石原延啓 ブログ

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イヌイットの版画

2011-01-23 00:05:57 | Weblog


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カナダ大使館高松宮記念ギャラリー「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」展のパネルディスカッションを聞きに行く。
50年ほど前にカナダの北極地方にある小さなコミュニティー、ケープドーセットに日本の伝統的な版画技術が初めて持ち込まれ、今も尚、現地の版画工房では質の高い作品が制作し続けれられている。
パネルディスカッションはカナダ文明博物館のキュレーターや研究者、工房で働くイヌイットの職人等の間で主にテクニカルな話題が中心となり進行した。
最後の質疑応答では神話を含むコミュニティーの物語を版画という手段で人々に伝える重要性についてイヌイットの職人さんに尋ねてみた。
答えは想像した通り経済的なことが一番重要という。近代以降の北米大陸に住むネイティブたちのしんどい状況は私なりに理解しているので神秘的な答えを期待していた訳でない。そして「お金が重要」という答えやあまりに素朴な彼らの佇まい、展覧会作品のイメージから感じ取れるものは多かった。

かつてカナダ政府の職員が日本の伝統的版画技法を共に持ち帰った棟方志功などの作品とイヌイットの版画に観られる神話的なイメージには技術的な共通性以上に日本人とイヌイットの同じモンゴリアンとしての原始的な自然観の共通性が強く感じられた。
現代日本人が忘れてしまったイメージ。自然界の精霊みたいなものがまだまだそこら辺りにうようよいた頃のイメージ。
あまりに現実的な「経済的理由」を答えとして述べたイヌイットの職人さんたちを観ていると、逆にそんな幽霊みたいなものが彼らのコミュニティーには身近にごくあたりまえのように生き延びているのではないかと思った。


「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」カナダ大使館高円宮記念ギャラリー
2011年1月21日(金) ~ 3月15日(火)
http://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/events-evenements/gallery-20101116-galerie.aspx?lang=jpn

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