバシャ撮影しました。助手席に座ってるサングラスをしている海老名隊員が、わざとらしく嫌な顔をしました。SUV車がカメラマンたちを無視して街道に出ました。
 車内です。海老名隊員はサングラスを取りました。
「もう、ほんとうにあいつら、迷惑なんだから・・・」
 ちなみに、今このクルマを運転してるのは寒川隊員。後部座席には隊長がいます。もちろん、みんな、私服です。
 先ほどのカメラマンたちは、新○や文○や東○ポなどに雇われたカメラマンです。巷では女神隊員は宇宙人で単眼てところまでバレてます。でも、その単眼をカメラに収めた人はだれもいません。だからマスコミは女神隊員の単眼を狙ってるのです。しかし、女神隊員はたくさんの秘密技を持ってます。その1つがテレポーテーション。
 街道の道端に白いワンピースにを着た女性が立ってます。実はこの人が女神隊員。テレポーテーションでここまで来てたのです。
 頭には大きなつばの帽子がありますが、いつもの白い帽子ではありません。これはす○○かのク○リが被っていた帽子。海老名隊員がアニメコスプレアイテムを販売するサイトで買ってあげた帽子です。女神隊員も大変気に入っており、今日初めての外出で被ることにしました。ちなみに、帽子の下には、いつもの前髪のウィッグがあります。
 先ほどのSUV車が女神隊員の側に停まり、女神隊員が後部座席に乗り込みました。
「海老名さん、どうです」
 女神隊員は帽子のつばを両手で触って、海老名隊員に呼びかけました。
「うん、最高!」
 海老名隊員は笑みで応えました。

 カラオケ店のフロントです。寒川隊員と店員のやりとり。
「4名様、2時間ですね」
「はい」
「それではこれにサインをお願いします」
 後ろで待っていた女神隊員の耳元にこんな会話が聞こえてきました。
「お、おい、あの帽子、す○○かのク○リの帽子じゃないか?」
「ほんとだ」
 どうやらヲタクの青年同士の会話のようです。女神隊員はその会話に興味を持ったようです。聞き耳を立てて、その会話を聞くことにしました。
「ク○リてたしか、精神崩壊しちゃうんだよな」
 それを聞いて女神隊員は唖然としました。
「そうそう、なんとか持ちこたえたけど、最終回でまた壊れちゃって、最後は蜂の巣になって、自爆しちゃうんだよなあ」
 それを聞いて女神隊員はびっくり。精神崩壊、蜂の巣、自爆・・・ いつかは自分もそうなるかもしれません。なんか、ものすごく嫌なものを聞いてしまいました。