見渡せば青い山脈、都心より薄ら寒いこの場所に、
留置された「奴」の差し入れに来た。
何で私が、こんな事しなきゃならんのだ。
これも、人生経験なのか。
昔、「塀の中の懲りない面々」という本が話題になったが、
本当に懲りないから、こういう事になるのだ。
「奴」は、現代の「劉備玄徳」である。
いつも、周りに迷惑をかける愚か者だが、
なぜか、誰かに助けられている。
財力のある者が起こしたトラブルは、金の力で何とかなるが、
そうでない者にとっては、たいした事でなくても大打撃だ。
小池栄子主演の映画「接吻」さながら、
ガラスの穴越しにくぐもる、「奴」の空元気を、
私は、落ち着かないまま聞いていた。
15分とは、思ったより長いものだ。
脇でメモを取る青年の、何て清々しい事!
「なりたての僧侶」のよう。
タバコ臭い廊下、雑然としたこの建物の中で、
まるで「ハキダメに鶴」。
できればそのまま、変わらずにいてほしい。(笑)
最近、子供の犯罪が増えているが、
厳しく強制し過ぎたり、甘やかすのが優しさだと勘違いして、
実は、見捨てている親が多いのではないか。
「更生」とは、自らの力で行うものだ。
「北風」は、旅人のコートを脱がせる事はできない。
「甘やかさず 見捨てない」
そこに「太陽」の優しさを知るべきだろう。