つれづれ

思いつくままに

治験を終えて

2016-10-07 17:11:09 | 
やっと 治験服薬が終わった。
C型肝炎のうちのジェノタイプ2型肝炎ウィルスのキャリアを対象とした、第三相試験である。
まだ 後観察期(24週)が残っているから、治験は 来年の3月まで続くのだが、12週の服薬期間が終わって ほっとしている。


C型肝炎ウィルスの罹患者は、世界中で1億8千万人、日本で200万人いると推定されている。
日本では ほとんどが1型だが、罹患者の4分の1が 2型だそうだ。
1型のC型肝炎ウィルス感染者に関しては、去年から良い薬が保険で服用できるようになった。

かかりつけ医の薦めで この薬(ハーボニー配合錠)を服用すべく 京都府立医大で受診したところ、わたしがキャリングしているC型肝炎ウィルスは 2型で、これに対してはまだ ハーボニー配合錠の服薬は認可されていない、とのこと。
そこで提案されたのが、治験であった。

いま流れているテレビコマーシャルで、「C型肝炎治療のおすすめ」というのを ときどき見かける。
C型肝炎は 3ヶ月の服薬で治ります、というもの。
政府広報かな と思ったが、スポンサーはこの薬のメーカーであった。
アメリカ大手バイオ製薬会社のギリアド・サイエンシズ社。

「C型肝炎は3ヶ月の服薬で治ります」という薬は、ハーボニー配合錠のことなのだろう。
ジェノタイプ2型のC型肝炎ウィルス感染者は、適用範囲外である。
それを適用範囲内にすべく 実施している治験が、このたび受けた治験である。
服薬治療費は、全額 ギリアド・サイエンシズ社が負担する。


自分がC型肝炎ウィルスの感染者であることは、20年前から分かっていた。
治療を勧められたが、当時の治療法は 半年に亘る〈インターフェロン注射〉であった。
副作用が強く、治る確率も半分、という状態だった。
それに、無茶苦茶 高価だった。
なので キャリアのままで、2ヶ月に一度の血液検査で C型肝炎ウィルスが暴れ出していないか をチェックすることで、済ましていた。

わたしたちの年代では、肝炎ウィルス感染者が多い。
特に、輸血してもらった経験のある者は、罹患の確率が高い。

昭和40年頃まで 輸血用血液の大部分を民間血液銀行が供給していたが、その原料は売血で賄われていた。
売血は「黄色い血」と俗称されていたように、売血者が肝炎に罹っていることが多く、 黄色はその症状である黄疸によるものであった。
当時は、輸血血液に関わる感染症の検査が、不十分だったのである。

輸血感染だけではない。
わたしたちの幼少期の予防接種の注射は、注射針の使い回しであった。
血液による感染症の認識が甘かった時代である。


治験は、二つのグループに分けて行われた。
比較試験のためである。
一つのグループの治験者は ハーボニー(レジパスビル/ソホスブビル固定用量配合錠)を服用し、もう一つのグループの治験者は 現状の標準治療薬であるソホスブビル+リバビリンを服用。
わたしは、後者であった。

現状の標準治療薬は、効く確率は高いのだが、副作用 ことに貧血が重篤である。
リバビリンには 先天性欠損および自然流産の危険を増大させる作用があることが知られており、そのため、妊娠中または授乳中の女性、女性パートナーが妊娠している男性は、この薬を服用できない。

避妊うんぬんのガイダンスは わたしには関係ないことであったが、貧血の副作用には悩まされた。
生あくびに始まって、耳鳴り、ふらつき、脱力感、特に下半身の脱力感、階段を登る時の脚のだるさは、半端ではなかった。

服薬終了まであと2週という時になって、帯状疱疹に罹ってしまった。
ヘルペスウィルスの一種、水痘・帯状疱疹ウィルスに拠る病だ。

幼少期に水疱瘡に罹った人なら、みんな水痘・帯状疱疹ウィルスのキャリアといわれている。
水疱瘡が治ったあとも、ウィルスは体内の神経節に潜んでいる(潜伏感染)。
加齢やストレス、過労などが引き金となってウィルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウィルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症する(ということを、キリキリと錐で揉まれるような痛みに悩まされながら、学んだ)。

治験服薬との直接的な関連はないと思うが、よく効く薬は副作用もキツいとの常識から、治験服薬によって正常な免疫力をも低下させるのではないか、という素人的感想はある。
治験服薬を中止しようかと よほど迷ったが、京都府立医大の親切な対応とアドバイスを貰って、なんとか服薬を完了できた。

まだ確実ではないが、C型肝炎ウィルスを やっつけることができた。
有難いことである。


日ごろ健康体でいると、病に真剣に向き合うことは まず無い。
ウィルスと細菌はどう違うのか とか、がん細胞とは 免疫とは などなど、雑学的に学ぶ機会も得られた。

西洋医学に疑問を持ちつつ、治験を通じて 西洋医学の凄さを思い知らされる経験であった。


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