哀しい子どもの話と、幸せそうな子どもの話・・・

　神戸市長田区の生田美玲ちゃん行方不明事件は、何とも痛ましい結末を迎えた。まさかこんな無残な姿で発見されることになろうとは、ニュースを聞いて驚いた。だが、事件が長期化することなく犯人がすぐに逮捕されたことは本当によかった。
　容疑者の男が住んでいたのは、美玲ちゃんの家から約１５０メートルしか離れていない２階建てのアパート。男は昨年５月に関西地方の刑務所を出所、生活困窮者を支援する神戸市内のＮＰＯから紹介され、昨年６月に入居したという。以後、生活保護で暮らしていたらしいが、こんな男を税金で養っていたのかと思うと腹立たしい。
　ニュースによると、このアパートに猫を飼っている住人がいて、美玲ちゃんは約１年前からこのアパートを頻繁に訪れていたという。その男性によると、美玲ちゃんは猫が好きで、この男性が飼っている猫と遊ぶために来ていたという。また、容疑者も猫を飼っていたそうで、猫を通じて２人が顔見知りになった可能性があるとも報じられている。無心に猫と遊んでいただけだろうに、まさかこんなことになろうとは…。容疑者には度々問題行動が目立ったという。また、軽い知的障害があったとも報じられているが、こういう危険人物を監視するシステムがあればいいのに、と残念でならない。
　また、美玲ちゃん一家は最近引っ越したばかりだそうだ。新聞には母親と生後６カ月の妹との３人暮らしとなっているが、元の住居近くの住人が「赤ちゃんが生れて、新しいお父さんと引っ越して行った」とリポーターに話しているのをテレビで聞いた。家庭内に何か事情があったにせよ、わずか６歳で無残な最期を遂げた美玲ちゃん、せめてこれまでの６歳が幸せな人生であったと思いたい。 

　２３日、スイミングが終わり、スーパーで買い物をして帰途についた。我が家までは海沿いの道を１５分ほど歩く。この道辺の海は船泊まりになっていて小さな漁船がたくさん停泊している。道沿いの６０cmくらいのブロック塀の所々に石段があって、下りてゆくと幅１ｍくらいのコンクリート道がずっと続いている。
　その道に小学校の高学年らしい３人の女の子がいたのだが、「こんにちは」とあいさつされるまで彼女らに気付かなかった。あわてて私も「こんにちは」とあいさつを返す。こんなふうに子ども達からあいさつされると何だかうれしくなる。上の道に上がってきて、私と前後しながら同じ方向へ歩く。「どこへ行くの？」と声を掛けると、「そこらへんを散歩してます。休みの日に一日中家にいるのはいけないことになってるんで…」という。後になって理由をきけばよかったと思ったが、昨今、外で遊ぶ子どもは珍しい。家の中でゲームばかりしていないで外で遊ぶようにと、学校から言われているのだろうか。
　３人寄れば何とやらで、女は大人も子どもも変わりない。後ろから歩いていると、明るい笑い声や話し声が聞こえて、ついつい耳をそばだてる。子どもっておもしろいなと思いながら歩く。「おやつあげようね。アメしかないけど３人で分けてね」「えっ、ほんと！ありがとうございます」とうれしそうな声。「怪しい者ではないからね」というと、「そんなこと思いません」という。「いいえ、わからないからね、気をつけてね」「はーい、ありがとう」という明るい声に送られて、私は何ともいえないほのぼのとした気分で歩調も軽く帰宅した。
　子ども達の笑い声ってすてきだ。こんな明るい笑い声を上げるこの子たちは、きっと両親に愛されながら幸せな毎日を過ごしているのだろう。大人になって社会に出れば色々と苦難はあるだろうが、せめてそれまでは何事もなく、災禍に遭うことのないよう、世の中の子どもみんながそうであってほしいと願わずにはいられない。