つれづれ

思いつくままに

ロール製麺機械の急所

2017-05-19 15:54:24 | 
時間当たりの製造食数だけを取り上げれば、ロール製麺機械は、あまたある食品機械の中でも ズバ抜けている。
大量生産に向いた製麺方法と言うことができるが、機械の良し悪しとなると、かなり厳しい条件が付く。

ロール製麺機械から作り出される麺の品質 と言っても多種多様で、なかでも 味(旨み)となると 人それぞれで評価が分かれるから、正しい評価は なかなか難しい。
ひと昔前になるが、コシとか 喉越しとか 旨味とか 見場とか を求めて、さまざまな工夫を凝らしたロール製麺機械が、世に出た時期があった。
それら さまざまな工夫をくぐり抜けて、その時代その時代の要求に応えながら、今日のロール製麺機械がある。

現在もっとも重要視されるのは、安心と安全であろう。

具体的には、安心とは、異物混入(コンタミ)の恐れがなく、そのためには 掃除しやすい機械でなければならない。
安全とは、怪我のない機械ということで、ことに女性やアルバイトのオペレータを対象に考えることが要求される。
メンテナンスがやり易い機械ということも、‘安全’の重要なポイントとなる。

だから 良いロール製麺機械とは、安心・安全性の高い機械 ということになってしまった。
機械屋としては 少しさみしい気もするが、正直言って、麺の品質に占める機械の割合は、かなり低い。

機械屋の口から言うべきことではないのだが、麺の品質を左右する要因は、一に「粉」、二に「水」、三に「オペレータの技量」、そして 四あたりに「製麺機械」だろう。
もっと極端に言うなら、一に「粉」、二にも「粉」、三にも「粉」、となる。
つまり、粉が悪ければ どうしようもない、ということだ。

こういう前提を飲み込んだ上で、ロール製麺機械の良し悪しは どこが急所なのか、を考えてみたい。

粉と水を混ぜるミキサーについては 考え方が分かれるので、ここではミキサーには触れない。
別の機会に、ミキサーに迫ってみたい。

ロール製麺の工程から話せば、急所は、ミキサーからの麺生地を最初に連続帯状に成形するシートロール、そして麺帯から麺線にする最終工程の仕上げロールと切刃(スリッター)、であろう。
機械の部品的に言えば、「ロール」と「切刃」、ということになる。

シートロールで成形される麺帯に 穴が空いていたり耳が切れていては、後続のロール成形で いくらがんばってみても、きれいな麺帯は作れない。
この麺帯粗製において、機構的に麺帯成形を容易にする工夫が いろいろ試みられているが、急所は「シートロール」である。

製麺ロールに要求されるのは、まず 食い込みが良いこと、それから 麺の表面がきれいに成形されること(ザラつかないこと)。

異物混入の原因として ロールカスリ(ロール表面に付着する麺を剥すスケッパー)が問題箇所に挙げられて、ノンカスリロールが注目されている。
しかし、ロール表面に麺が付着しにくい ということと、食い込みが良い ということは、二律背反である。
少なくとも シートロールは、食い込みの良さを 最優先すべきだろう。

麺帯から麺線にする最終工程において、「仕上げロール」に要求される最優先性能は、麺の表面がきれいに成形されること である。
しかし 食い込みの良さを無視すると、ロール表面速度と麺帯速度のズレが大きくなって、麺肌を荒らすことになる。
両性能の兼ね合いが、重要になってくる。

麺帯から麺線にする最終工程において もう一つの急所は、「切刃」である。

余談になるが、工作機械メーカの‘オークマ’は、そのむかし 株式會社大隈鐵工所と称していた頃、製麺機械メーカであった。
製麺機の要である切刃にこだわり、専用の旋盤をつくらせ、満足な測定器のない時代に 噛み合い精度0.05mmを実現した。
そこで鍛え上げられた技術が、のちの「工作機械メーカ最大手のオークマ」へと変身する基礎となった。

その流れを汲む当社も 切刃にこだわり、切刃製作を外注する他社製麺機械メーカとは 一線を画してきた。
切刃は 奥が深いので、ミキサー同様、別の機会に詳しく述べてみたい。

さて ここからは、自社製品PRである。

当社の、表面が黒い製麺ロールを、ブラックロールと称している。
ロール表面を特殊処理しているのだが、メッキではない。
かんたんにいえば、窒化処理プラス酸化処理皮膜である。

表面硬度が高く、強靱な耐摩耗性を持ち、抜群の耐かじり(耐焼き付け性)を有する。
鉄系素地(鋳鉄やステンレススチール)自身の表面変身であるから、メッキのように剥がれる心配がない。
窒化プラス酸化処理によって、たとえれば 四三酸化鉄皮膜(いわゆる黒錆)のように、化学反応的に きわめて安定した膜である。
微細なポーラス的凹凸によって、適度な滑り難さと引っ付き難さがあり、製麺ロールには最適である。
焼き付きを起こしやすい ステンレス製ロールカスリとの相性もいい。

ところで、ロールカスリの話に戻る。

ロールカスリ裏の麺屑がコンタミ化するところから、ノンカスリロールが登場した。
ロール表面に非粘着性樹脂皮膜を施したものであるから、かなり短期間で樹脂皮膜が剥がれてしまう。
かつ、非粘着性イコール食い込み悪さであるから、しっかりした麺帯形成に向かない。

このような欠点をご了解の上、ノンカスリロールを採用していただいているユーザーも、多くなった。
‘安心’が、いかに最重要課題かを示している。

それでも 言わざるを得ないのだが、ロールにロールカスリは‘付き物’である。
いわば、ロールは夫、ロールカスリは妻のように、ロールとロールカスリは 切っても切れない間柄なのである。
ロール圧延すれば、麺帯の一部はロール表面に残るのが当然であって、ロールとロールカスリの関係は、ロール製麺機械の宿命みたいなもの。

この関係は、切刃と切刃カスリの関係にも 言えることである。

そこで 当社は、ロールカスリの存在を肯定的に捕らえて、掃除しやすいロールカスリを考案した。
それが、「ワンタッチオープン式ロールカスリ」である。
ノンカスリロールが使えないシートロールには、ワンタッチオープン式ロールカスリを採用していただくことが 多くなった。

シートロールと仕上げロール&切刃、始めと終わり。
他のラインもの機械と同様 ロール製麺機械も、始めと終わりが急所ということになる。
なにか 哲学的な話でもある。

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