山田洋次監督最新作の
(と言っても公開から2週間経ってしまいましたが)
『小さいおうち』について。
作品を観た後すぐに中島京子の原作も読みましたが、
「読んですぐ撮りたいと思った」という
山田洋次監督の談話も納得できました。
中流家庭の女中・布宮タキから見た戦時の都市・東京、
いかにも山田映画に描かれそうな構図なのです。
タキが記憶から思い起こした東京は、
2008年に制作された『母べえ』で描かれた、
戦争への漠然とした不安に包まれた暗い東京ではなく、
戦勝報道と好況に小躍りしていた東京でした。
そんな当時の東京の風景は、布宮タキの妹の孫・建史の
「当時の東京がそんなにウキウキしていたはずがない、過去を美化しちゃダメだよ」
というセリフを受けて、却って作品の主題として前景化しています。
建史の客観的・巨視的な歴史認識を拒むように、
タキの回想録は身の回りの出来事に終始した主観的・微視的な歴史で固められているのです。
いわゆる時代劇三部作から『母べえ』など、
時代の“風景”をミクロな視点から描く作品を多く制作している山田洋次にとって、
戦時中のウキウキしていた東京を女中タキが語る原作は、
最高の“お膳立て”が整っていた作品だったと想像します。
建史の客観的で普遍的な歴史に押しつぶされることなく、
記憶の中で生き続けたタキの主観的な歴史。
戦争に巻き込まれる激動の外の世界と、終始穏やかな「おうち」の内の世界との二元で構成される
イタクラ・ショージの紙芝居はそれを示唆しているようにも見えます。
(尚、イタクラ・ショージの紙芝居の描写は原作にしか出てきません。)
(と言っても公開から2週間経ってしまいましたが)
『小さいおうち』について。
作品を観た後すぐに中島京子の原作も読みましたが、
「読んですぐ撮りたいと思った」という
山田洋次監督の談話も納得できました。
中流家庭の女中・布宮タキから見た戦時の都市・東京、
いかにも山田映画に描かれそうな構図なのです。
タキが記憶から思い起こした東京は、
2008年に制作された『母べえ』で描かれた、
戦争への漠然とした不安に包まれた暗い東京ではなく、
戦勝報道と好況に小躍りしていた東京でした。
そんな当時の東京の風景は、布宮タキの妹の孫・建史の
「当時の東京がそんなにウキウキしていたはずがない、過去を美化しちゃダメだよ」
というセリフを受けて、却って作品の主題として前景化しています。
建史の客観的・巨視的な歴史認識を拒むように、
タキの回想録は身の回りの出来事に終始した主観的・微視的な歴史で固められているのです。
いわゆる時代劇三部作から『母べえ』など、
時代の“風景”をミクロな視点から描く作品を多く制作している山田洋次にとって、
戦時中のウキウキしていた東京を女中タキが語る原作は、
最高の“お膳立て”が整っていた作品だったと想像します。
建史の客観的で普遍的な歴史に押しつぶされることなく、
記憶の中で生き続けたタキの主観的な歴史。
戦争に巻き込まれる激動の外の世界と、終始穏やかな「おうち」の内の世界との二元で構成される
イタクラ・ショージの紙芝居はそれを示唆しているようにも見えます。
(尚、イタクラ・ショージの紙芝居の描写は原作にしか出てきません。)