いろはにぴあの(Ver.4)

大人になって再開したピアノ(中級レベル)を楽しんでいます。よろしくお願いします。自然大好き!

音楽入門講座 モーツァルト

2017-07-14 | ピアノ、音楽

 先日聴いたモーツァルトの講座、改めて振り返ってみる。この講座、富山市のホールが企画した音楽入門講座の第2回目で、講師は作曲家加藤昌則氏。モーツァルトの格好で登場し会場を湧かせた。

 古典派の作曲家による楽曲を数曲流し、この曲はモーツァルトの曲か他の作曲家の曲かというクイズから始まった。ハイドン作曲ソナタHob.XVI 37、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ作曲シンフォニア、クレメンティ作曲ソナチネOp.36-3、ヨハン・クリスチャン・バッハ作曲ピアノソナタ、モーツァルト作曲交響曲第17番がかかった。私はカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ曲シンフォニアをモーツァルト作曲に、モーツァルト作曲交響曲第17番を他の作曲家の曲だと思ってしまった。これぞモーツァルトの曲だというイメージを確定することのむずかしさから話は導入。そして天才だと言われていたモーツァルトも実は他の作曲家から大きな影響を受けてきたという話で始まった。

 モーツァルトはハイドンに師事していたが、モーツァルトの音楽づくりに大きな影響を与えたと思われる作曲家は、ハイドンよりもむしろ、ヨハン・セバスチャン・バッハの末息子であるヨハン・クリスチャン・バッハであった。優雅で歌心に溢れた作風であり、オペラ作曲家として名を成しているヨハン・クリスチャン・バッハとロンドンで出逢ったモーツァルトはすっかり意気投合し、生涯にわたって敬愛し続けたという。そして私が最初に間違えた交響曲第17番は、加藤氏の解説によると、クリスチャン・バッハに出逢う前に作られた曲であり、我々がモーツァルトらしさと感じる要素が生まれる前の時期の曲だったのではないか、ということだった。

 モーツァルトは新しいものへの好奇心にあふれていた。生誕地のザルツブルグにはなかったクラリネットに関心を持ち、クラリネットを活用させる交響曲第31番、パリ交響曲を作り上げた。

 またモーツァルトの妻コンスタンチェは悪妻と言われているが、歌がうまく、婚約のために書かれたミサハ短調の、コンスタンチェが歌うパートはかなりの技巧が必要なものだった。だが彼女はモーツァルトの妻であることをモーツァルトの生前にはあまり表だっては言いたがらなかったという。モーツァルトは実はかなりお金をかせいでいたのだが、使い方が分からない人だったらしく、そのために貧困に苦しむはめになった。

 モーツァルトは遊び心とサービス精神にあふれた人であり、遊び心にあふれた曲も作った。その代表例として、『音楽のさいころ遊び』という曲がある。下図のような表が2つならんでいる。二つのサイコロを振り出た数字を足した数を縦軸、小節番号を横軸(1小節目をA、2小節目をB・・・となるようにしている)し、縦軸と横軸とが交わったところに書かれた番号の楽譜パターンを組み合わせると、全部で16小節の曲が出来るという。その時に振って出たサイコロの目の合計で曲も決まる、偶然によってつくられた二つとして同じ曲が誕生しない仕組みになっているのだが、そこで出来上がった曲は自然に始まり転調しふたたびもどり自然に終止するというすわりのよい楽曲になっている。

 楽譜パターン、1小節目に該当するAの縦軸に値する番号の楽譜は音楽の開始パターン、そして5小節目のEに値する番号の楽譜は5度上の属調への転調パターン、そして後半15小節目に値する番号の楽譜は元の調に戻る転調パターン、最終小節に値する番号の楽譜は終止パターンになるように仕組まれているのだけれど、楽譜パターンが膨大な上にその背後にある仕組みも見えにくいのでまるで魔法にかかったようなわくわく感を味わうことができる。講座では、子供たちがサイコロをころがし、大人の方が出た数を読み上げ楽譜カードを貼り付けてゆき、実際に貼り付けられた楽譜をもとに加藤氏が演奏されたのだが自然に入ってくるすわりのよい音楽でその場で作られたばかりの楽曲に観客から拍手が沸いた。

 モーツァルトの音楽づくり、特に後半に影響を与えたもう一人の作曲家が、ヨハン・セバスチャン・バッハである。ウィーンでのスヴィーデン伯爵のコンサートに招待されたモーツァルトは、当時は忘れ去られようとしていたバッハの音楽に魅せられ、楽譜を入手してフーガを編曲したとともに、自分の音楽の作風にもバッハのフーガに見られる対位法を採り入れた。

 たとえば『交響曲41番ジュピター』の第4楽章。爽やかに聴こえるこの楽章だけど対位法が巧みに採り入れられ立体的で深みのある音楽となっている。「ドーレーファーミー」というジュピター音型からなる第1主題、そして一気に下降するような経過的な音型、それらの音型が組み合わさりおいかけっこ、「レシミ」という3音からなる第2主題も登場したかと思ったらこちらも一気に下降する音型、そしておいかけっこ、まさにバッハのフーガを思い起こさせるような展開である。その後短調になったりしてぞくぞくした後最後のフーガはまさに主題同士、そして主題が反対方向から音が進む逆行形、音の高低の動きが対称的になる反行形も登場し、華やかに追いかけっこ、まるで花火を連続して打ち上げているように華麗で熱気にあふれた音楽、背景にはバッハから学んだ対位法があった。アーノンクール指揮ウィーンフィルによる活気あふれた演奏と、楽譜とを対照させながらの解説、分かりやすくて面白かった。ジュピターを聴く視点が変わりそうな気がしてきた。

 ソナタ形式についての説明もあった。『アヴェ・ヴェルム・コルプス』、短いのにも関わらず、音楽の中に人生そのものを感じさせるようなドラマがあるのがなぜか、ということだが、曲の構造が、提示部1 (第1主題)→提示部2(第2主題、提示部1から転調)→展開部→再現部 (第1主題第2主題) という、一曲のなかにストーリーが感じられるようなソナタ形式になっているからだという。特に展開部では耳のよりどころとなる主題がないため緊張感が感じられ、主題が再現される再現部で緊張から解放される、その緊張と解放の流れが、音楽からドラマを感じさせるようにしている。ソナタ形式によって、テーマとなるメロディーが複数となりパーツに分けることができるようになったため、複数の感情を組み合わせることができるようになった。その点で、一つのテーマが一貫して流れる傾向が多かったそれ以前の音楽とは対比的である。

 『レクイエム』はモーツァルトが生涯の最後に書いた名曲だが、実は最後のラクリモーサの第1小節目、音同士ぶつかり合う音とそうでない音とが交互となっている、そうすることで緊張感が生まれ、赤く囲んだ音ドとド#の部分でその緊張感と悲しみが極限へと。。。もっともぶつかり合う音同士を隣り合わせることで、極度の緊張と嘆きの感情が現れている。赤く囲んだ部分、たしかにぞっとするほどたまらなく、そして美しい部分だ。ぶつかり合う音を採り入れることで一小節の中でこれだけの起伏ある感情が生まれている。

 次にオペラ『魔笛』の序曲が登場、これから面白いお話の始まり始まりと語っているような、朗らかな音楽だが、ここでもモーツァルトはフーガを採り入れていた。オペラの音楽にフーガという、一見関連性がなさそうな要素を取り入れて当時としては斬新な音楽の世界を作り上げていた。

 最後に、流行の曲が大好きだったモーツァルトが当時のトルコ趣味に乗っかって作ったというトルコ行進曲が華やかに演奏され、講義は幕と閉じた。

 モーツァルトは天才であっただけでなく、サイコロ遊びで曲が作れるようにするなど、遊び心とサービス精神が旺盛だった。そして作風が合うと思ったり尊敬したりした作曲家から多くのことを吸収していた。おかげで彼が生み出された音楽は耳に心地良いだけではなく斬新であり奥深さが感じられるものだった。モーツァルト、元来好きな作曲家の1人だったが、ますます好きになった。今回は講義内容を整理するつもりで書いたが、これからも彼の音楽を沢山楽しんでいきたいと思った。

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3 コメント

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素晴らしい講義録! (PIO)
2017-07-15 08:29:11
とってもわかりやすい、中身の濃い記述をしてくださり、ありがとうございました!
図まで入れ込んでくださって、さぞ時間をかけて取り組まれたことかと。
クリスチャン バッハとモーツァルトとの関係性については、私も先日ラジオ講座で聞いたところなので、納得しながら読みました。
こんな講座を企画されるなんて、やりますねえ、富山!ブラボー!
有難うございます! (のここ)
2017-07-15 12:28:05
PIOさん、久しぶりに書いた議事録、ぎこちなくて読みにくい面もあったかと思いますが温かいお言葉有難うございます!講師の加藤先生が素晴らしいのです^^観客も舞台に立ってサイコロを触れたのですが。この一連の講座、昨年から始まり私は今年から行くことにしたのですが本当に行くことにしてよかったです。ただ年間チケットの売れ行きが早すぎて今からは今年の分は申し込めなくいのが何とも厳しいなあと思います。
図は入れないと分かりにくいと思いましたが入れても説明しきれていないような気がしました。動画など音楽も入れたら完璧なのですがそうなるとますます大変ですね。。それ以前にネタバレしすぎ状態になってしまいましたね。
クリスチャン・バッハとの関連、確かラジオで武久源造先生が話されていましたね!題材も好きだった上にPIOさんの丁寧な議事録からも刺激を受け聴いていました。今放送中のテーマも面白そうですね^^また聴こうと思います。
すみません、修正です^^; (のここ)
2017-07-15 12:33:38
先ほどのコメント、一部直します。観客も舞台に立ってサイコロを振れたのです、でしたね。

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