第二話 「嫉妬とヤキモチ」
白玉楼を飛び出したとき、気がついたら遠くにいた妖夢。
妖夢を探していたときには遥か遠かった距離。
二人は、互いの思いと気持ちを確かめ合うことができた。
長い距離も、二人では短いものだった。
気がつけば、いつのまにか白玉楼に戻ってきていた。
「妖夢〜。 お腹空いちゃったから、ご飯用意してくれる?」
二日ほど、何も食べていない幽々子だが、けろっと笑って妖夢にお願いをする。
「わかりました。では、すぐにご用意致しますので」
と言うと、急いで台所へ妖夢は向かった。
・・・バタッ
幽々子は、もう何もする気力が残っていなかった。
ただ、妖夢の前では、心配をかけたくなかった。
「幽々子様。ご飯のご用意が出来ました。」
幽々子のいる部屋の前に来た妖夢。
しかし、何も返事が返ってこない。
「幽々子様? 開けますよー?」
そっと襖を開ける。
「幽々子様!!!」
襖から見た幽々子は、床に倒れていた。
「幽々子様!!幽々子様!! しっかりしてください!!」
何度も身体を揺すり、何度も幽々子の名前を叫ぶ妖夢。
・・・きゅるるるるる〜。ぐきゅるるるるる〜。
幽々子からの返事はお腹の空腹で鳴る音だった。
「・・・幽々子様。ふふ♪」
よく幽々子の身体を見ると、所々怪我や、衣服が破けていた。
妖夢は、布団を敷き、幽々子を布団に寝かせる。
部屋に食事を持ってくると、幽々子が目を覚ますのをずっと待っていた。
正座をし、幽々子の側でずっと起きるのを待った。
時々、寝言で「妖夢〜おかわり〜・・・妖夢〜よ〜か〜ん・・・」
と、ずっと食べ物の寝言を私に申し付けてくる。
「う・・・ううん。」
気がついたら、妖夢も寝ていた。
なぜか布団の中で寝ていた。
そして、何かがもぞもぞと動いている。
うっすらと目を開けて確認すると・・・
半身が必死に何かから逃れようとしていた。
視線を枕のほうへ上げていくと・・・
幽々子が妖夢を抱きながら、半身にかぶりついて寝ていた。
「幽々子様!! それは食べ物じゃないです!!」
「ぎゅ?? ひょーふ もはおー」
半身にかぶりつきながら幽々子が答える。
「幽々子様。食事の用意は出来てますから!! 半身を離してください!!」
よだれまみれになった半身を手放すと「ごはーん♪」
と、笑顔で手をパチパチとさせていた。
猛烈な勢いで食べ始めた幽々子。
「はぐっはぐっんぐぐっ!!」
「ゆ・・・ゆゆこさまっそんなに慌てなくてもご飯は逃げませんよ〜」
と、苦笑しながら幽々子にお茶を差し出す。
「んぐっんぐっ ぷはぁ〜♪ おかわり〜♪」
「はいはい。どうぞ♪」
と、茶碗の高さ2倍ほどの山盛りご飯を幽々子に差し出す。
「はぐっはぐっ!」
妖夢は、そんな幽々子を見て、とても嬉しかった。
自分の作ってくれたご飯を必死に食べてる幽々子。
あの時の会話を思い出していた。
『私を一人にしないと・・・私も妖夢を一人にしないから』
自分を必要としてくれている人が目の前にいる。
そして、自分も幽々子が必要だということ。
食事が終わり、日課をこなす妖夢。
たまりにたまった仕事を必死に終わらせていく。
そして、日常はいつもどおりに流れていく。
それから半月ほどたったある日・・・
「妖夢〜。妖夢〜」
妖夢を呼ぶ幽々子の声が聞こえる。
「はいっ なんですかー??」
と、慌てて幽々子の元へ向かう。
「紫の所行くわよ。準備しなさい」
「え?今からですか?」
「さ、行くわよ」
「まっ、待ってください!! すぐに仕度しますので!」
と、急いで用意をする。
幽々子は、どうしても確認したかったことがあった。
『うん・・・そうね。ここをずっと行けば見つかるわ』
なぜ妖夢がそこにいるのがわかっていたのか。
『「帰りません」と言ったらどうするの?』
なんでそんなことを聞いたのか。
紫はもしかして、私の反応を楽しむために・・・
気がつけば、少しずつ、紫のことを不信感で染めていっていた。
(もしそうなら、たとえ紫でも許さないわ!)
「お待たせしました幽々様!!」
息を切らして妖夢が幽々子の元へ駆けつける。
(いったい私の知らないところで何が・・・)
ずっと考え事をしている幽々子。
「幽々子様?? どうかしましたか?」
「ん? あ、うん。 じゃ、行きましょうか」
と、幽々子は少し早い速度で紫の元へ向かう。
「紫っ いるの? 紫!?」
普段と違う声に、妖夢は少し驚いた。
「どうしたの?そんな大きな声で言わなくても聞こえるわよ?」
少し眠そうな顔をした紫が、幽々子と妖夢を迎える。
「紫、ちょっと聞きたいことがあって来たの。」
「立ち話もなんだから、中に入っていいわよ。」
そういうと、部屋に案内される妖夢と幽々子。
部屋には、藍と橙もいた。
「あら?いらっしゃいませ」「あ、よーむーこんにちわー」
二人が出迎えてくれた。
「あ、橙さん。あの時は本当に申し訳ありませんでした!」
と、いきなり平伏す妖夢。
「うにゃ??私こそごめんなさい。せっかく作ってくれたのに・・・」
と、橙が妖夢の元へ慌てて駆け寄り、妖夢の顔を起こす。
「よーむー、一緒にあっそぼ♪」
「もちろんです!」
「あらあら、すっかり仲良しになっちゃったわね。」
紫が二人を見て、微笑んでいた。
視線を戻すと、幽々子が正座して目を閉じていた。
「藍。ちょっと買い物に行ってきてくれるかしら?」
藍は、すぐに紫の申しつけを了承すると、部屋をすぐに出て行った。
橙も、様子に少し違和感を感じたのか、妖夢を誘って部屋を飛び出した。
紫は「さて・・・と」と言うと、幽々子のほうへ向きなおした。
「紫、聞きたいことがあって来たの」
「珍しく真剣な顔ね。何かしら?」
「あの時私に付き合ってくれてありがとう。感謝してるわ。おかげで妖夢にも会えたわ」
「当然のことをしたまでよ。」と、ズズズとお茶をすする。
(当然のこと?やっぱり・・・)
「紫!!なんであの時妖夢の居場所を知ってたの!?」
紫はすすっていたお茶をテーブルに置くと・・・
「あら?理由が必要なのかしら?」
と、紫は幽々子に怪しく微笑みながら言う。
「なんで、『「帰りません」と言ったらどうするの?』なんてことを私に聞いたの?」
幽々子は、紫に厳しい視線を見せる。
紫は、視線を逸らすことなく・・・
「もう一度言うわ。理由が必要なのかしら?」
表情を変えることなく、もう一度幽々子に言う。
「あなたって・・・変わらないわね。ふふ♪」
そういうと、幽々子は紫にくすくすと、満面の笑みを見せる。
幽々子は知っていたのだ。
『理由が必要なのかしら?』と言うときは、私のために必死になっているということを。
紫は、「あなたもね。」と言うと、やさしい表情になりお茶をすする。
お茶を飲み終わった紫は、幽々子の隣に座ると
そっと幽々子の肩に頭を乗せる。
「紫?どうしたの?」
いきなりの行動に驚いた幽々子
「少し、まだ眠くてね。」
と言うと、そのまま眠ってしまった。
安らかな寝息を聞きながら
「しょうがないわねー。」
というと、頭を膝に乗せ、膝枕をする。
「ただいま戻りました!」「たっだいまぁ〜♪」「紫様。今戻りました。」
ちょうど三人が帰ってきた。
「静かに。おかえりなさい」
「あ、申し訳ありません。幽々子様。」(・・・あれ?)
妖夢の視線は、幽々子を見ているが、何か胸の辺りがもやもやしていた。
「幽々子様。よろしければ今日は泊まってはいかがでしょうか?」
藍はそういうと、「うん。そうするわ♪」と小声で言う。
「妖夢。今日は泊まっていくから」と幽々子が言うと
「あ。。あの・・・はぃ・・・」・・・(なんだろう・・・この感覚)
「よーむー。よーむも一緒に泊まってよー。」
橙がそう言う。「よろしかったら一緒に泊まっていってください。」
藍もそう言うと、「わかりました。今日はよろしくお願いします。」
と深くお辞儀をして言葉に甘える。
幽々子は紫の髪を撫でながら、幸せな笑みを向けていた。
(・・・なんだろう。なんで・・・)
胸を何かが締め付けていた。
初めての感覚だった。
妖夢は、視線を床に向け、その場に座り込んでいた。