ほぼ不定期日記

散歩ばかりしている男の嘘日記

蕎麦屋3点セットと菊正宗で年越しの夜

2016年12月31日 | ほぼ嘘日記

もうすぐ新年を迎えるというのにお節も作らず注連飾りも用意していないのは 

子供の頃から他人が決めた節目に合わせて暮らすのを疑問に思っていたからで 

例えば画商さんの決めた締め切りよりも早めに筆を置き数日旅行に出かけたり 

そういえば高校も大学も卒業式に出て無くて証書を受け取ってなかったりするが 

そんなけじめの無い私でも大晦日となれば年越し蕎麦くらいは用意する 

いただいた青森南郷そばを茹でて冷やして簀の子に盛りつける 

蕎麦つゆをたっぷり加えて厚焼き卵を作る 焼き海苔を千切る 菊正宗を猪口に注ぐ 

蒲鉾を切りワサビ漬けを添える・・・あっ!板ワサ置いて撮ってない! 


菊正宗には独特の芳香がある 

麹の甘い香りに混じってほんのり柑橘の花の香りがする 

味はすっきりとしていてやや辛口 

迷った時には菊正宗 間違い無い

鎌倉の美術予備校で働いていた頃に通った居酒屋で出していたのは菊正の樽酒だった 

檜樽の香りがする菊正宗に合う品の良いつまみが揃っている店だったが 

クールで優しい女将の N さんの話を聞くのも楽しみのひとつだった 

鎌倉を離れ何年か過ぎた頃に N さんの訃報が届いた 

黴びた喪服を引っ張り出して通夜が行われている鎌倉の寺に T と向かった 

本堂の前は居酒屋の常連客でいっぱいだった 

写真家の K さんが黙々とその光景を撮り続けていた 

焼香を済ませて帰ろうとしたら T が「飲みたい」というので小町通のバーに入った 

ショットグラスに注がれたシングルモルトを飲みながら T は泣いていた 

泣いている T を眺めながら私は菊正宗の樽酒を飲みたい気分の夜だった 

その後いったん店は閉められどこかの誰かが再び開店させたと聞いたが 

たまに用事で鎌倉に行くことがあってもなぜか寄ってみようとは思わない 

菊の絵が描かれたラベルの瓶入りが菊正宗の定番だったが 

今では味気ない紙パックになって売られるようになった 

紙パックでも良いから菊正宗の樽は無いか?と探しているのだが見つからない 

仕方が無いので近所のスーパーで菊正宗しぼりたてというのを買って飲んでいる 


菊正宗といえばピンク色の菊の花がデザインされているものだが 

このパッケージデザインは打って変わってモノクロームになっている 

これを見ながら呑んでいたので亡くなった N さんのことを思い出したのかもしれない 

醸造技術も濾過の技術も格段に進歩している今となっては 

あの頃あの居酒屋で飲んだ菊正宗の樽よりもこっちのほうが旨いのかもしれない 

ただカウンターに立つ女将の後ろに並んでいた菊正宗の瓶が懐かしい それだけだ 

もうすぐ2016年が終わる 

けじめの無い男は紅白など観ないで早めに寝ることにする 

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